1.自動車業界が力を入れているIT導入
今の時代は病院の予約や教育の現場など、さまざまなところでIT技術が使われています。IT技術を使わないサービスが減っている感覚さえあるという人も、少なくありません。特に交通事故を減らし、毎日の移動を快適にする自動車業界へのIT導入は注目されています。
ここでは自動車業界において、すでに導入されているIT技術はどのようなものがあるのか、私たちの生活に役立つのはどんなIT技術なのか、解説していきます。
(1)そもそもITとは?
そもそもITとは「Informetion Technorogy」の略で、情報処理に関する技術のすべてを指します。コンピュータもIT、ネットワークもITなのです。インターネットを使った技術はすべてITと覚えておきましょう。
(2)自動車業界にIT技術を使う意味
ITと自動車がどのように結びつくのかイメージが沸かない場合もありますが、例えば自動車をITを使って遠隔操作する自動運転が有名です。自動運転は、すべてに販売車に部分的に導入されています。今後は、もっと広い自動車サービスで導入されていくのです。
(3)自動車業界のIT技術を導入は意外と早い
自動車業界にIT技術が使われはじめたのはここ10年くらいという印象がありますが、実は1970年代から導入されていました。1970年代後半に、環境への配慮からエンジンの一部機能を電子制御するのをITで行ったことがはじまります。
・1980年代
機械的な機能だったトランスミッションやパワーウインドウなどをIT技術へ変換
・1990年代
エアバックのIT化、車間距離の警告システムなどが導入
・2000年代
車間距離制御、車間維持制御などのIT技術を車両に導入
・2010年代以降
自動走行システムの試験的開始、交通情報のビッグデータ化など
2.自動車業界のIT技術はビッグデータが基盤
自動車業界のIT技術は自動車を開発する段階から製造する過程、新車販売の売上、さらには自動車保険まで幅広く関わっています。その基盤になるのがビッグデータです。
(1)自動車業界のITの活かし方・ビッグデータ
ビッグデータとはIT技術を使って、今までとはくらべものにならない規模で集約されたデータ、それを基に解析されたデータのことです。日本中の自動車に関するありとあらゆるデータを使って、自動車業界を向上させる目的で導入されています。
- Volume データ量が膨大であること
- Velocity データが頻繁に更新されていること
- Variety さまざまな種類のデータが保管されていること
この3つがビッグデータの定義です。今までではそれぞれの企業、団体、機関が個別に所有していた同じ分野のデータを集約して、関連企業や団体、機関で共有するのが特徴です。
(2)ビッグデータを活かした自動車業界の変化
ビッグデータを活用している自動車業界には、ここ数年でさまざまな変化が起こっています。従来の企業や機関ごとのデータシステムではできなかったことが、実現できるようになっているのです。
ア. ITを活かすと不良自動車が減る
IT技術を使って自動車の走行データをビッグデータにすると、どの車両でどういった走行中に事故が起きやすいか解析できます。それを基に不良車の基準を変え、今までよりも的確な判断で不良車を取り除きます。
またビッグデータを基に故障しにくいエンジンの開発をしたり、販売車両のリアルタイムモニタリングで整備が必要な場合にすぐにメンテナンスを行なったりすることで、事故につながる車両を減らせます。
イ. ITで渋滞も交通事故も減らせる
IT技術を使ったITS(高度道路交通システム)を活かし、渋滞も緩和することができます。ITSとは人と道路と車両の情報をネットワークで共有することです。渋滞状況を俯瞰で確認できるのです。
また交通事故情報もビッグデータ化し、事故多発地域の整備を見直すきっかけになります。自動運転でも交通事故を減らせますが、人が運転している車の事故も減らす効果が期待できます。交通渋滞や事故の緩和は、自動車業界のIT導入でもっとも期待されています。
ウ. ITで自動車保険が安くなる
IT技術は車を製造する側、道路交通整備を行う側だけではなく、私たちにも直接メリットがあります。IT技術でひとりひとりの車での交通量を把握することで、適切な保険料に調節できるのです。自動車保険の見直しもしやすくなり、走行時のオンライン診断もできます。
エ. 自動車が売れない時代から売れる時代へ
今自動車が売れない時代といわれていますが、IT技術を導入することで売れるようになると期待されています。自動車の潜在的な需要をビッグデータで把握し、車を買いたい人が多い地域でポ院ポイントで販売できるからです。
生活を送る上で車が欠かせない地域に新車を必要な台数発売し、飽和状態になっている地域への車の出荷数を減らすことで販売店の無駄なコストを削減します。
オ. 中古車情報の透明化
中古車はそれぞれの販売企業ごとにデータを持っているため、地域の需要に合わせて効果的に販売できている企業と、そうではない企業があります。ITによるビッグデータがあれば、どの企業も地域の交通量や車の整備情報などを基に需要に合った中古車の販売が実現します。
自動車業界全体のデータを全国的に集約することで、どこに住んでいても地方のデータを確認できるようになります。情報収集にかける時間や費用を大幅に削減できるので、新技術のコストも削減できるのです。
3.自動車業界のIT技術に欠かせないもの
自動車業界のIT技術に欠かせないのは、企業同士の連携です。今までそれぞれの企業で所有していた売上データ、交通事故データ、整備データなどを開示し、多くの企業で共有することでビッグデータ化できます。
(1)情報開示をしている自動車企業の例
自動車業界のビッグデータのために、自ら情報を開示している企業があります。ここからは情報開示をしている以下の企業の例を紹介していきましょう。
- 日産自動車
- トヨタ自動車
- ホンダ自動車
ア. 日産自動車 「リーフ」の走行データ
日産自動車はリーフの走行データを車外に公開しています。電気自動車の所有者満足度や自動車保険へのデータ繁栄を行っています。
イ. トヨタ自動車 「交通情報・交通量マップ」の情報提供
トヨタ自動車は、走行中の車両の速度や位置などの情報をテレマティクスサービスを使って収集・加工し、リアルタイムの交通情報、交通量マップを提供しています。
それぞれが持っている交通に関する情報を共有できるプラットフォームもあり、防犯システムや交通システムなどに生かせる更新型のビッグデータです。防犯や交通以外にも、自治体や企業にも情報を提供しているほか、物流システムに活用することもでき、幅広いジャンルの活用が見込まれています。
ウ. ホンダ自動車 「交通事故多発箇所マップ」の情報開示
ホンダ自動車は警察や民間人からの情報提供を基に、交通事故の多発場所や、近所に住んでいる人たちが危険だと普段から感じている場所の情報をオンラインで公開している地図に表示しています。
過去には東日本大震災の時に、それまでに収集した交通情報を基にした交通実績情報マップを震災翌日に一般公開しています。世界でも災害の対応力が高いといわれている日本ですが、一般の人が被災地の情報を把握するのに時間がかかることが多かったです。これを解消するためにIT技術によるビッグデータが活用されました。
(2)被災地の交通情報が圧倒的に迅速に!
東日本大震災で導入されたホンダ自動車の交通実勢情報マップは、被災地の支援活動、復興活動を支える大きな役割を果たしました。被害状況の確認、支援物資の手配、ボランティアの派遣など、そのすべてに交通機関の状態が関わっているからです。
被災地の交通機関の状態をいち早く把握できることは、支援や復興をはじめるまでの時間を短縮します。
4.国土交通省のIT技術導入に対する姿勢
自動車業界は次々にIT技術を導入したサービスをはじめています。交通事故を減らし、的確に自動車を販売することで安全性と利益を両方得ることに成功しています。こうした自動車業界全体の動きを土台から支えているのが、国土交通省です。
国土交通省は政府の発表を受け、各自動車企業が新しい取り組みを行いやすいようにサポートしています。2013年6月に「世界最先端IT国家創造宣言」をしました。この宣言において、重要な内容は以下の3つです。
- ビッグデータの利活用による革新的な新産業、新サービスの創出
- 利便性の高い電子行政サービスの実現
- 2020年東京オリンピック開催までに世界最高水準のIT利活用社会の実現を目指す
(1)国土交通省の取り組み
政府の「世界最先端IT国家創造宣言」を受けて、国土交通省は「自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン検討会」を行いました。その検討会では、以下の内容をビッグデータ化することが検討されたのです。
- 自動車の検査登録に関する情報
- 走行車両の位置や走行速度などの交通情報
- 交通事故や交通整備、交通ルート履歴などの車両に関する情報
このように自動車業界のIT技術は自動走行や自動運転などだけではなく、交通機関全体のサービスを便利に、無駄のない体制にすることにも役立っています。
5.自動車業界のIT技術における今後の展望
自動車業界のIT技術は今度も発展していくと言われており、完全自動運転サービスや最寄り駅についた時に自動運転の車が待機していて、病院や施設まで送ってくれるサービスなどが近い将来、実現するといわれています。
高速道路の完全自動化や、事前に交通事故が起こりそうな状況などを把握し、警告を出すなどの技術が向上すれば、今よりも安全に快適に自動車での移動ができるようになります。
このようにIT技術は自動車業界に30年以上前から生かされており、徐々にその技術が向上し、ITが使われる分野が広がりを見せています。車両内の機能だけだったのが、日本全国の交通情報に関するビッグデータ化にまで進展しているのです。
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