あ M&AにおいてはDD(デューデリジェンス)が大切です。そして、DDプロセスの一部としてマネジメントインタビューの重要性が高まっています。
本稿ではマネジメントインタビューの目的とポイントについて詳しく解説します。
1.マネジメントインタビューとは
マネジメントインタビューとは、経営者に対する質問です。
M&Aでは、買収対象企業について詳細な調査が必要で、デューデリジェンス(買収監査)が行われます。しかし決算書の数値などだけではつかみきれない内容も多くあります。そこで、詳細な内容を対象企業の経営者と対面し、直接質問するのです。
マネジメントインタビューでは、対象企業の将来的な展望、各種リスク、抱える課題など全般的な事項を経営者にヒアリングします。ヒアリング内容に基づいて、資料の内容を修正したり、新たに発覚した問題点について追加のデューデリジェンスを行なったりもします。
2. マネジメントインタビューの目的
M&AのDD(デューデリジェンス)においてマネジメントインタビューを行なう目的は、主に次の5つです。
(1) 開示を求めた資料の内容から生まれた疑問点に対する回答を求めること
(2) 書面だけではわからない問題点を調査すること
(3) 書面で行ったDDで回答のなかった事項の確認
(4) 経営者の人となりを理解し、信頼関係を築く
(5) 経営者が考える事業戦略や事業計画を理解する
注意点やリスクをできるだけ把握してから経営者に内容を聞きたいという意図が働くため、マネジメントインタビューはDDの最終段階で行われることが多いのですが、マネジメントインタビューを最初に行えば、お互いの顔が見えることで確認事項のポイントを理解し合えることがあります。理想をいえば、マネジメントインタビューを2回に分け、DDの冒頭と最後に設定したいところです。
しかし時間の制約があるので、そのようなことはほぼ不可能です。
そこで、できれば最初にマネジメントインタビューを行い、お互いをよく知ってからDDするほうが、お互いに確認事項のポイントを理解できるというメリットがあるのです。
3. マネジメントインタビューのポイント
(1) 合同でインタビューする
インタビュー対象者の負担を軽減させるために、合同インタビューが可能かどうか検討し、法務や財務など複数の専門家でDDを行います。他分野の専門家と行うDDと合同インタビューには、次の3つのメリットがあります。
・重複した質問を回避し、インタビュー対象者の負担を軽減できるので、効果的なDDが可能になる。
・他の分野の専門家からの視点も共有できる
・他の専門家の質問を、自分のDDの参考にできる。
(2) 事前に質問事項リストを作成しておく
マネジメントインタビューをスムーズに進めるためには事前準備が大切です。聴取すべき事項を確認し、質問事項リストを作成しておくようにしましょう。
DDの対象となった資料をもとに、インタビューに必要な質問事項を予め用意しておくことが大切です。
(3)マネジメントインタビューの記録を取っておく
マネジメントインタビューは、DDの目的を達成するために行われます。
DDにおいて、マネジメントインタビューで得られた情報は非常に重要なので、以下のようにきちんとした形で記録を残しておくようにします。
・質問者と回答者の名前を記録
・質問内容と回答内容を正確に記録
・インタビューの時間や場所、同席した出席者
4. インタビューを行なう姿勢
マネジメントインタビュー行う際は、相手に不信感を持たれたり、敵対心を抱かれたりしてはいけません。インタビューがスムーズに進まないとDDが達成できない可能性もあるので、慎重な配慮が必要です。
しかし、円滑なインタビューのために質問がおろそかになったり、不十分な内容のインタビューになったりしては意味がありません。
必要な情報を相手から引き出せるような質問を事前に考えておきながら、マネジメントインタビューでは厳しい質問も必要だということを相手に理解してもらうようにしましょう。
5. マネジメントインタビューの対象となった場合
これまでは買い手側の視点から、マネジメントインタビューの 姿勢や目的を解説しました。
それでは、インタビュー対象者としてインタビューを受ける場合、すなわち売り手側(買収される側)の視点からは、どのような点に注意しておけばいいのでしょうか。
マネジメントインタビューが行われるのは、友好的M&Aの場合が多くなります。
DDの目的を早く達成し、クロージングの交渉ができるよう、売主側でも次のような準備を進めておくようにしましょう。
(1) 事前に買主側の出席者(弁護士など)を把握しておく
(2) マネジメントインタビューで想定される質問を理解しておく
(3) 事前に資料を用意しておく
6. まとめ
マネジメントインタビューとは、経営者に対する直接質問です。M&AのDDにおいて、決算書の数値などの資料だけでは把握できない詳細な調査を行うことが目的です。
最近は、会社売却によるマネジメントインタビューはM&Aの中でもかなり重視されるようになってきています。
マネジメントインタビューを受けることで信頼を得られますし、会社の重要性を主張することもできます。マネジメントインタビューは、会社を売却する際の重要な審査基準になるので、きちんとした対応を行うようにしましょう。
▼参考記事:マネジメントインタビュー(M&A用語集)