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コロナ禍で明暗分かれたアパレル・百貨店業界、その決め手は?

2020年に世界中で流行した新型コロナウイルスは、日本のアパレルや百貨店業界にも大きな影響を与えました。しかし、業界全体が揃って打撃を受けたわけではありません。

店舗撤退やブランド休止に追い込まれたものだけでなく、巣ごもり需要を味方につけて収益を上げた企業もあるからです。

コロナ禍で得をした企業と、損をした企業の違いが気になる人もいるでしょう。今回はアパレル百貨店業界の近況を調べている人のために、コロナ禍における業界の明暗をまとめました。躍進や衰退した企業の例を通し、その背景を知れば小売業界の今が分かります。

1.コロナ禍で明らかになった小売業界の問題点

コロナ禍により小売業界ではさまざまな問題が明らかになりました。代表例として以下の3つを紹介します。大手でも閉店が続出しているほか、セールスモデルの見直しを余儀なくされる調教も明らかになりました。

(1).大手5社で合計3100店舗以上の閉店

新型コロナウイルスの感染拡大にともない、日本では4月から5月にかけて全国で緊急事態宣言が発令されました。これによる政府や都道府県からの休業要請により大幅な損失を計上した結果、大手アパレル・百貨店でも閉店が続出しています。

売り上げの減少によって余儀なくされる形だけでなく、感染拡大防止を意識したサービス内容の見直しを踏まえて、閉店を考える会社もあるでしょう。

たとえばオンワードHDは2021年2月期までに700店舗、ワールドは同年3月期までに358店舗を閉める見通しを明かしています。2020年5月に経営破綻したレナウンにいたっては、同年12月期までに1700店前後を一挙に閉めることになりました。

このようにコロナ禍では大手のアパレル会社を中心に、チェーン展開中のブランドによる閉店が目立っています。

(2).商品の在庫があふれかえっている

休業要請を受けて従った結果、アパレル・百貨店の在庫があふれかえる事態が起きています。特に春夏ものの衣料品の在庫が山積みになっており、処分に困る業者が多いようです。

2020年の2月~5月にかけての新型コロナウイルス感染拡大の影響は、衣料品業界にとっての春夏シーズンを直撃しました。このシーズンの新製品は3~5月に新発売することが多いからです。

全国における緊急事態宣言解除は5月下旬でしたが、6月以降はセール期で、夏は服が売れづらいとされます。営業再開ができても服が売れないため、コロナ禍による損失を取り戻すどころか、赤字が増えるケースもあるでしょう。

感染拡大の影響は、衣料品店の在庫があふれかえるという物理的な問題も生み出しました。

(3).アパレル店のセールスモデルが破綻している

アパレル・百貨店におけるサービスのメインは対面接客です。しかし感染拡大を受けての新しい生活様式を政府が推奨したことにより、従来のセールスモデルが破綻する問題もあります。

従業員やお客さん同士のソーシャルディスタンス確保も感染拡大防止策として要請を受けています。しかしこの結果により、一度に店舗内に入れる客数に限りがあり、実店舗での購買数が上がらないのが問題です。

このようにアパレル業界で基本になっていたセールスモデル自体が、今では考え直さなければいけない事態が起きています。オンラインの積極的な活用に踏み出す業者もいますが、有効活用ができなければ収益が伸びないため、いわゆるDX(デジタル・トランスフォーメーション)への理解度もポイントでしょう。

コロナ禍により、アパレル業界のセールスモデルを新しく作り直す課題が浮き彫りになりました。

2.コロナ禍をアパレル・百貨店が乗り越えるポイントは?

コロナ禍によりアパレル・百貨店でも大半の企業が売上減に苦しんでいます。問題を解決する方法として、オンラインやDXの有効活用が挙がっている状況です。また従業員を介さないD2Cというサービス形式にも注目しましょう。

(1).オンライン販売での売り上げが増加

新型コロナウイルスの感染拡大期になっても、自宅からのオンライン注文を中心とした「巣ごもり消費」が話題になりました。これを味方につけた結果、オンライン販売で躍進する企業もあります。

たとえば女性のキャリア服をメインにした「kay me(ケイミー)」では創業以来オンライン販売に力を入れていました。実店舗の休業影響を受けながらも、オンラインの売上高に限ればアップに成功しています。

ここから見る限り衣料品業界でも対面接客にこだわりすぎず、オンライン販売に力を入れることで解決できる問題もあるでしょう。

(2).DX化にもとづいたサービスの変化がポイント

DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略で、企業によるデジタル技術の活用でビジネスモデルを変えた結果、お客さんに価値を提供する方法を改革することです。

単純にデジタル技術のある機械を導入するだけでなく、これを生かしてお客さんに「サービスを受けてよかった」と思わせる努力が重要です。

アパレル業界ではDXへの理解度が充分に進んでいないとされます。お客さんにとっては試着しないと服のサイズ感が分からなかったり、対面接客のイメージが未だに強すぎたりするからでしょう。

しかし近年はAmazonのようにインターネットでも服が買える時代になりました。この背景もあり、衣料品業界にとっても、DX化にもとづいた新しいサービスを打ち出すことが重要でしょう。

(3).D2Cタイプが需要を上げる

最近の衣料品業界でも、D2Cタイプのサービスが注目を集めています。「Direct to Consumer」の略で、商品を直接顧客に販売するモデルという意味です。自社で作ったものをネット販売などでお客さんに買ってもらうことが当てはまります。

アパレル業界でD2Cといえば、服をネットで買うだけでなく、採寸をオンラインで進めるやり方もポイントです。現在では誤差1cm以内に収めながら採寸できるAIが登場するアプリ「Bodygram」が登場するなど、直接の試着なしでも買えるサービスが話題になっています。

このようにお客さんが店を訪れなくても、納得した条件で服を買える環境の確立は、現在のアパレル・百貨店業界にとって大切ではないでしょうか。

3.コロナ禍で躍進した企業

新型コロナウイルス感染拡大という危機を迎えても、売上増を果たすなどで話題になった企業があります。大手から中小までの実例をチェックしてください。

(1).オンライン活用で売り上げを伸ばす「kay me」

「kay me」は2011年に創業した女性服ブランドです。「キャリア服」といういわゆる仕事に着ていくスーツなどを中心とした婦人服を展開しています。

kay meのポイントは主軸をオンライン販売にしていたことです。オンラインならお客さんにとっても不要不急の外出なしで服を注文できます。この結果kay meのオンラインでの売上高は2020年において増加し、業績にも好影響を与えました。

「オンラインカルテ診断」などネットを使ったサービス展開も話題です。こちらでは服の組み合わせについて、スタッフがリモートでお客さんの相談に乗ってくれます。

2021年8月期は前年比の2倍まで売り上げが伸びる見通しで、女性にとっては今後も注目のブランドでしょう。

(2).公式アプリ配信で話題の「ユニクロ」

ファーストリテイリング社が展開する衣料品店「ユニクロ」は、デジタルコンテンツの強化により、コロナ禍にブレイクする企業と考えられます。

2020年8月期の決算では、コロナ禍による売上減の影響がありましたが、公式スマホアプリのダウンロード数が伸びており、今後売上回復も期待できるでしょう。

2020年5月15日からユニクロは「アプリ会員特別限定価格」をともなったサービスを行っており、レジで会員IDをバーコードスキャンすれば割引をもらえます。さらに感染拡大防止の必需品であるマスクも自社開発するなど、時代に合わせたサービス内容の変化が話題です。

コロナ禍の影響を受けているユニクロですが、時代に合わせたサービスの変容で躍進を続けています。

(3).コロナ禍でも増益を上げる「しまむら」

「ファッションセンターしまむら」もCMなどで有名な企業です。普段着を中心にお得な価格で服を買えるブランドとして、長年活躍を続けています。

2021年3~8月期では、営業利益が11.3%増えました。さらに翌年2月期の営業利益として、前期から34.4%増を見込んでいます。コロナ禍にあっても活躍を続けていることで、多方面から注目を受けているのです。

コロナ禍を乗り越えるしまむらの取り組みとしては、値引きの抑制や広告費の圧縮によるコストカットが挙がります。さらに2020年10月1日からはオンラインストアもオープンしており、時代に合わせたサービスの変容が注目を受けています。

コストをかけすぎないことで売り上げたお金を守りながらも、しまむらはオンラインストア展開をはじめとした攻めの姿勢も忘れていません。今後の活躍にも期待しましょう。

4.コロナ禍で衰退した企業3社

一方でコロナ禍の影響を解決できず、衰退や経営破たんした企業もあります。代表例の3社を以下にまとめました。

(1).経営破たんした老舗アパレルメーカーの「レナウン」

レナウンは1902年創業の老舗アパレルメーカーで、昭和時代にはCMソングがヒットするなど多くのニュースを提供してきました。しかし日本がコロナ禍に揺れた2020年5月に経営破たんを迎えています。

もともと近年は赤字傾向が続き、特に2019年度の落ち込みが大きかったとされています。ここにコロナ禍の影響が加わり、企業がもたなくなったようです。今後はスポンサーを探しながら経営再建の道を探る見通しを明かしています。

2019年までの流れが悪いところにコロナ禍の影響が及んだことで、大手企業も行き詰まってしまうようです。

(2).102億円の赤字決算を出した「高島屋」

全国的に有名な百貨店である高島屋では、2020年3~8月期の連結業績のうち、営業収益が前年同期より34.4%も少ないなど、コロナ禍の影響を大きく受けています。

現在も休業要請を受けた損失への解決を見出せない状況が続くようです。感染拡大防止による催事の自粛に加え、海外からの訪日客が激減したことが、売り上げに影響しました。

海外でも上海やホーチミン、シンガポールでも臨時休業を余儀なくされるなど、店舗数の多さゆえに世界的な新型コロナウイルス感染拡大によるダメージは大きかったようです。現在も多くの国から渡航制限があるため、高島屋の訪日客による需要は見込めないでしょう。

コロナ禍により、大手の百貨店もかつてない苦戦を強いられています。

(3).85億円の赤字想定を出しているオンワードHD

オンワードホールディングスもアパレル大手として有名ですが、2021年2月期の連結決算において、85億円の赤字を予測しています。売上高の予想も前期から24.5%減る見通しで、店舗閉鎖も余儀なくされています。

2020年10月にオンワードは、「オムニチャネル対応複合ストア」を郊外の商業施設に出すことを明かしています。これにより自社のオンライン店舗である「オンワード・クローゼット」を店頭の在庫と連携する予定です。

これはコロナ禍においても、オンワードの国内におけるEC売上高が前年より38%多くなった背景もあるでしょう。

コロナ禍の影響を大きく受けたオンワードですが、オンライン部門に力を入れたことで巻き返しを図る状況です。

5.コロナ禍を乗り越えるカギはオンライン活用か | EC・DX化実例から考える

コロナ禍で多くのアパレル・百貨店事業が衰退したなか、躍進を見せた企業もあります。躍進の要因としてオンライン活用が挙がるでしょう。

今後の衣料品業界を変えるEC・DX化事例から、オンライン活用のあり方を考えてみましょう。

(1).ZOZOTOWNが展開する「マルチサイズプラットフォーム」

近年アパレル業界で目覚ましく活躍するZOZOTOWNでは、「マルチサイズプラットフォーム」を展開中です。自身の身長や体重を入れるだけで、ジャストサイズな服を提供してもらえます。

自宅から一歩も出なくても、自身の体に合ったサイズを想定できるのはお客さんにとって助かるでしょう。「巣ごもり消費」を味方につけるポイントとして、「家にいながら試着した気分になれる」形の満足感は見逃せません。

お客さんが自宅にいながら満足できる取り組みとして、ZOZOTOWNのやり方は参考にすべきでしょう。

(2).全身写真2枚だけで採寸できるAIサービス「Bodygram」

「Bodygram」というアプリを使えば、前・横をそれぞれ向いた全身写真2枚をベースに、AIがサイズを採寸してくれます。アパレル業界ではユニクロが採用していますが、異業種でも花王やエアウィーヴが使っており、知名度は上昇中です。

このアプリは12万人のデータにもとづいたディープラーニングにより、体の各部分のサイズを測れます。同じ身長や体重でも体つきは人により異なるので、細かい部分までサイズを測りとり、衣料品の提供に役立てるシステムはDX化のキーポイントでしょう。

「Bodygram」のように、衣料品提供に役立つアプリを使うことで、業者はお客さんの満足度を上げられるかもしれません。

6.まとめ

新型コロナウイルス感染拡大は、アパレル・百貨店業界にも脅威を与えています。しかしこれまで業界では進んでいなかったオンラインの活用により、売上を伸ばすなどして注目を受けた企業も見逃せません。

これからは無駄なコストを省きながらも、積極的なオンライン活用によりお客さんの満足度を上げる取り組みが重要でしょう。こうしたビジネスモデルに成功することで、売上回復も期待できそうです。

「コロナ禍でも問題解決の方法がある」と知るだけでも、衣料業界に関わる人にとっては安心できるのではないでしょうか。

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