今、ビジネスのデジタルトランスフォーメーション化を考えていませんか。今回は金融、医療、飲食業界に携わる人のために、DX化に向けた課題や取り組みを解説します。
デジタル化が進む現代社会において、企業やサービスのDX化は多くの人にとってのテーマでしょう。しかしやみくもにデジタル技術を取り入れるのではなく、分野に合わせた課題を見つけ出し、解決に向けてDXをどのように行うかを考えましょう。
今回の記事では金融、医療、飲食にスポットを当て、それぞれにありがちな課題と正しいDX化への取り組み方を挙げます。DX化の実現で企業やサービスにどのような効果をもたらすかも、実例を交えて紹介するので最後まで読んでください。
1.DX実行の前に学ぶべきこと
企業にDXを取り入れようと思い立っても、大切なことを学ばなければ成功はできません。DXについて、以下のことを知る必要があるからです。
- 経営者がDXの本質を理解すること
- 無計画なDX化は失敗を招くこと
- 会社全体の現状を把握すること
- DX化を推進する経営層と、現場との温度差に注意すること
以上に挙げた4つのポイントについて、詳細を見ていきましょう。
(1)経営者がDXの意味を理解すること
経営者がDX化を考え始めたら、最初にそれ自体の意味を理解しなければいけません。DXを知らないで成功できる可能性はないでしょう。
DXとは単に仕事のデジタル化をすることではありません。デジタル化によって、会社の生産性やお客さんにとってプラスになる効果を生んで、初めてDXと呼ぶからです。
ライバル企業がDXに成功していたり、DXに対する前向きなニュースだけを見て、「自身もやってみよう」と思い立ってもうまくいかないでしょう。経営者や企業がDXについてのノウハウを知らないからです。
無駄な失敗を避けるためにも、経営者自身が「DXの意味は何か?自身の企業に導入することでどのような効果をもたらせるのか?」について掘り下げましょう。
(2)無計画なDX推進は失敗を招く
計画性もなしにDXを推進しても意味がありません。スタートする前には、しっかりとした計画を組むことが大切です。「いつまでにどの部分が終わる予定か」というところまで見通しを立てましょう。
DXを実現するには、企業の「デジタル化」が充分なレベルまで進んでいる必要があります。それまでデジタル技術を使っていなかった会社が、短期間で全体をいっぺんに変えるのは無理です。たとえば紙ベースでの帳票管理をデジタルに変えてみるなど、小さな取り組みから進める必要があります。
このようにDXは、アナログな部分を少しずつデジタルに変え、そのたびに生産性や売り上げなどの変化を検証しながら進める必要があります。「DX」という雰囲気のよさだけで、充分な計画もなしに企業を変えようとしてもできません。
(3)会社全体の現状を把握しよう
DX化の前に、会社全体の現場をチェックする必要があります。ポイントをリストアップすることで、経営者にとっては企業の課題が分かりやすくなるでしょう。具体的に以下の4点を踏まえてください。
- どこまでIT化が進んでいるか
- IT化していない場所でどのような問題が起きているか
- IT化によって、どのように職場環境が変化するか
- IT化で、お客さんのサービスの利用方法がどのように変わるか
以上の4点を踏まえて、IT化による企業への影響を想定しなければなりません。ここまでリサーチしたら、解決のために必要になるものを揃えましょう。
(4)DX化を推進する経営層と、現場との温度差に注意
経営層がいざDX化を進めようとしても、現場との温度差に注意しなければなりません。現場で働く人たちが従来のワークスタイルに慣れていることから、環境の変化に戸惑う可能性があるからです。
必要に応じて、現場の意見を取り入れたり、DX化が必要な理由を丁寧に説明してあげることが重要です。同じ企業内でも働く場所によって意識に差があると、情報共有がうまくいきません。別々の部署による対立から、社内の雰囲気が悪くなることもあるでしょう。
現場の反発が原因でDX化を断念しないように、企業内での認識のすり合わせに努めましょう。企業に関わる人々の理解を得ることも、DX化には大切なことだからです。
2.金融業界のDX化に向けた課題と取り組み
金融業界でもDX化が進んでいますが、具体的に何が課題になって、どのような取り組みがあるか参考にしたい人もいるでしょう。金融関係の例からDX化のヒントを示します。
(1)金融業界で重要な課題は?
金融業界において、DXで解決できそうな課題は以下の2点です。
- 顧客向けのサービスの効率化
- サービスを顧客が手軽に利用できる環境整備
金融機関はお金を扱うものである以上、銀行を中心に多くのお客さんが利用します。以上の2つのポイントを踏まえながら、お客さんが柔軟に金融機関を利用できるサービス作りが重要です。
(2)金融業界のDX化で有効な取り組みは?
DX化によるサービスの効率化や、お客さんが使えるデジタルサービスの環境整備をめぐり、さまざまな取り組みが考えられます。たとえばサービスの効率化なら、銀行自体のクラウド化が挙がるでしょう。これにより顧客はパソコンやスマートフォンさえあれば、どこからでも銀行にアクセスできます。
顧客が使えるDX化サービスとしては、新規口座申し込みフォームを紙からタブレットへ変えたり、銀行から融資を受けるための必要書類やハンコをデジタル化したりなどが好例です。このように金融機関でも、少しずつデジタル化を進めることにより、お客さんに使いやすいと感じさせられます。
(3)金融業界のDXの成功例「肥後銀行」
肥後銀行では2019年6月ごろからDX化を推進しています。たとえば銀行の待ち合いロビーで行員がお客さんにタブレットをわたし、新規口座申し込みや住所変更などの届け出を書いてもらう取り組みを行っています。
待ち合いロビーで自分の出番がいつになるのか不安なお客さんもいますが、タブレットをもらうことで手続きに時間を使えます。このように待っているお客さんを退屈させないという肥後銀行の取り組みは、DX化のヒントになるでしょう。
3.医療業界のDX化に向けた課題と取り組み
医療業界でも多くの企業が課題を解決しようとDX化に取り組んでいます。代表的な課題や実践法、成功例を見てみましょう。
(1)医療業界で重要な課題は?
医療業界のDX化では、患者の健康管理の効率化という課題があります。患者の中には入院したり、何度も病院に来たりするケースがあるので、そのたびに膨大なデータから特定の患者に関するものを探すのは大変でしょう。
特に現代の日本は高齢化が進んでいるため、高齢者への医療体制を効率化することは大切です。これをIoTやAIの力で実現できれば、医療業界の発展につながるでしょう。しかし患者の健康管理の効率化は、多くの医療関係者が解決を願う課題ではないでしょうか。
(2)医療業界のDX化で有効な取り組みは?
医療業界のDX化には、電子カルテのような医療データのクラウド化が挙がります。病院内にサーバーを設置して、パソコンやタブレットでデータをチェックするのが主な方法でしょう。
医療データのクラウド化により、特定の患者における病歴や診断歴が検索などで見つけやすくなります。クラウドサービスなら複数の病院でのデータ共有により、多くの医療従事者が特定の患者を正しく理解し、正しい治療法を与えられるでしょう。このように医療データのクラウド化は、業界の発展に有効です。
(3)医療業界のDXの成功例
「医療法人鉄蕉会 亀田メディカルセンター」でも、医療データのDX化を積極的に行っています。たとえば「Microsoft」のデータ管理ソフトウェアを導入することで、患者のリハビリメニューの管理やチェックを効率化したり、業務フローを自動化したりしました。
DX化によって、患者に良質なサービスを素早く届けるだけでなく、約4000人が働く同会においてワークスタイルをスムーズに変えるなどの効果をもたらしています。このように患者だけでなく、医療従事者の働き方改革という視点でもDXは役に立つでしょう。
医療dxについては、こちらの記事で詳しく解説されています。
あわせてご確認ください。
参考:医療dxとは?医療dxのメリットと安く導入するコツ|メディカルツールナビ
4.飲食業界のDX化に向けた課題と取り組み
飲食店で代表的な課題と、それを解決するためのDX化による取り組みを知りたい人もいるでしょう。ここでも実例を交えながらDX化のヒントを解説します。
(1)飲食業界で重要な課題は?
飲食業界は形式が多く、何軒も集まっている地域があることから、集客力が大きな課題になります。近くを通る人にチラシを配ったり、店舗を魅力的に見せる戦略会議などに力を注ぐ人もいますが、人手不足で思うように進まないケースもあるでしょう。
夢だった飲食店を開くことはできても、集客のノウハウが分からないばかりに売り上げで苦戦する経営者もいます。以上から飲食業界では、料理の魅力を人に伝えるための取り組みがポイントになるでしょう。
(2)飲食業界のDX化で有効な取り組みは?
DX化により、さまざまな方法で飲食店での集客を効率化できます。たとえば「Insta Town」のように、Instagramへの投稿から、自身の看板料理が好きそうなターゲットの情報を探れるAIを導入したとします。これにより特定の層の集客に力を入れるきっかけを作れるでしょう。
他にもチラシを配るのが面倒だという人にとっては、SNSや情報サイトで店の宣伝をすることも考えられます。このようにデジタル技術を使うことで集客方法を工夫することが可能です。
(3)飲食業界のDXの成功例
三重県伊勢市にある1912年創業の「老舗飲食店ゑびや」は、DX化により経営危機を乗り越えた例として話題です。
たとえば来店者をエクセルでデータ化することで、次の日以降の来店予測を立てています。これにより、DXを導入する以前の経営の厳しさを脱することができました。来店者のデータ化により、各メニューの注文数を予測してフードロス削減にも取り組めるなど、ゑびや側にとっても副次的な効果が出たそうです。
このようにDX化により、メニューに合わせたターゲットを絞り、集客を工夫することで売り上げを伸ばせる可能性があります。
5.まとめ
以上、金融・医療・飲食の三分野を例にして、解決すべき課題や正しいDX化の例を紹介しました。お客さんに良質なサービスを無駄なく与えたり、経営する側の環境を改善したりするうえでも、DX化は有効な手段です。実例まで参考にしながら、自身が経営する会社ではDX化がどのような影響を与えるかをイメージしましょう。
ただし取り入れるには、経営者本人がDX化を充分に理解し、綿密な計画を組まなければなりません。正しい道筋を意識し、できることからデジタル化を進めることが重要だからです。
DXの失敗から学ぶ成功に導く重要ポイントはこちらの「中小企業DX情報館」の記事で詳しく解説されています。合わせてご確認ください。