今回は、そもそもAPI連携とはどういうものか、APIを利用してサービスを開発するメリット・デメリットは何なのか、そして各サービスが提供している様々なAPIの特徴などについて紹介していきます。
また後半では、APIエコノミーの概要や、実際にAPIを利用して開発を進めていく際の注意点などについても紹介していきます。APIを使用して、新しいWEBサービスの開発に着手していきたいと考えている方は参考にしてみてください。
1. API連携とは?
APIはアプリケーション・プログラミング・インターフェースの略称で、異なる2つのソフトウェアの機能や、データの一部を連携・共有するための仕組みのことです。様々な種類がありますが「Web API」と呼ばれるものが一般的で、基本的に発行されたURLなどをコピペするだけで利用可能です。
例えば、Twitterのサービス上で発行されるコードをコピペするだけで、WEBサイトやブログなどにTwitterのつぶやきを表示できる機能がありますが、あれもWeb APIのひとつです。
2. APIを利用するメリット・デメリット(開発者向けの視点から)
(1) メリット
・一部有料のものもあるが、基本的には無料で利用可能で、APIを利用することにより、ユーザーに様々な価値を提供できる。
・APIを利用すれば、ソフトウェアの開発を、より簡単に進められるようになる。例えばGoogle MapなどのAPIを利用すれば、位置情報・地図情報などの機能を0から開発しなくていいので、よりスムーズに開発をすすめることができる。また開発の時間を短縮できる分、他の工程により多くの時間を割けるようになる。
(2) デメリット
一方で、APIを開発している企業が、APIの提供を中止してしまったり、仕様を変更してしまうと、開発したサービスに不具合が生じてしまうリスクもあるので注意が必要。
3. 各サービスが提供しているAPIについて
(1) YouTube API
動画やミュージックビデオなどの閲覧ができる「YouTube」もAPIを提供しています。APIを利用すれば、動画の効果測定(見ている人数・視聴時間・視聴回数)や、動画の制御(関連動画を制御したり、再生音をミュートしたり、自分のお気に入りのチャンネルから最新動画を取得すること)などができるようになります。
(2) Yahoo! API
Yahoo!もWeb APIを提供しており、以下のように様々な種類のものがあります。
- Yahoo! ID連携( 他のWebサービスやアプリで、Yahoo! ID連携を利用する際のAPI )
- Yahoo!ショッピングWeb API( Yahoo!ショッピングで、商品検索をしたり、商品リスト・カテゴリ別売上ランキングなどを表示できる )
- Yahoo! Open Local Platform( 地図に関するAPI )
- テキスト解析のAPI ( 入力された文章に対しての係受け解析、入力された文章の形態素解析、キーフレーズの抽出などができるAPI)
- Yahoo!知恵袋のAPI( キーワードによるQ&A検索を行うためのAPIや、知恵袋の新着の質問リストを取得するAPIなど )
(3) Twitter API
Twitter APIを利用すれば、ツイートやタイムラインを取得できるようになり、例えば、特定のキーワードが含まれたツイートを取得し、それをタイムライン形式でWEBサイトに表示する、といったことができるようになります。またログイン機能(Twitterアカウントがあれば、パスワードなどを入力しなくてもそのままログインできる機能)を実装することなども可能です。
(4) LINE API
私たちがよく利用しているLINEも、先ほどTwitterの箇所で紹介したようなログイン機能や、音声アシスタント、そしてソーシャルボタンの通知機能など、様々なAPIを提供しています。
ちなみに「 Messaging API 」というものを利用すると、自分が作成したLINE公式アカウントに登録してくれた友達のユーザー名、プロフィール画像、ステータスメッセージなどを取得できるようになります。また、APIの一部である「Flex Message」( CSSの基礎知識を使ってレイアウトを自由にカスタマイズできるメッセージ )を利用すれば、選択肢ボタン付きのメッセージや、メニュー形式のメッセージなども送信できるようになります。
(5) 楽天 API
楽天も、以下のように様々な種類のAPIを提供しています。
- 楽天市場系API( 楽天市場に登録されている商品情報、タグ、ランキングデータなどが取得できる。)
- 楽天ブックス系API( 楽天ブックスに登録されている書籍、雑誌、CD、DVD、ゲームなどの商品情報を取得できる。 )
- 楽天トラベル系API ( 楽天トラベルに登録されている施設の検索や、施設の詳細情報の取得、予約可能なホテルや宿などが検索できる。 )
- 楽天ブックマーク系API ( お気に入りブックマークに登録している商品の情報を取得したり、ブックマークに登録する商品を追加できる。)
- 楽天レシピ系API( 楽天レシピに登録されているカテゴリーの一覧や、カテゴリ毎のランキングを取得できる。)
- 楽天Kobo系API ( 楽天Koboという電子書籍サービスの商品情報などを取得できる。)
- 楽天GORA系API( 楽天GORAというサービスに登録されているゴルフ場を、キーワードやエリアなどで検索したり、ゴルフ場の詳細情報や空き枠の状況などを検索できる。)
(6) Amazon API
AmazonのAPIは、大きく「Amazon MWS API(Amazonで販売する商品の管理に役立つAPI)」と「Amazon Product Advertising API(Amazon アソシエイト・プログラム)」の2種類に分けられます。
Amazon MWS APIを利用すれば、Amazonに出品した商品の在庫管理や注文情報の取得などができるようになり、もうひとつのAmazon Product Advertising APIを利用すると、アフィリエイトのAmazonランキング情報などを取得して、売上げデータを管理できるようになります。
(7) Google Apps API
GoogleもAPIを提供しており、利用することによって、G Suiteの様々なアプリ(Gmail、Google Calender、Google Drive、Google Sheetsなど)の制御が出来るようになります。
例えば、Gmail APIを利用すると、Gmailのメッセージの読み取りを行ったり、既存のメールを検索することなどができるようになります。一方のGoogle Calender APIを利用すると、カレンダーに予定を追加したり、登録している予定を取得したり、それを削除したりできるようになり、これを利用することによって、オリジナルのカレンダーも作成することができます。
4. APIエコノミーとは?
APIエコノミーは、自社で開発したAPIを公開して、それを他社のサービスにも活用してもらい、双方にメリットを生み出すように広がっていく商圏のことです。
例を挙げると、別サービスのアカウントを利用した認証サービス(Facebookアカウントを使ったログインや、Line IDを使ったログインなど)や、Google MapのAPIなどが有名です。
新しくWEBサービスなどを利用する際には、基本的に会員登録が必要になりますが、この手間を面倒に感じて利用を見送るユーザーはとても多いと言われています。しかし認証用のAPIを利用してサービスが実装されれば、会員登録の時だけでなく、ログインする際にもスムーズに実行できるようになるため、かなり重要度が高いAPIです。そしてもう一方のGoogle MapのAPIも、会社のWebサイトや、商品紹介のWebページなど、多くのサイトで利用されていて、見にする機会が多いAPIのひとつです。
5. APIの利用料金は?
APIを利用する際の料金ですが、無料で利用できるものと、有料のものにわかれるので注意しましょう。たとえばGoogle MapsのAPIは、サービスの利用量や利用形態に応じて課金するタイプですが、UberのAPIのように、利用するとバックマージンがもらえるタイプもあります。
ちなみにそのUberですが、モバイルアプリに配車リクエストボタンを追加できるAPIを提供しており、実際にHyatt Hotels & Resortsは、このAPIを取り入れて、外出時にアプリのUberボタンを押すと別途新しくUberアプリを立ち上げたり行先を指定する必要なく、ホテルまでのタクシーを呼べるサービスを提供しています。
Uberにとっては、たくさんの開発者にAPIを利用してもらうことによって、Uberの利用者増につなげることができますし、UberのAPIを利用してサービスを開発する側にとっては、顧客体験の向上につながるだけでなくバックマージンまでもらえるため、双方にしっかりとしたメリットがある仕組みといえます。
6. APIエコノミーに参加する際の注意点
APIはとても便利な仕組みですが、自社のサービスを運営していくにあたり、サービスの核となる部分を、他社のAPIに依存してしまうのは危険すぎるので注意しましょう。
例えば、Uberなどの場合、地図情報はサービスを運営していくにあたり、肝となる超重要なデータですが、この重要な部分をGoogle MapのAPIに依存してしまう形になると、ビジネスそのものをGoogleの判断に全て委ねてしまうのとほぼイコールの形になり、大変危険です。ちなみにこういった背景のもと、2016年頃から、Uberは独自で地図データの構築を開始するようになりました。
つまりAPI連携は、あくまでもサブ的なものとして捉えて利用していくのが基本で、自社サービスの核となる技術や特徴をしっかりと持った上で、足りない部分をAPIによって補う、というスタンスで利用していくべきといえます。
7. APIを利用して、今後新しいサービス開発を進めていくにあたって
他社が提供しているAPIを利用して開発を進めていく場合でも、しっかりとした技術力が必要になります。特に、新しいプロダクトやWebサービスの開発を検討中の場合は、基本的には、外部の開発・制作会社に依頼するよりも、出来るだけ自社でじっくりと取り組むほうがいいケースが多いので、開発力や制作力に不安がある場合は、新しい社員の採用、もしくはM&Aによって不安を解消していくことをおすすめします。
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