マネジメントインタビューとは、M&Aを行う際に、買収対象企業の経営陣や役員、従業員にインタビューを行うことです。
マネジメントインタビューを行う理由は、資料だけでは分からない、買収対象企業の定性面などを知るためです。しかしこのマネジメントインタビューですが、意外と何を聞いて良いのか分からない方も多くいるようです。
マネジメントインタビューは、M&Aを成功に導くために非常に重要です。
そこで今回は、M&Aにおけるマネジメントインタビューで聞くべきポイントについて説明します。
1. マネジメントインタビューを行う理由
マネジメントインタビューを行う理由は、M&Aを行う上で、資料には出てこない買収対象企業の疑問点や会社の雰囲気、買収する企業の経営陣や役員、従業員の人となりについて理解するためです。
またM&Aの買い手企業の考える事業戦略や事業計画をより深く理解してもらうために、マネジメントインタビューは行われます。
2. マネジメントインタビューを行う人が心掛けるべきこと
マネジメントインタビューは、買収対象企業の経営陣や役員、従業員から、資料では見ることの出来ない買収対象企業の会社の実態をヒアリング出来る貴重な機会になります。
せっかくの貴重な機会なのに、マネジメントインタビューを行う人の態度が横柄であっ たり、人の話を聞かないよう態度で臨んでは、マネジメントインタビューで買収対象企業の本音を聞き出すことは出来ません。
「横柄な態度で臨むことなんてない」と多くの方は思うと思います。 しかし、マネジメントインタビューを行う際は、弁護士や公認会計士、税理士などの専門家が同席することが一般的です。 弁護士や公認会計士などの士業の場合、普段から「先生」扱いされることに慣れているので、意識しなくても横柄な態度になってしまうことがあります。
士業の先生に同席してもらう時は、あらかじめ打ち合わせしておくことが重要です。打合せの際に、さりげなく良い雰囲気でマネジメントインタビューを行いたい旨を伝えるだけで大きく変わって来ると思います。
しかし、逆にインタビュアーが気を使い過ぎてしまうと、聞きたい内容について、しっかり聞けないことになってしまいます。
M&A におけるインタビューを行う目的は、資料に書いていない情報を手に入れることです。
どうしてもあら捜しのような側面のある仕事になり、時には小姑のような質問をしなくてはいけないこともあります。 インタビューを行う人に不快感や恐怖を与えてはいけませんが、質問すべき事項についてはしっかり質問するというスタンスで臨むことが重要になります。
3. マネジメントインタビューを行う人の選定
マネジメントインタビューで対象者の選定は非常に重要です。なぜなら、選定者によって必要な情報が得られるかどうかが決まるからです。
マネジメントインタビューを行う人を選定する際は、主に以下の点に注意して選定する必要があります。
- すでに開示を受けている資料の内容
- 開示されている資料の疑問点
- 選定者に十分な知識があるかどうか
- 買収対象企業にとってどのような立場の人なのか
- M&A の事実を話してよい人なのか
などになります。マネジメントインタビューは経営者以外に、経営の中心の部門の長が選ばれることが一般的です。
例えば、経営企画部門であったり、人事部、総務部などの本部長や部長が該当します。
一方で、会社の雰囲気を知りたいときは、役員や部門長以外にも一般社員にインタビューをしたい場合もあります。
しかし、M&Aが秘密裏で行われている場合(大抵の場合は、秘密裏で行われますが)、一般社員は M&A の事実について知らないケースが多いのでインタビューすることが出来ません。
この場合、担当部署の長が、担当部署の従業員に対して、M&A 目的の調査であることを隠して事情聴取するという方法が採用されることもありますが、その場合は質問者と対象者が上司と部下の関係となるため、部下が上司に気を使い、事実が正しく伝えられないこともあると思います。
またネガティブな情報に関しては部長が隠す可能性もあるので情報の正確性に一定の限界があると言わざるを得ません。
4. マネジメントインタビューをする際の注意点
マネジメントインタビューを実施する際の注意点は主に3つあります。
(1) 合同でマネジメントインタビュー
マネジメントインタビューは、法務部門だけでなく、 会計部門や経営管理部門など多くの部門で実施を希望することが多いです。 なぜなら法務部門に限らず、事前に受け取っている資料の補足や疑問点をインタビューによって解消をしたいからです。
マネジメントインタビューを一部門だけでなく複数の部門でまとめることが出来れば、インタビュー対象者の負担は少なくなります。 負担が少なくなるだけでなく、合同でインタビューを行うメリットは他にもあります。
複数回、マネジメントインタビューを行うと、どうしても同じような内容の質問をせざる得ませんが、合同でマネジメントインタビューを開催することによって、重複した内容の質問を避けることが出来ます。
また、複数の部門の長もしくは担当者が集まることによってインタビュアーの視点にない質疑応答を受けることが出来、担当しているデューデリジェンスに役立てることが出来るといったメリットもあります。
合同でのインタビューはメリットが多いので、各部門とインタビューを受ける人の調整が付けば合同インタビューを検討してみるのも良いかと思います。 ただし、ある特定の部門への質問が非常に多い場合などは、合同で開催することによって逆に効率が悪くなる可能性があるので検討する必要があります。
(2) 質問内容は事前にあらかじめ考えておく
当たり前のことですが、マネジメントインタビューで質問すべき項目に関しては事前にまとめておきましょう。当日思いつきで行う質問は、相手にも失礼ですし内容の薄いものになってしまいます。
マネジメントインタビューで行うべき質問事項についてはしっかり議論してあらかじめまとめておくことが重要です。
(3) マネジメントインタビューの内容をしっかり録音しておく
実際のマネジメントインタビューは、録音しておきましょう。録音することによって後 から内容を確認することも出来ますし、言った言わないで揉めることもありません。 トラブルを未然に防ぐ意味と内容を見返す意味で、マネジメントインタビューを実際に行っているときは、録音するようにしましょう。
インタビューの記録を残す際は、
- 質問内容と回答内容を正確に記録すること
- 質問者・回答者を記録すること
- インタビューの時間、場所、 同席した者の氏名を記録すること
がポイントになります。
当たり前ですが、録音することは、相手側にもしっかり通知しましょう。後から分かると隠し録りのような印象を抱き不信感を与えてしまうからです。
5. マネジメントインタビューを効率的に進めるためには
この章では、マネジメントインタビューをより効率的に運営するためのコツについて説 明します。マネジメントインタビューを効率的に行うポイントは主に3つあります。
(1) 難しい内容の質問の場合、具体例を添えて質問するようにする
質問内容が抽象的で難しい内容の場合、「この質問の意味は○○です。 例えば○○の場合、○○となります。」という風に具体例を載せて説明すると、相手も応えやすくなるので分かりやすく質問することをこころがけましょう。
(2) 質問する前に質問の回答が得られている場合は質問を省略する。また重要な質問
事項でより深い回答が欲しい場合は、角度を変えて質問するなどのエ夫をしましょう。
また質問事項について、前の質問の段階で回答が得られていれば、省略するようにしましょう。同じ回答をすることは買収対象企業にとっても負担ですし時間の無駄になってしまいます。
また重要な質問でより深い回答が欲しい場合は、質問の仕方を変えて質問することが重要です。質問の仕方を変えることによってより深い回答を引き出すことが出来るかもしれないからです。
(3) 多くの専門家に同席してもらうようにする
一般的に法務事項が中心になるマネジメントインタビューの場合は弁護士が同席することが一般的です。
しかし財務上の話が出てくると、公認会計士や税理士が専門になってきます。
財務会計上のマネジメントインタビューも行いますが、弁護士と公認会計士などが別々に出席すると、買収対象企業は法務事項のマネジメントインタビューでも答え、財務事項のマネジメントインタビューでも答えなければいけない可能性があります。
そうなると回答者の負担が大きくなってしまうので、効率的にマネジメントインタビューを行うためにも一度のマネジメントインタビューで弁護士や公認会計士などの専門家を同席してもらうようにするのは検討すべき事項だと思います。
専門家の同席にはデメリットもあります。
専門家に同席してもらうデメリットはズバリ、コストです。弁護士や会計士などの士業の方 は、時間単位で報酬を受け取っているので、専門のマネジメントインタビューのみに出席してもらうよりも高額のコストがかかってしまいます。
6. まとめ
今回は、マネジメントインタビューのポイントについてまとめました。
M&Aと聞くと、財務状況や経営状態などを数字で判断するイメージがあると思いますが、買収対象企業の経営者の人となりや、 資料だけでは判断することの出来ない情報にはついては直接インタピューして確認することが必要になります。
マネジメントインタビューは買収対象企業のデューデリジェンスの中でも非常に重要です。
是非、今回の記事を参考にM&A 行う際のマネジメントインタビューについての理解を深めていただければ幸いです。
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