1. M&Aによる買収の際に考えられるリスクとリスクヘッジについて解説

 M&Aは買い手、売り手双方にメリットがあります。買い手(バイサイド企業)の主なメリットとしては、売上規模の増加や事業におけるシナジー効果、売り手(セルサイド企業)の主なメリットは譲渡代金の取得や買い手企業のリソースを活かした事業戦略が可能になることなどを挙げることが出来ます。

 しかしM&Aには、このようなメリットがある一方、リスクもあります。

 今回は、M&Aの買い手のリスクやリスクに対するヘッジ方法について説明していきます。


▼M&Aの売り手のリスクおよびリスクヘッジにつきましては、こちらの記事をご覧ください

「M&Aにおける売却のリスクと、リスクを最小限にする方法を解説」


2. M&Aにおける買い手の主なリスクとは

 M&Aにおける買い手の主なリスクは、4つあります。 今回挙げるリスクはどれもM&Aの成功させるために避けるべき大きなものになります。


(1) 簿外債務を引き継ぐリスク

 M&Aにおける買い手のリスクの1つ目は、簿外債務を引き継ぐリスクです。

 簿外債務とは、帳簿に表れていない債務です。例えば、未払いの給料(未払い残業代を含む)や退職金です。今後支払う給料や退職金などに関してしっかり把握しておかないと買収した後に思わぬリスクを負うことになってしまいます。


(2) 買収した企業が結んでいた契約のリスク

 M&Aにおける買い手のリスクの2つ目は、買収した企業が結んでいた契約のリスクです。

 買収する前に売り手の会社が結んでいる契約の内容によっては、今後の事業展開を考えていくうえで契約の内容によっては大きな足かせになってしまう可能性があります。


(3) 統合後のリスク

 M&Aにおける買い手のリスクの3つ目は、統合後のリスクです。

 M&Aは、買収をして終わりではありません。企業の統合とは、異なる企業文化を持つものが一緒になるということですが、労務環境や人事など何もかも異なる会社同士が一つの会社になることは想像以上に大変なことです。お互いの文化の融合がうまくいかないと有力な人材の流出を招いてしまう可能性があります。

 M&A は、統合をさせることが最終目的ではなく、統合後、軌道に乗せてシナジー効果を生むことにあるため、統合後の人事や労務環境をしっかり考えておかないと大きなリスクになってしまう可能性が高くなります。


(4) 資金調達のリスク

M&Aにおける買い手のリスクの4つ目は、資金調達のリスクです。買収予定の企業とM&A に向けてどんなにうまく話が進んでいても、買収する資金がなければ元も子もありません。資金調達をすることが出来ないリスクは、M&Aの買い手にとって大きなリスクになります。



3. M&Aにおける買い手のリスクヘッジについて

 前の章では、M&Aにおける買い手の主なリスクについて説明をしました。この章では、これらのリスクに対するヘッジ方法について説明をします。


(1) 簿外債務・買収した企業に関する契約のリスクヘッジ

 M&Aにおける簿外債務や買収した企業の契約に関するリスクへッジの方法は、デューデリジェンス(DD)をしっかり行うことです。

 デューデリジェンス(DD)には、財務面について調査を行う財務DDや、契約関係などを調査する法務DDがありますが(各用語は当HPの用語集にリンクしています)、貸借対照表や損益計算書等の財務諸表や契約書など、書類や資料からわかるものはもちろん、マネジメントインタビューなども駆使し書類や資料に現れない事項について徹底的に調査を行うことによって、簿外債務や買収した企業に関する契約のリスクヘッジになります。


(2) 統合後のリスクヘッジ

 M&Aにおける統合後のリスクヘッジの方法は、 人事DDをしっかりと行い、統合後の人事制度や労務環境を予めしっかり構築しておくことです。 M&Aはとかく統合後のシナジー効果などの前向きな事項に目が行きがちになります。しかし統合後の労務環境などに目を向けないと後々大きな問題になってしまいます。 統合後の人材の流出などのリスクに備えて統合後の労務環境などの体制整備を行っておくことは、M&Aにおける統合後のリスクヘッジとして重要となります。


(3) 資金調達のリスクヘッジ

 M&Aにおける資金調達のリスクヘッジの方法は、たくさんの資金調達の方法を持っておくことです。

 M&Aの資金調達でよく利用されるのがLBO です。

 LBOとは、レバレジッドバイアウトの略称であり、買い手となる会社がSPC (特定目的会社)を設立し、銀行などの金融機関にSPCへ融資をしてもらい、 M&A完了後の新しい会社(統合後の会社)から得られる収益から返済をしていくというスキームとなります。LBO は買収相手のキャッシュフローを返済の原資にするので買い手の企業の規模が小さくても利用できる資金調達方法になります。

 このようなLBOを行う観点からは、また日頃付き合いのある銀行などの金融機関との関係性を良好にしておき、いざという時にスムーズに融資を受けやすくしておくことが重要となります。



4. まとめ

 今回は、M&Aにおける買い手側のリスクとリスクに対するヘッジの方法について説明をしました。M&Aには様々なリスクがあります。ぜひこの記事を参考にM&Aにおけるリスクについて理解を深めていただければ幸いです。