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組織再編税制の概要と税制適格・税制非適格の税務上の違い

平成29年度の税制改正で大きく変わった「組織再編税制」。
この記事では、組織再編税制の概要と「税制適格」と「税制非適格」の税務上の違いについて解説します。

1. 組織再編税制とは?

組織再編税制とは、以下の組織再編行為にかかる課税について定めた税制度のことです。

  • 合併
  • 会社分割
  • 株式交換
  • 現物出資
  • 現物分配

平成13年の商法改正により会社分割制度が導入。これを契機に組織再編税制が創設されました。
会社分割だけでなく、合併や現物出資といったそれまでの組織再編ツールを含む包括的な法人税法上の制度です。

組織再編が行なわれる場合、原則として時価(その時の値段)で資産、負債を評価して移転します。しかし、合併や株式分割などすべての組織再編において時価で課税した場合、企業の適切な再編を阻害してしまう可能性があります。
そのため、一定の要件(適格要件)を満たす場合には、組織再編時の課税関係を生じさせず、今までの課税関係を継続させる(簿価での移転)という考え方が採られています。それが「組織再編税制」です。

2. 組織再編税制の仕組み

適格要件を満たす組織再編を「税制適格」、それ以外を「税制非適格」といいます。
適格・非適格の違いは資産を時価で引き継ぐか簿価で引き継ぐかの違いで、課税が発生するかどうかの違いとなります。

それぞれの税務的な取り扱いは以下の通りです。

分類 資産・負債の評価移転時の課税
税制適格簿価繰り延べ(課税しない)
税制非適格時価課税発生

組織再編は、資本関係に応じて次の3つに分類されます。

  • 100%グループ内再編
  • 50%超グループ内再編
  • 共同事業再編

下図の◯がついている項目をすべて満たしたら、税制適格になります。

要件100%グループ内再編50%超グループ内再編共同事業再編
金銭等の支払いがない
主要な資産・負債の引継ぎ-
概ね80%の従業員の引き継ぎ-
移転事業の継続-
移転事業の関連性- -
発行株式数の80%以上継続保有--
事業規模が概ね5倍を超えない--
特定役員の経営参画--

△はいずれかを満たす必要あり

3. 平成29年度税制改正がM&Aに及ぼす影響

平成29年度の税制改正で、組織再編税制は大きく変わりました。
スピンオフ税制、スクイーズ・アウト税制、適格要件の見直しがされ、事業再編にさまざまな手法が手当てされることとなりました。

(1)スピンオフ税制

スピンオフとは、株主に対して、会社の事業を分割して設立した子会社の株式または既存の子会社の株式を交付することにより、事業または子会社を切り離す行為をいいます。従来は非適格組織再編として取り扱われてきました。
しかし、単にその法人が2つに分かれるような分割であれば、移転資産に対する支配が継続できると考えられることから、新たな税制適格要件が創設されたのです。

これまでも、成長が見込みにくい事業を切り出して有望事業に経営資源を集中させたり、有望事業を独立させて成長を促したりするなど「スピンオフ」に対するニーズは高まっていました。
しかし、資産移転にかかる課税が足かせになっていました。産業界の強い要望によって、平成29年にようやく「スピンオフ税制」が実現したのです。

(2)スクイーズ・アウト税制

スクイーズ・アウトとは、ある会社の株主を大株主だけとするため、少数株主に対して金銭等を交付して排除することです。
100%未満の子会社を100%化する手法として、次の4つがあります。

  • 株式交換
  • 全部取得条項付種類株式の端株処理
  • 株式併合の端株処理
  • 株式売渡請求

スクイーズ・アウトによる完全子法人化は、手法や親法人の連結納税採用の有無により課税上の取扱が異なっていました。
これらの手法による100%子会社化を組織再編税制の下に位置づけ、適格要件に該当する場合には時価評価の対象外となり、連結納税時の欠損金の持ち込みを可能とすることとされたのです。

4. まとめ

組織再編税制は細かい規定が多く、わずかな再編手順の違いで税金が大きく異なります。判断ミスのないよう、条文や解説書を入念にチェックするとともに、必ず信頼できる税理士や弁護士等各種専門家に相談するようにしましょう。

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