「VRやARでスポーツを味わえるサービスを作りたい」「テレビやライブとどう違うの?」などと気になっていませんか。
近年、スポーツ観戦の新しい形としてVRやARが使われています。野球やフェンシング、乗馬などさまざまなジャンルに採用されており、新しい見方を楽しむ人が増えているのです。
今回はIT関連の起業を試みる人のために、スポーツ観戦とVR・ARの関係をまとめてみました。この記事をきっかけに、新しいファンサービスのヒントを得られるでしょう。
## 1. VRやARとは?
まずはVRとARの基本的な意味を確かめましょう。VRは仮想現実、ARは複合現実と訳されます。2つの違いも考えながら読んでいただくと幸いです。
### (1) VRとは仮想現実
VRは「仮想現実」という意味です。主にヘッドセットを装着し、パノラマ映像で示された仮想空間を視覚的に味わえます。現実のように臨場感あふれる映像が特徴で、ユーザーは別世界にいるような感覚になるのです。
VRによっては完全な仮想空間だけでなく、別の場所にある実在の空間を疑似体験するサービスもあります。たとえば自宅にいながら、東京ドームで野球を見ているような感覚を味わう形です。
このように場所を選ばずに希望の体験を味わえるのがVRの魅力でしょう。架空の場所だけでなく、別の国や空間も楽しめるようになりました。
### (2) ARとは複合現実
ARは「拡張現実」という意味です。レースの映像は現実空間ですが、そこに仮想の視覚情報を加えます。たとえばテレビの映像を見ながら、同じ視覚内に画面設定のメニューや別のチャンネルの選択肢などを出せるのです。
ひとつの視覚だけでなく、補足情報も加えられるのがARです。この性質のおかげで、仕事のデータをオンライン上で管理しているときも、AR内のメニューや操作を使って情報をコントロールできます。
VRが別の視覚情報を味わうのが目的だとすれば、ARはそれだけでなく、能動的な操作で情報を求めにいける形です。
## 2. VRやARでのスポーツ観戦が注目される理由
VRやARは近年、スポーツ業界でも注目されています。お客さんが場所を選ばずに観戦できるように、技術が使われているからです。5G技術の浸透や動画配信サービスの浸透なども背景として挙がります。VRやARによるスポーツ観戦が注目される理由を見ていきましょう。
### (1) 5G技術の浸透
VRやARによるスポーツ観戦が広まっているのは、5G技術の浸透が背景とされています。これは携帯電話などに使われる通信規格の5世代目です。データの通信料やスピードが高まったおかげで、さまざまなデジタルコンテンツに応用できます。
スポーツ観戦は長時間に及ぶこともあり、データ容量が大きくなりがちです。そこで5G技術を使えば、高速かつ大容量の通信をスムーズにこなせます。これにVRやARを絡めると、ユーザーはストレスフリーで臨場感のある試合を楽しめるのです。
以上から5G技術の浸透は、VRやARの運用を後押ししています。
### (2) 新型コロナウイルスを受けた感染症対策
2020年の新型コロナウイルス感染拡大によって、自宅でスポーツを観戦する動きが高まりました。会場ではさまざまな感染症対策がとられているため、どこか居づらいと感じる人もいるでしょう。
コロナ禍によってリモートワークや動画配信など、さまざまなデジタルコンテンツの存在価値が注目されました。VRやARによるスポーツ観戦も、そうした背景が味方するでしょう。
会場に行けなくても臨場感を味わいたい人のニーズが高まっており、VRやARはそれを満たしてくれます。
### (3) 動画配信サービスの隆盛
2010年代後半から、動画配信サービスが隆盛を極めています。スポーツのコンテンツも動画配信が中心になりました。これによりARやVRのようなデジタルコンテンツの介入がしやすくなったのでしょう。
独自の視聴体験をユーザーに提供するために、スポーツチームや通信会社がVRやARビジネスに乗り出しています。これらの次世代システムで試合を観戦すれば、会場にいなくてもリアリティのある試合映像が提供できるからです。
VRを使えば一人でさまざまな角度から試合を見られますし、ARを使えば補足情報を使えます。映像配信サービスがこうした技術と結びつけば、新しい観戦スタイルが確立されるでしょう。
## 3. VRやARのスポーツ観戦のメリット3つ
VRやARを使ったスポーツ観戦には3つのメリットがあります。自宅にいながらの臨場感、データへのスピーディなアクセス、マルチアングルでの観戦です。それぞれの詳細を見ていきましょう。
### (1) 自宅にいながら臨場感を楽しめる
VRやARのおかげで、自宅にいながら臨場感を楽しめるのが大きいでしょう。たとえばVR空間なら、自宅にいながらでも試合会場を模した場所を楽しめます。実際の会場と似た感覚で試合を味わえるのです。
ARなら試合会場の空間の迫力をそのままに、補足情報のようなメニューも使えます。会場に行くよりARの方が楽しめるという人さえ現れるかもしれません。臨場感のある空間をどこでも提供できることが、VRやARには重要です。
VRやAR技術の発達により、我々はどこにいても臨場感のある映像を楽しめます。
### (2) 試合や選手のデータをすぐに見られる
VRやAR技術のサポートにより、試合や選手のデータをすぐに見られます。気になった選手や試合の情報を確かめたくなるときは、主にタッチ操作で解決できるのが便利でしょう。
このメリットのおかげで、スマートフォンやパンフレットで目当ての情報を探す必要はありません。同じデバイスで副次的な情報を見られれば、VRやARの映像から目を離さなくてよいのです。
試合中には選手や結果など、気になる情報がたくさん出てくるでしょう。ひとつの視界で補足情報が完結する技術は、ストレスフリーにつながります。
### (3) マルチアングルでの観戦も可能
VR観戦ができれば、マルチアングルも可能です。デジタル機器なら操作次第で試合会場の視点を変えられます。
それまではスポーツの会場に行けば、ひとつの座席に座り続けるのが常識でした。見やすいポイントを求めて移動を試みると、他のお客さんの迷惑にもなるでしょう。
しかしVR観戦は場所を選びません。操作によっていくらでも視点を変えられれば、試合状況に応じて見方を決められます。VRという技術は、短時間で複数の視点から試合を見せてくれるのです。
## 4. VRやARのスポーツ観戦・体験への実用例6つ
すでにVRやARを使ってスポーツ観戦や疑似体験ができるシステムが確立されています。ここでは野球やフェンシングなどさまざまな分野において、VRやARが使われた事例を見ていきましょう。
### (1) KDDI×横浜DeNAベイスターズ「バーチャルハマスタ」
2020年8月11日と9月29日にKDDIはプロ野球・横浜DeNAベイスターズとの提携により、VR空間での試合観戦システムの運用をしました。「バーチャルハマスタ」という名称で、無料トライアルを進めたのです。
VR空間上に横浜スタジアムを疑似再現しているのが特徴です。これによりファンは、実際の球場と似た雰囲気を楽しめます。8月11日の参加人数は横浜スタジアムの収容人数とほぼ同じとされています。
野球の試合における臨場感を自宅から楽しめる典型例でしょう。VR空間を生かした新しいパブリックビューイングに期待がかかります。
### (2) Intel「True VR」
アメリカ半導体大手のIntelは、バスケットボールの試合向けである「True VR」を開発しました。スポーツライブ観戦の雰囲気を忠実に楽しめるシステムとして注目されています。
マルチプラットフォーム配信機能や立体カメラポッドなどを通して、True VRを楽しめる仕組みです。試合会場でこうした設備を動かすことで、True VRの中でもマルチアングル観戦が可能になります。
試合中に視点を切り替えたり、選手の動きを間近で見たりできるのがメリットです。True VRは会場の観客の目が届かない視点も手に入れられます。臨場感のある演出として理想的でしょう。
### (3) CyberZ×エイベックス・エンタテインメントテレビ朝日「V-RAGE」
V-RAGEは、CyberZとエイベックス・エンタテインメントテレビ朝日の提携により生み出されたeスポーツ用VR施設です。
自宅からでもパソコンやスマートフォンからV-RAGEにアクセスできます。これによりeスポーツ観戦だけでなく、イベント体験なども受けられるのです。V-RAGE自体が観戦施設ですが、自宅にいながらでもeスポーツの迫力に満ちた戦いを楽しめます。
出場選手への投げ銭やコメントなど、副次的な機能も充実しています。他の動画配信サービスでも見られるような、選手とコミュニケーションを取れる機能が揃っているのです。eスポーツの見方をさまざまな形で楽しめるのが、V-RAGEの強みでしょう。
### (4) ライゾマティックス:フェンシングのAR動画
ライゾマティクスは日本フェンシング協会との提携により、2021年8月17日にフェンシングのAR動画を公開しました。本題は東京オリンピックに合わせて公開する予定でしたが、試合映像のリプレイ放映ができない関係で遅れています。
ライゾマティクスが開発したAR技術は、剣や選手の動きに合わせて光を生み出すトラッキングをしています。マーカーをともなった度重なる機械学習によって、光の位置が剣の動きに合うのです。
剣の動きに対するリアルタイムな可視化により、躍動感が加わりました。このようにスポーツの動きをわかりやすく伝える取り組みの発展が望まれます。
### (5) NTTドコモ「PLAY 5G 明日をあそべ」
NTTドコモは2019年7月22日に「PLAY 5G 明日をあそべ」をリニューアルオープンしています。そのなかで東京オリンピックやパラリンピックの競技の一部を題材としたVR体験を提供しているのが特徴です。
VRコンテンツには乗馬体験やスポーツ観戦があり、あらゆるポイントから競技を楽しめます。5Gならではのクオリティの高さもあり、臨場感あふれる映像を味わえるのです。
VR空間を通してスポーツ選手の視点を疑似体験したり、競技の新しい見方が分かったりするでしょう。
### (6) 名古屋グランパス「au 5Gシート」
KDDIはJリーグの名古屋グランパスと提携し、2020年からサッカー観戦の新スタイルを提唱しています。2021年3月17日には豊田スタジアムにて「au 5Gシート」を提供しました。
au 5Gシートでは専用スマートフォンと「NrealLight」というスマートグラスを使い、試合観戦用のディスプレイを見られます。ここにAR技術による補足データを合わせているのです。
「ARムービーサイネージ」では選手との記念撮影を疑似体験できるなど、充実したコンテンツです。会場にいながら臨場感のある体験ができるので、サッカーファンを喜ばせられるでしょう。
## 5. まとめ
VRやAR技術は、スポーツ観戦の新しい形を提供しています。自宅にいながら臨場感のある雰囲気を楽しめたり、試合や選手の補足データにアクセスしたりできるからです。
スポーツのファンは、VRやARのコンテンツに触れることで、新鮮な体験を味わえるでしょう。これから仮想空間の技術を使おうとしている事業者は、先行事例をぜひ参考にしてください。
KDDIやインテルなど、世界的に有名な会社が仮想技術を有効活用しています。そこからお客さんを楽しませるポイントを確かめましょう。