M&A

M&A スキームそれぞれのメリット、デメリット、使い分けについて解説

M&Aには、会社を買う方にも会社を売る方にもそれぞれにメリットがあります。特に最近は後継者不足のためスムーズな事業承継が難しくなっています。事業承継のためにM&Aを行う企業が増えています。買い手·売り手双方にメリットのあるM&Aですが、具体的な手法についてみなさんはご存じでしょうか?

今回は、M&Aのスキームについて、説明していきます。またそれぞれのスキームのメリット、デメリットについてもあますことなく説明します。これを読めばM&Aの代表的なスキームについてしっかり理解することが出来ます。

▼M&Aのメリットについては、「事業承継だけではない、M&Aによる買収のメリット」および

お金だけではない、M&Aによる売却のメリット」 の記事をご覧ください

1. M&Aの代表的なスキームは主に6種類

M&Aの代表的なスキームは、主に6種類があります。

今回は、代表的なスキームの中から特に使われることの多い3つのスキームについて紹介します。

2. 株式譲渡によるM&A

M&Aのスキームの1つ目は、株式譲渡を使ったスキームです。

株式譲渡を使ったスキームは、M&Aのスキームの中でもっともわかりやすい仕組みです。株式譲渡によるM&Aは、買い手企業が、売り手企業の発行済み株式の一部もしくは全部を買い取ることによって行われます。売り手企業は、株式の売却代金を手にすることが出来、買い手企業は、売り手企業の経営権を手にすることが出来ます。この株式譲渡のスキームは中小企業における M&A の中で、最もよく採用されるスキームになります。

では、この株式譲渡によるM&A にはどのようなメリット·デメリットがあるのでしょうか?

(1) 株式譲渡による M&Aのメリット

株式譲渡によるM&Aには、買い手側、売り手側どちらにもメリットがあります。

売り手側のメリットは、株式の売却金を得ることが出来ることです。また株式の売却ですが、複雑な手続きはありません。売却資金を得た経営者は、売却資金を基にハッピーリタイアメントを送ることが出来ますし、また新たな事業を起こすにしても売却資金を元にすることが出来ます。また、売却先の子会社社長として、親会社の潤沢な資金や販路を利用し、これまで以上に売上規模を増加させていくことや、親会社の役員として買い手企業の他の役員と共に双方の企業の成長に寄与するということも考えられます。

買い手側のメリットは、買い取った会社をそのまま受け取ることが出来ることです。 株式譲渡によるM&Aは、会社の持ち株比率が変わるだけなので買い取る会社が事業に関する許認可(例えば、建設業許可や食品製造許可など)を得ている場合、許認可はそのままですし当然ですが実績や会社の事業などもそのまま引き継ぐことが出来ます。

(2) 株式譲渡によるM&Aのデメリット

株式譲渡によるM&Aは非常にメリットの多いスキームになります。 売り手側のデメリットとしては、売り手企業の経営者からすれば、過半数の株式の譲渡を行う場合、当然ながら経営権は買い手企業に移転するため、買い手企業の方針と一致しないような場合は、最悪経営者の座から降ろされてしまう可能性も否定できません。

買い手側のデメリットとして、簿外債務など売り手側の会社の負の部分が後から出てくる可能性があることです。M&Aを行う際にデューデリジェンスをしっかり行わないと、 M&Aが終わった後に、簿外負債や不法行為が後から発覚する恐れがあります。株式譲渡によってM&Aを行う場合、売り手の会社をそのまま買い取ることが出来ることはメリットですが、負の遺産を引き継いでしまう可能性があることはデメリットになります。

株式譲渡の手続きや事業譲渡との違い、メリット・契約・税金についてはこちらの記事で詳しく解説されています。合わせてご確認ください。

3. 事業譲渡によるM&A

M&Aのスキームの2つ目は、事業譲渡によるM&Aです。

事業譲渡によるM&Aとは、一部の事業を買い取るM&Aになります。一般的には、キャッシュになりやすい優良事業部門や不採算部門、非主力部門などが事業譲渡によるM&Aの対象になりやすいです。

事業譲渡によるM&Aが良く使われる業界は、飲食店が多いです。意気込んで進出したものの、採算が合わず撤退することもあるでしょう。その際、事業譲渡によるM&Aが使われることが多いです。もちろん飲食店以外にも事業譲渡によるM&Aはよく用いられます。

では、この事業譲渡による M&A にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

(1) 事業譲渡によるM&Aのメリット (売り手側のメリット)

事業譲渡によるM&Aの売り手側の主なメリットは3つあります。

ア. 法人格を継続使用することが出来る

事業譲渡によるM&Aの売り手側のメリットの1つ目は、法人格を継続して使用することが出来ることです。事業譲渡はあくまで事業を売却するのであって法人格はそのまま残ります。売却した事業と同様の事業を行うことは出来ませんが、 M&Aを実施した後でも同一の法人格で会社を運営することが出来ることは大きなメリットになります。

イ. 主要事業の承継のみ行うことも可能であること

事業譲渡によるM&Aの売り手側のメリットの2つ目は、主要事業の承継のみ行うことが可能であることです。例えば、主要な事業のみを M&A によって売却をし、不動産賃貸など経営の負担が少ない事業のみを残しておけば老後の資金を確保することが出来ます。

ウ. 選択と集中が出来る

事業譲渡によるM&Aの売り手側のメリットの3つ目は、事業の選択と集中が出来ることです。中核以外の事業を売却することによって本業に集中することが出来るようになります。

以上が事業譲渡による M&A の売り手側の主なメリットになります。

(2) 事業譲渡によるM&Aのメリット (買い手側のメリット)

次に事業譲渡によるM&Aの買い手側のメリットについて説明します。事業譲渡によるM&Aの買い手側の主なメリットは3つあります。

ア. 取得したい事業のみを取得できる

事業譲渡によるM&Aの買い手側のメリットの1つ目は、取得したい事業のみを取得できることです。事業譲渡によるM& Aは、買い手が欲しい事業のみを取得することが出来ます。シナジー効果を生みそうな事業のみ取得できることは大きなメリットになります。

イ. 薄外債務を引き継がないで済むようになる

事業譲渡によるM&Aの買い手側のメリットの2つ目は、簿外債務を引き継がないで済むようになることです。引き継ぐ資産を限定することによって表面に現れることのない薄外債務を引き継がずに済むようになります。

ウ. 節税対策に利用することが出来る

事業譲渡によるM&Aの買い手側のメリットの3つ目は、節税対策に利用することが出来ることです。取得した事業の償却資産や事業譲渡によって発生するのれんを償却することによって課税対象所得を減少させ、法人税の支払いを減らすことが出来ます。しかも償却資産やのれん代の償却は実際に支出があるわけではないので節税効果としては大きいです。

(3) 事業譲渡によるM&Aのデメリット

メリットの多い事業譲渡によるM&Aですが、デメリットもあります。売り手側·買い手側のデメリットについて1つずつ紹介します·

ア. 売り手側の事業譲渡のデメリット

売り手側の事業譲渡によるデメリットは、社員に混乱が起こる可能性があることです。会社丸ごとのM&Aであれば新会社に移ることを個別に社員に同意を得る必要はありません。しかし、事業譲渡によるM&Aの場合は、新会社に移るか否かにつき個別に社員の同意を得る必要があるため、その過程で混乱が生じる可能性があります。

イ. 買い手側の事業譲渡のデメリット

買い手側の事業譲渡のデメリットは、事業認可がリセットされてしまうことです。事業を実際に行う現場の人たちが一緒でも管理する会社が変わるので事業認可を再取得する必要があります。行う事業によってコストは異なりますが、いずれにしても事業認可の再取得が必要なことはデメリットになります。また、同様に取引先との契約関係も1つ1つ引き継ぐ必要があるため、大量の契約がある場合には法務DDや契約の引継ぎに時間を要する可能性があります。

4. 合併によるM&A

M&Aのスキームの3つ目は、合併によるM&Aです。

合併によるM&Aは、吸収合併と新設合併の2種類があります。吸収合併とは、A 社がB 社を吸収して合併することをいいます。A社は存続会社になり、B社は、消滅します。

一方、新設合併とは、A社もB社もなくなって新たにC社を設立する合併のことをいいます。新設合併の場合は、会社設立の手続きや、新たに事業認可を得なければいけないなど様々な手続きが必要になってしまいます。ゆえに一般的には、合併は、吸収合併で行われることが多いです。

(1) 合併によるM&Aのメリット

合併によるM&Aのメリットは主に5つあります。 合併によるM&Aのメリットは、買い手側、売り手側共通のメリットになります。

ア. 余剰人員の削減

合併によるM&Aのメリットの1つ目は、余剰人員を削減できることです。特に総務や人事·経理などの管理部門に関しては、大きな人件費の削減を見込むことが出来ます。管理部門を一本化することによって、営業部門に人員を配置換えすることも可能になります。

イ. 節税効果がある

合併によるM&Aのメリットの2つ目は、節税効果が期待できることです。本来A社が黒字、B社が赤字の場合、連結納税を行っている場合を除いて合算することは出来ません。しかし合併をした場合は、損益通算を行うことが出来ます。また法人税だけではなく消費税も節税できる可能性があります。 課税対象が低い事業を実施している会社が、課税対象が高い事業を実施している会社と合併をすれば控除の割合が大幅に広がります。

ウ. 信用力の向上

合併によるM&Aのメリットの3つ目は、信用力の向上が期待できることです。中小企業でも信用力が高い会社はたくさんあります。しかしどうしても中小企業よりも大企業のほうが信用力は高い傾向があります。 合併することによって合併前よりも確実に規模は大きくなります。規模が大きくなることによって信用力の向上を期待することが出来ます。

エ. 営業力の向上

合併によるM&Aのメリットの4つ目は、営業力の向上が期待できることです。 特に同業種で営業エリアが一緒の場合、合併によるメリットは非常に大きくなります。 顧客の取り合いや過当な価格競争がなくなるのでメリットは非常に大きいです。

オ. ガバナンスの強化が図れる可能性がある

合併によるM&Aのメリットの5つ目は、ガバナンスの強化が図れる可能性があることです。不要である設備や協議の必要な社則などを合併を機に見直すことが可能になります。

(2) 合併のデメリット

メリットの多い合併によるM&Aですが、メリットがあれば当然デメリットも存在します。

合併によるM&Aのデメリットは主に2つあります。

ア. これまでの企業文化やノウハウを失う可能性がある

吸収合併を選択しても新設合併を選択しても、一方の会社が消滅してしまうことに変わりありません。これまで築き上げてきた文化やノウハウ、社風や伝統等を失う恐れがあります。

したがって、それにより従業員や役員を失う可能性もあり、会社にとっての重大な損失になる可能性があります。

イ. 小規模の合併でも多額の資金がかかる

合併によるM&Aのデメリットの2つ目は、小規模の合併でも多額の資金がかかることです。合併に伴うシステム整備だけでなく、株主や債権者への対応コストなどもかかります。また、突如、想定外のコストがかかることもよくあります。

5. まとめ

今回は、M&Aにおけるスキームのメリット、デメリットについて説明をしました。M&Aには様々なスキームがあります。それぞれのスキームには、メリット、デメリットが当然あります。是非M&Aを検討する際はどのスキームが最適かを選ぶのに今回の記事を参考にして頂ければ幸いです。

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