2020年1月14日に、Google Chromeにおいてサードパーティクッキーの将来的な打ち切りが明らかになりました。Googleが公式ブログで発表したもので、オンライン広告などのWebマーケティングのビジネスを手がけていた人々には衝撃的だったでしょう。
サードパーティクッキーの打ち切りで、今までどおりGoogleを使えなくなるのかと不安になったり、どのような効果が出るのか気になったりする人もいるのではないでしょうか。
今回はIT技術に深い知識を持たない人でも分かりやすいように、Google Chromeにおけるサードパーティクッキー排除の内容や影響を解説します。Googleの変化の全容をつかみ、今後のインターネット利用に役立てましょう。
1.2020年1月にGoogleがサードパーティクッキー排除を発表
2020年1月にGoogleは、現行のサードパーティクッキーを2年かけて段階的に取りやめるプランを発表しました。簡単にいえばGoogleにおいて今後、閲覧データなどが使えなくなります。
今回のプランにより、外部企業が個人ユーザーのアクセスに関する履歴を調べられないなどの影響が出るかもしれません。特定のワードをある日何人検索したかが分からなければ、ネット広告の仕事にも響きます。
現に広告プラットフォームをGoogleに提供していたcriteoの株価が16%下落するなど、発表当初からネットビジネスの地殻変動を感じる人も多いようです。
日本でも大手メディアが報じるなど話題になったので、オンラインをメインにした事業者は今後のGoogleの動向に要注意でしょう。
2.クッキーとはそもそも何か
クッキーとは、ユーザーがこれまでにアクセスしたサイトなどをリストアップし、行動履歴を記録するデータです。今回問題になっているサードパーティだけでなくファーストパーティがあるなどの詳細をまとめました。
(1).ユーザーの閲覧履歴を保存するデータ
クッキーは1994年に考案を受けたものです。当初はウェブサイトが直接発行するものがメインで、ブラウザ側にユーザーの閲覧履歴が記録・保存を受けるしくみを意味します。
ほかのサイトに移動しても、ログイン状態やネットショップで購入を考えている商品のリストをキープできます。
IT技術の進歩にしたがい、企業の業績やアクセスアップを目指して、マーケティング目的でクッキーを使う人が増えました。 一度サイトを訪れたユーザーを検知し、潜在的なニーズに合わせて繰り返し広告を配信する「リターゲティング」というテクニックもクッキーがきっかけです。
(2).クッキーには「ファーストパーティ」と「サードパーティ」があるサード
クッキーには、ファーストパーティ用とサードパーティ用があります。ファースト型は主にログインキープに役立ち、ユーザーがアクセス中のウェブサイトが直接発行するものです。
サード型は、特定のウェブサイトと契約などでつながっている外部の広告配信業者が、サイトにタグを埋め込んでできるものです。タグの埋め込みで広告などの情報をユーザーに見せられ、宣伝を行えます。
ファースト型はウェブサイトが、ユーザーに快適に利用してもらうためです。サード型は事業者が宣伝や利益を目的にウェブサイトと協力しながら集客を目指す目的が強いなど、クッキーもタイプにより違います。
(3).Googleでは従来から手動でクッキーを無効にできる
クッキーはPCの動作を軽くするなどの目的から、ユーザーの手動で無効にできます。クッキーが動いているぶんサーバーが重くなることから、ブロック設定が可能です。
パソコンやAndroidスマートフォンならGoogle Chrome、iPhoneならSafariより設定できます。快適なインターネットの利用のために、クッキーを取り除くのも手でしょう。
3.サードパーティクッキー排除の詳細とは?
今回のGoogleにおけるサードパーティクッキー排除は何を意味するのでしょうか。段階的なプランなどの詳細を解説します。
(1).措置は今後2年かけて段階的に
Googleの今回の発表によると、プランが明らかになってすぐにサードパーティクッキーが使えなくなるわけではありません。2年かけて廃止に向けてシステムを変えていくしくみです。段階的な変更により、ネットユーザーも新しいルールに順応しやすくなるでしょう。
急な変更はオンラインビジネスを行っている人にとって大きな負担になるので、広告業界などはプランに好意的のようです。2019年11月にもGoogleはChrome開発者サミットでトラッキング防止への取り組みの本格化を語っていたことから、IT系の事業者にとっては心の準備がしやすかったのでしょう。
(2).Googleからクッキーや広告自体がなくなるわけではない
Googleの発表では、Chrome全体からクッキー自体がなくなるわけではなく、あくまでも現行のサードパーティクッキーの提供が終わるだけです。
実際のオンライン広告や解析ツールには、サイトトラッキング抑止機能であるsafari ITP対策済みが多い状況です。サイトトラッキングとは、アクセスしたユーザーの別サイトなどでの行動を検知するものですが、プライバシーにかかわるなどの問題点がありました。
(3).あくまでもユーザーが安全にサイトを使えるようにするため
今回のサードパーティクッキーの排除では、クッキーや広告の出し方をめぐるルールが変わると考えるべきでしょう。クッキーの基本理念である透明性やコントロールに合わないトラッキング手法は、2年間かけて段階的に使えなくなります。
ユーザーのネット上での行動を追えなくなることから、行動監視につながる可能性が低くなります。アクセス履歴を参考に特定ユーザーに合った広告を出す「リターゲティング」を行っている事業者にとっては、業態の見直しが必要かもしれません。
4.サードパーティクッキー排除で想定できるメリット2つ
Googleが今回明かしたサードパーティクッキー排除で、現実化しそうなメリットを3つピックアップします。
(1).ユーザーが情報監視のプレッシャーを受けずに済む
クッキーが動いていることで、監視を受けているようで不快に感じるユーザーもいるようですが、様式の変化でプレッシャーを取り除ける可能性があります。
サードパーティクッキーの排除により、多くのユーザーが監視を受けているという心配をなくし、気軽に見たい情報をチェックできるようになるでしょう。チャットアプリなどで長時間他人と会話しているときも、Googleなどからのプレッシャーを感じずに会話できそうです。
(2).情報セキュリティ強化に役立つ
Google Chromeでは、共用パソコンで個人情報が流出するリスクも指摘に挙がっていましたが、サード型クッキーの排除で流出のおそれを減らせるでしょう。
インターネットを使っていただけで個人情報が流出すれば、犯罪者が悪用するリスクも考えられます。しかしセキュリティ強化を受けた環境ならユーザーも安心して使えるでしょう。
以上から現行のサードパーティクッキーの廃止は、安全性を向上させる可能性を秘めています。
(3).サーバーが軽くなる
現在のサードパーティクッキーの廃止により、サーバーの機能が最適化を受ける可能性もあります。
クッキーシステムの稼働はサーバーを借りるため、サイトへのアクセスがスムーズでなくなる可能性がありました。しかしGoogleが今回のようにクッキーの様式を見直せば、ユーザーは現在より安全かつ快適なネット環境を楽しめるかもしれません。
5.サードパーティクッキー排除で注意すべきデメリット3つ?
サードパーティクッキー排除はユーザーにとって不便な場面が出たり、事業者にとってもマーケティング活動が難しくなったりする可能性があります。主なポイントを3つにまとめました。
(1).ログインキープができない可能性
サードパーティクッキーがないと、サイトによっては一度ログインをしても、再アクセス時にまたログインの要求を受けるかもしれません。IDやパスワードをいちいち入力しなければならないと不便を感じるユーザーもいます。
パソコンやスマートフォンの利用をストレスに感じる人が出る可能性は懸念材料でしょう。ログインキープができなければ、使い終わるまでサイトを離れないという注意が必要です。
(2).カートの中身も保存できない
ネットショッピングのカートにも影響を与えかねません。Amazonなどにアクセスしているときに、買おうかどうか迷っている商品をキープするためカートに入れたことはありませんか。
しかしクッキーがなければ、再びアクセスしたらカートが空っぽになっており、商品名を覚えていないと探し直す必要もあります。商品の購入はその場ですぐに決断するなどの対策がいるかもしれません。
以上のようにクッキーによるログインキープの機能がないと、サイトによっては不便な場面が出る可能性もあります。
(3).マーケティング活動が難しくなる
ネット広告を扱っていたり、オンラインで集客を目指したりしている事業者にとっては、クッキー排除でアクセス解析ができないという問題に直面するかもしれません。
自身のサイトやブログを訪れる人の傾向が分からず、的外れなブランディングを展開してしまうおそれもあります。広告自体が使いづらくなる可能性にも注意です。アクセス解析ができないため、訪問者に合った広告を出せるしくみが崩れ、リターゲティング広告もできないかもしれません。
Google Chromeがサードパーティクッキーを廃止することで、そもそも広告をサイトに埋め込めない事態にも注意が必要です。
6.現行クッキー廃止はGoogleの独占禁止法違反が原因?
Googleでは独占禁止法違反などで度重なる罰金を受けており、さらなるペナルティ対策として現行のサードパーティクッキー廃止を考えたという指摘も挙がります。Googleがこれまで情報収集などをめぐって起こしたトラブルを踏まえ、システム変更の背景を考えましょう。
(1).2018年に携帯電話会社にAndroidとのセット販売を強要
2018年にGoogleは、欧州連合競争法という独占禁止法に違反したとして、欧州委員会から約5700億円の罰金を受けています。
問題になったのは、Google Playストアのライセンス条件として、携帯端末メーカーにGoogle Chromeなどのインストールを強要したことです。加えてAndroidのベースだけを使った端末は販売禁止とするなど、Googleサービスのインストールなしでは携帯端末を売らせないようメーカーに告げた疑いがあります。
携帯端末からのアクセスをGoogleに流させることを強制していることから、欧州委員会がペナルティを決めました。
(2).2019年3月には競合企業の広告掲載に制限も
欧州委員会は2019年3月にもGoogleに約1900億円の罰金を課しています。このときはGoogleが市場における支配的地位の乱用として、サードパーティサイト運営者に、自社の競合企業が使う検索広告掲載を制限した疑いです。
前述のAndroidをめぐる騒動などをめぐり、欧州委員会はGoogleの不正取引を約10年にわたり調査を行っています。結果としてGoogleが受けた制裁金の合計が1兆円を超えていることまでニュースになりました。
(3).Googleは個人情報収集を公表している
Googleではサービスの利便性向上に役立てる目的として、ユーザーの情報収集を公表しています。対象はサイトのアクセスや検索、YouTubeなどの履歴、デバイス情報などです。しかし情報収集の過程でもGoogleは違反を起こし、罰金を受けています。
2019年9月にGoogleは、傘下企業のYouTubeが子どもの個人情報を、保護者の同意なしで取得していたとして、アメリカの連邦取引委員会から約180億円の罰金を受けています。
以上のような度重なるトラブルの改善策として、Googleはサードパーティクッキー廃止を決めたのでしょう。2020年1月の発表が、Googleの体質改善やユーザーの安全性向上につながることを願います。
7.まとめ
Google Chromeにおけるサードパーティクッキーの段階的廃止により、ネットにおける広告や集客のあり方が変わるかもしれません。ユーザーにとっては個人情報流出のリスクを抑え、セキュリティレベルの向上により安心感を持てるでしょう。
Googleは個人情報や広告、アクセスの扱いなどをめぐり、独占禁止法違反などの指摘を受け、多額の罰金を受けています。しかしクッキーのあり方を変えることは、企業体質改善やユーザーの安心感に役立つのではないでしょうか。