ECサイトなどで買い物をすると関連商品が表示されたり、ニュースサイトの記事を読み終わると関連の記事が表示されるなど、ネットユーザーなら多くの方が経験あると思います。
実はそれ、より利用価値の高いWEBサイトにするために、レコメンドエンジンというシステムにより自動的に関連商品や記事が表示される技術が用いられていることがほとんどです。
今回は、その「レコメンドエンジンについて」と「レコメンドエンジンの技術について」を解説していきます。
1.レコメンドエンジンとは
レコメンドエンジンは英表記するとrecommend engineで、直訳すると「勧める装置」となります。
ITで活用されるレコメンドエンジンはそのままの意味で、WEBサイトなどにおいて利用価値の高いものを推薦する手法を指して用いられます。
例えば、ECサイトなどで商品を購入したときに、関連商品や「この商品を買った人はこちらの商品も買っています」などの案内を見たことがあると思いますが、それらはレコメンドエンジンによって表示されています。
サイト運営者にとってレコメンドエンジンを利用することで、WEBサイトでの購買率や売り上げの向上、サイト内回遊率の向上などが大きく期待できます。
2000年代から初歩的なレコメンドエンジンは散見されていましたが、amazonが活用し始めた2010年あたりから多くのWEBサイトで見られるようになりました。
初期の頃のレコメンドエンジンは、ECサイトを展開する運営者がクロスセル(同時に販売したい商品)を手動でセットする簡易的なものでした。
その後、ユーザーの購入履歴や閲覧履歴から統計的にセットで販売したい商品を自動で表示するシステムが登場しました。
そのシステムは協調フィルタリングと呼ばれていますが、サイト内に商品数やページ数などのある程度のボリュームが確保されていないと効果が低かったり、購入データや閲覧データが乏しいと効果が発揮できなかったりと、いくつかの問題を抱えていました。
そして現在のレコメンドエンジンは、ハイブリッド型レコメンドエンジンと呼ばれている時代に突入しました。
協調フィルタリングに加えて、ユーザーの属性や自然言語解析などのアルゴリズムを使用し、より購入率や回遊率を高くするレコメンドエンジンが完成しました。
ハイブリッド型レコメンドエンジンは、限定的ではあるものの顧客や購入者の情報、サイト内の情報を包括的に管理してデータ化することができるので、購買率・回遊率の向上だけでなく、より最適なコンテンツの提供やリピーターの獲得にも繋がります。
つまり、ハイブリッド型は無駄な情報の発信がより少なくなり、サイト運営者だけでなくユーザーにとっても有益なサービスになったと言えるでしょう。
このように、IT技術の進化とともにレコメンドエンジンもより良いシステムに変化を続け、現在ではレコメンドエンジンのシステムを販売する業者も国内に多数存在しています。
2.ECで活躍する2つのレコメンドエンジン
レコメンドエンジンにはASP型とオープンソース型の2つの種類があります。
(1)ASP型
ASPとは、「アプリケーションサービス プロバイダー」の略で、端末にダウンロードする必要がなくインターネットの環境があればPCでもスマートフォンでも利用できるWEBアプリケーションです。
ASP型のレコメンドエンジンは、簡単にASPに導入することができるので、高い技術力など必要なくてもそのレコメンドエンジンの機能が実装できるようになります。
(2)オープンソース型
ASP型のレコメンドエンジンはASPに完成されたツールとして導入されるため細かな設定ができませんが、オープンソース型のレコメンドエンジンは知識が必要となるものの独自の設定が可能となります。
例えば、利益率の高い商品を関連商品として優先的に表示させたり、他にもアクセス解析なども独自の設定できるなど、より高い利便性を実現することが可能です。
自社で技術力があるような大手ECサイトはオープンソース型を、比較的小規模でASPを利用しているECサイトはASP型のレコメンドエンジンを利用していると考えても差し支えありません。
amazonなどの大手ECに関してはオープンソース型のレコメンドエンジンが搭載されていますが、ほとんどのECサイトはASP型のレコメンドエンジンということになります。
3.レコメンドエンジンにはどのような技術が使われている?
(1)協調フィルタリング
レコメンドエンジンには様々な機能が実装されていますが、前述した協調フィルタリングと呼ばれる機能が代表的です。
協調フィルタリングとは、アイテムベースとユーザーベースで関連商品やコンテンツを表示させる機能です。
アイテムベースとは、例えば「Aという商品が購入されるときにBという商品も購入されやすい、ゆえにBという商品を表示する」というような、商品やコンテンツ側のデータによってレコメンドされるもので、ユーザーベースはユーザーの購入履歴や閲覧履歴からレコメンド商品を統計的に表示させるものになります。
レコメンドエンジンの中でも協調フィルタリングは最も代表的かつ重要な機能です。
(2)その他のレコメンド機能
協調フィルタリングの他にも、ユーザーの行動履歴から分析されるパーソナライズドレコメンドや、サイト運営者が積極的にアプローチしたい商品を紹介するルールベースレコメンドなど、多様なレコメンド機能がレコメンドエンジンには実装されています。
一方で、近年のレコメンドエンジンはレコメンド以外の機能も充実してきました。例えばランキング機能です。
閲覧数の多い商品やコンテンツを指定する期間でランキング化したり、売れ筋商品のランキングをカテゴリ別や期間毎に表示することも可能です。それらのランキングなどのレコメンド機能以外に関してもある程度のデータが揃っていなければなりませんが、レコメンドエンジンにはデータベース機能が基本的には搭載されています。
レコメンドエンジンの一番の目的とされる協調フィルタリングを充実させるために、補助的な役割で様々なレコメンド機能が搭載されてレコメンドエンジンはより良いものに進化してきました。
協調フィルタリングを充実させるために派生したレコメンド機能は汎用性も高く、例えばメール配信機能やアクセス解析などの機能を搭載したレコメンドエンジンも登場。レコメンド機能を使ってよりユーザビリティが高く、パーソナライズされたメール配信やユーザーの行動分析が可能となります。
現在、販売されているASP型レコメンドエンジンのほとんどが協調フィルタリングなどのレコメンド機能だけでなく、そのような多くの機能が充実しています。
4.国内の代表的なレコメンドエンジン製品・機能
一方で、ASP型レコメンドエンジンを提供するベンダーも次々と新しい技術や開発を進めていて、機能には差別化を図り商品をリリースしています。
それでは、国内の代表的なレコメンドエンジンの製品とその機能や技術を、利用している有名なASPやECサイトと合わせて紹介します。
(1)Rtoaster(アールトースター)
DMP市場で2014年から3年連続で最も利用されたレコメンドエンジンです。自社のDMPに蓄積された膨大なデータを基に、レコメンドをはじめとした機械学習の技術を使って広告・メール・プッシュ通知・DMなどの豊富なアクションを実現しています。
ECサイトはもちろん、広告収益を目的としたメディアサイト、金融、旅行・航空など、幅広い分野のWEBサイトで利用されています。
金額は月額15万円~と高額ではあるのですが、オフィス用品通販のアスクル、ANAのショッピングサイト「A-style」、横浜銀行など大手企業のメインサイトで導入されており、実績と評価ともに国内トップクラスのレコメンドエンジンです。
(2)NaviPlusレコメンド
ナビプラス株式会社が開発し、500以上のサイトで導入実績のあるレコメンドエンジンの代表格。
大丸松坂屋や東急百貨店、伊勢丹、三越などの百貨店のECサイトだけでなく、JINSやコジマ、ベルーナなどの全国規模の大手サイトで利用されています。
パーソナライズ化を支援する最先端のロジックで、ユーザー一人一人に合わせた最適なコンテンツの表示を実現。NTTドコモが開発したレコピクという画像解析レコメンドのサービスを使って、デザインや色などの似たアイテムを表示させる機能などもあり、多くの技術が導入された製品となっています。
また、他システムと連携してレコメンド精度を向上させるために外部データをインプットしていることも、評価が高い理由のひとつです。
(3)コンビーズレコ
レコメンドエンジン業界で最大級の2万社を超える導入実績がある製品。月額利用料金39,800円~という低価格で導入できるのが最大の魅力で、EC CUBEなどのCMSや、カラーミーショップ、MakeShopなどのASPにも手軽に導入可能なのも支持される理由のようです。
安価でありながら最新の技術が集積され、レコメンド機能やメール配信サービスも高性能な上、google analyticsとの連携も出来たりと解析ツールも不足はありません。
導入に関してはECサイトの運営者なら手軽に利用できるようにカスタマイズされていますし、サポートも充実しています。
専門的な技術者が必要なく、導入しやすいレコメンドエンジンでありながらも機能が充実しているので、サービス開始から数年経っている今も継続率97%という顧客満足度の非常に高い製品です。
(4)さぶみっとレコメンド
タカラトミー、阪急不動産などの大手サイトも採用する低価格レコメンドエンジン。1,400サイトの導入実績があり、コンビーズレコと同様の月額39,800円~という価格設定ですが、2か月の無料トライアル期間がついているのが大きな違いです。
他製品と同じような内容のレコメンド機能を持っていて、簡単に導入・運営できる使いやすさを重視した設計になっています。WordPressやMovable Typeなどの人気のCMSに標準で対応しているので、WEBクリエイターにも人気です。
2020年2月末には有料オプションではありますが、API連携機能の提供を開始したため、外部ツールのレコメンドデータの活用が可能となりました。オプションを追加してもそれでも低価格であるものの、PV数によって利用料金が増額される仕組みですので数十万PV以上あるWEBサイトでは安価とは言えません。
5.まとめ
これらの他にもレコメンドエンジンは多くの開発会社がリリースしています。
レコメンドエンジンが開発され始めて10年以上が経ちますが、今後はユーザーデータや商品データの蓄積が進むので、レコメンドされる商品やコンテンツはより最適性が高くなっていくと考えられます。
さらに、LINEやInstagramなどのSNSとの連携、電子決済サービスとの連携など、世の中のニーズと蓄積されたデータに基づいた新しい機能も増えていくでしょう。
レコメンドエンジンの機能や導入メリットについては下記の記事で詳しく解説されています。
あわせてご確認ください。
参考:レコメンドエンジンとは?機能や導入メリット、選び方とおすすめサービスを紹介 | 株式会社ニュートラルワークス
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