M&A

後継者不在のIT企業が急増中 ── IT企業のM&A・事業承継という選択肢

「いつか誰かに会社を継がせたい」と思いながらも、後継者が見つからないまま年齢を重ねている経営者が増えています。特に中小IT企業(システム開発会社やSES企業)では、この問題が深刻化しています。

本稿では、後継者不在が深刻なIT企業(システム開発会社・SES企業)の実態を解説したうえで、「廃業」でも「社内承継」でもない第三の選択肢として注目される「IT企業のM&A・事業承継」の概要とメリットを紹介します。

1、 なぜIT企業(システム開発会社・SES会社)で後継者不在が深刻なのか

中小企業庁の調査によると、日本の中小企業全体で後継者不在率は約60%に達しています。なかでも中小IT企業(システム開発会社・SES企業など)は、構造的な理由からこの問題が特に顕在化しやすい業種です。

第一の理由は、経営者の高齢化です。1990年代のIT黎明期に創業し、長年エンジニアとして現場を支えてきた経営者が、いまや60代・70代を迎えています。当時は「技術があれば食える」という気概で起業した世代であり、事業承継の計画を後回しにしてきたケースが少なくありません。

第二の理由は、IT業界における後継候補の育成の難しさです。技術職出身の経営者は、現場のエース人材をプレイヤーとして活躍させることを優先するあまり、経営者としての育成機会を与えてこなかったケースが多く見られます。「エンジニアとしては優秀だが、経営を任せられるかは別の話」という悩みを持つ経営者は多いでしょう。

第三の理由は、親族承継の難しさです。一般的な事業承継では子どもや親族への引き継ぎが第一の選択肢になりますが、IT企業の場合は技術的な知識が求められることに加え、株式の評価額が高くなりやすいため、相続・贈与にかかる税負担が親族承継を阻む壁になるケースもあります。

2、 後継者不在のまま放置するとどうなるか

後継者が見つからないまま経営者が高齢化すると、最終的に廃業を選ばざるを得ないケースが増えます。東京商工リサーチの調査では、休廃業・解散した企業の半数以上が「黒字廃業」であるというデータがあります。つまり、事業の競争力があっても、承継者がいないというだけで会社が消えてしまうケースが実態として多く存在するのです。

廃業は経営者個人にとっても痛手です。長年にわたって積み上げた技術力・顧客基盤・ブランドがすべてゼロになります。従業員は職を失い、取引先には迷惑がかかり、場合によっては経営者が個人保証を抱えたままになることもあります。

さらに、IT業界は慢性的な人材不足を抱えています。熟練エンジニアが多く在籍する中小IT企業が廃業することは、社会全体の技術力の損失にもつながります。国としても事業承継の促進を重要施策に掲げており、M&Aを活用した事業承継への支援策も拡充されています。

3、  事業承継型M&Aとは何か

事業承継型M&Aとは、後継者不在を解消するために第三者(他の企業や投資家)に会社を譲渡するM&Aの手法です。一般的なM&Aが「成長のための買収・合併」を目的とするのに対し、事業承継型M&Aは「会社を存続させる」「従業員・顧客・技術を守る」ことを主目的としている点が大きな特徴です。

買い手となるのは、主に以下の3つに分類されます。

同業他社技術力・顧客基盤のシナジーを狙って買収。最もスムーズに事業が継続しやすい。
異業種企業DX推進や新規事業立ち上げを目的に、IT人材・技術を取り込みたい事業会社。
投資ファンド経営を立て直してから次の買い手に橋渡しをするファンド型。経営者が完全に引退したい場合に選ばれやすい。

 

重要なのは、「売る」こと自体がゴールではないという点です。誰にどのような形で引き継ぐかによって、従業員の雇用環境も、会社のブランドも、技術の活かされ方も大きく変わります。信頼できるIT M&Aアドバイザーを選び、条件や相手をしっかりと見極めることが不可欠です。

4、 IT企業が事業承継M&Aで得られるメリット

(1) オーナーの個人保証解除と適正な対価の受け取り

中小企業の経営者は、会社の借入に対して個人保証を求められていることが多く、廃業した場合でも個人として債務が残るリスクがあります。M&Aによる事業承継では、買い手が会社を引き継ぐことで個人保証の解除が交渉できるケースがあります。また、廃業では手元に何も残らないところを、M&Aでは株式の譲渡対価として適正な金額を受け取ることが可能です。

(2) 従業員の雇用継続と待遇改善の可能性

「自分がいなくなった後も、社員に安心して働いてほしい」という思いは、多くの経営者が持っています。事業承継型M&Aでは、買い手企業が従業員の雇用を引き継ぐことが前提となるケースがほとんどです。さらに、規模の大きい会社に属することで、給与・福利厚生・キャリアパスが改善されることもあります。

(3) 技術・ブランドの存続

廃業では、経営者が長年かけて培った技術ノウハウや顧客との信頼関係がすべて失われます。しかしM&Aを通じて適切な買い手に引き継ぐことができれば、会社の技術・ブランド・文化を次の時代に繋げることができます。特にIT業界では、技術者の確保や特定分野のノウハウを持つ企業を求める買い手が多く、IT企業は高い評価を受けやすい傾向があります。

5、 事業承継M&Aの進め方とタイムライン

事業承継型M&Aは、一般的に準備開始からクロージング(最終的な契約締結・引き渡し)まで6〜18ヶ月程度かかります。大まかな流れは以下の通りです。

【Step 1】 相談・情報整理(1〜2ヶ月)

アドバイザーに相談し、会社の財務状況・技術資産・組織体制などを整理します。

【Step 2】 企業価値評価・候補先探索(2〜4ヶ月)

会社の価値を算定し、適切な買い手候補を探索します。IT特化型のM&Aアドバイザリーであれば、業界のネットワークを活かして最適なマッチングが可能です。

【Step 3】 交渉・条件調整(2〜4ヶ月)

買い手と条件交渉を行います。譲渡価格だけでなく、雇用条件・代表者の処遇・商号の維持など、売り手側が重視する条件を交渉します。

【Step 4】 デューデリジェンス・最終契約(2〜4ヶ月)

買い手が対象会社を詳細に調査(DD)した後、最終契約(株式譲渡契約など)を締結してクロージングを迎えます。
注意すべきは、「動き始めるタイミング」です。経営者の健康状態や意思決定能力が低下してからでは選択肢が狭まります。「まだ早い」と感じている段階から情報収集を始め、余裕を持ったスケジュールで臨むことが成功の鍵です。

6、 まとめ ── 「今が動き時」という判断が会社の未来を変える

後継者不在という問題は、「いずれ解決するだろう」と先送りにするほど選択肢が狭まっていきます。廃業しか道がないと思い込んでいた経営者が、事業承継型M&Aを活用することで会社を守り、従業員を守り、自らも納得のいく形で次のステージへ進んだ事例は、IT企業のM&Aにおいても増え続けています(IT業界のM&A事例はこちら)。

パラダイムシフトは、2011年からIT領域に特化したM&Aアドバイザリーとして、1万社以上のテクノロジー企業と向き合ってきました。IT企業のM&A・事業承継(システム開発会社・SES企業の売却・承継を含む)において、業界最大規模の実績を持ちます。後継者問題について、まずはお気軽にご相談ください

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