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コロナ関連の国や地方自治体の施策について解説します

2020年は新型コロナウィルスの年といって良いでしょう。コロナの影響により世界は一変してしまいました。日本経済も中小企業を中心に大きな悪影響を及ぼしています。今回はコロナ関連の国や地方自治体のマクロ政策(金融政策、会計、税務など)、ミクロ政策(助成金、補助金、融資など)について解説していきます。

※2020年5月16日現在に判明している政策が前提となります。

1. 金融政策について

2020年4月27日、日銀は新型コロナウィルスの影響で、追加の金融緩和を決定しました。従前は年80兆円を目途としてきた国債の買い入れ上限を撤廃して積極的に買う方針となります。金融緩和を実施することにより、マネーを潤滑に供給していく狙いです。結果として、日本の金融政策は、ますますマイナス金利が進むことになります。参考までに、アメリカやユーロ圏においても、今までにない大規模な金融緩和政策を進めており、世界的に緩和マネーが溢れている状況になってきています。

2. コロナによる税務への影響について

2020年4月30日に税務に関する下記の施策が法案成立となりました。影響が大きい2点について詳細を見ていきましょう。

  • 納税の猶予制度の特例
  • 欠損金の繰戻しによる還付の特例
  • 消費税の課税事業者選択届出書等の提出に係る特例
  • 文化芸術・スポーツイベントの中止等に係る所得税の寄附金控除の特例
  • 住宅ローン控除の適用要件の弾力化及び
  • 特別貸付けに係る契約書の印紙税の非課税

(財務省HP)https://www.mof.go.jp/tax_policy/keizaitaisaku.html

(1) 納税の猶予制度の特例

新型コロナウィルスの影響により、①1カ月以上収入が20%以上減少しており、②一時に納税を行うことが困難である場合、1年間国税の納付を猶予することができます。対象となる国税は2020年2月1日~2021年1月31日に納期限が到来する所得税、法人税、消費税等、ほぼすべての税目が対象となります。

(2) 欠損金の繰戻しによる還付の特例

青色欠損金の繰戻し還付制度は、従来、資本金が1億円超の法人は適用することはできませんでした。今回の改正で、2020年2月1日~2022年1月31日までに終了する事業年度において、資本金が10億円以下の法人についても、青色欠損金の繰戻し還付制度が適用できるようになりました。今期決算で、コロナの影響により多額の欠損金が生じた場合は、繰り戻し還付を受けられる可能性がありますので、自社の税務申告を確認すると良いでしょう。

3. コロナによる会計制度への影響について

会計制度への影響は、(1)会計基準への影響と(2)決算の期限に対する影響、に分類することができます。

(1)会計基準への影響

貸倒引当金、減損会計など、過度に悲観的な見積もりを避けるような調整がなされる予定です。厳格に会計ルールを適用して減損させるのではなく、柔軟な会計処理が容認される見込みになっています。コロナという一時的な影響により、多くの企業が多額の減損計上してしまうと、それだけ利益が下ブレし、配当金額や株価に大きな影響を及ぼします。つまり、会計ルールが、最終的に家計の経済状況にも影響してしまうのです。

なお、経済状況の激変により、緊急的に会計ルールが変更されるのは、今回が初めてではありません。リーマンショックの際も、時価評価を緩く運営することにより減損が見送られたということもありました。

(2) 決算の期限に対する影響

上場企業は事業年度終了後、原則として3カ月以内に有価証券報告書を作成しなければなりません。今回のコロナ影響により、中国子会社への監査が実施できないなどやむを得ない事情がある場合は、財務支局長の承認により提出期限を延長することが認められました。一括した期限の延長ではなく、あくまでも個別申請に基づくものとなります。

(金融庁HP)https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200210.html

税務申告においても、個別の申請により申告期限の延長が可能と発表されました。こちらもやみくもに延長を容認するのではなく、個別事情を鑑みた内容になっています。
(国税庁HP)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/pdf/faq.pdf

決算承認や配当金の決議がなされる定時株主総会に関して、事業年度終了後に3カ月以内に開催しなければなりません。今回のコロナ影響で、法務省から、開催することができない場合にやみくもに開催を要求する条文趣旨ではない旨の発表がなされました。
(法務省HP)http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00021.html

4. コロナ関連の助成金、助成金について

今回のコロナに影響を受けた個人、個人事業主、企業を支援するため、さまざまな助成金や補助金の制度が開始されました。主要な制度を簡単に紹介していきます。

(1) 特別定額給付金

2020年4月20日、基準日(2020年4月27日)において、住民基本台帳に記録されている者を対象に、一人当たり10万円を支給されることが閣議決定されました。給付金総額は、12兆7,344億14百万円が見込まれています。
(総務省HP)
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/gyoumukanri_sonota/covid-19/kyufukin.html

(2) 持続化給付金

新型コロナウィルスの影響により、ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している事業者が対象で、中小法人等は200万円、個人事業主は100万円を給付する制度です。前年同月比で売上減少していることを証明するために、前年に確定申告をしていることが要件となります。
(経済産業省HP)https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukin.pdf

(3) 感染拡大防止協力金

休業等の対象となる施設を運営しており、休業等に全面的に協力できる者に対して協力金を支給する制度です。支給金の金額は、都道府県によって異なっています。参考までに東京都は50万円(2事業所以上で休業等に取り組む事業者は100万円)です。
(東京都産業労働局HP)
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/attention/2020/0415_13288.html

(4) IT補助金の「特別枠」

コロナ影響により、事業者はテレワークの移行を求められていますが、テレワークの環境を整えるためにはお金が必要です。中小事業者を対象に、従前はIT補助金の補助率は投資額の1/2が上限でしたが、今回2/3まで上限を引き上げます。補助額は30万円~450万円の範囲となっています。
(経済産業省HP)https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/it-hojo.pdf

(5) 雇用調整助成金の特例拡充

中小企業であり、解雇等を行わず雇用を維持していること、労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っていることなどを条件に、休業手当助成金として1人1日8,330円の助成金を支給する制度です。現在、国会では雇用調整助成金の上限額を8,330円から特例的に15,000円に引き上げる案を議論しています。

(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

(6) その他給付金

その他の給付金として、「緊急販路開拓助成事業」、「マスク生産設備導入補助金」などが挙げられます。

緊急販路開拓助成事業とは、東京都を例に取った場合、中小事業者向けで150万円を限度としてB2B展示会への参加費を助成する制度です。新型コロナウィルス感染症の影響により、直近3か月の売上高が前年同期に比べ10%以上減少していることが条件になります。

(東京都産業労働局HP)
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/attention/2020/0415_13288.html

マスク生産設備導入補助金とは、文字通りマスク生産設備を導入する事業者に上限3,000万円、補助率3/4(中小事業者)、2/3(大企業)で補助する制度です。

(経済産業省HP)
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2019/pdf/yobihi_pr_0214.pdf

5. コロナ関連の融資について

コロナの影響により、個人、個人事業主、中小企業を中心に資金繰りが厳しくなっています。緊急的に円滑な融資を実現させるために、日本政策金融公庫や商工中金、社会福祉協議会を中心に特別融資の精度が開始されています。

(1) 新型コロナウィルス感染症特別貸付

最近1カ月の売上高が前年、または前々年同期と比べて5%減少している場合、新型コロナウィルス感染症特別貸付を利用することができます。貸付限度額は個人事業主6,000万円、中小企業3億円となっています。持続化給付金よりも適用条件が緩やかで、まとまったお金を借り入れることができるので、使いやすい制度となっています。

(日本政策投資銀行HP)https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_m.html

(2) 衛生環境激変特別貸付

生活衛生関係営業(旅館業・飲食業・喫茶店業など)をしている者が、最近1カ月の売上高が前年、または前々年同期と比べて5%減少している場合に、別枠として1,000万円の融資を受けられる制度です。生活衛生関係の事業者は、今回のコロナにより一番ダメージを受けている事業者であり、特にサポートが必要であることから特別にできた融資枠となっています。あくまでも別枠としての制度ですので、他の融資と組み合わせれば、1,000万円以上の融資を受けられることが可能です。

(日本政策投資銀行HP)https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/47_gekihen_2_m.html

(3) セーフティネット保証制度

中小事業者を対象に、災害などにより売上高が一時的に減少している事業者に、円滑に融資実行するための制度です。売上高の減少幅など細かく条件が分かれていますが、数億円規模の融資を受けることが可能です。セーフティネットという名前から分かるように、最後に頼るべき保証制度となっています。

(日本政策投資銀行HP)https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_4gou.htm

(4) 大企業向け融資

(1)~(3)の融資については主に中小事業者向けでしたが、中堅企業、大企業向けの融資制度も新設されました。危機対応業務と呼ばれる制度で、最近1カ月の売上高が前年、または前々年同期と比べて5%減少している場合に利用できます。融資限度額が定められていない点が特徴です。

(日本政策投資銀行HP)https://www.dbj.jp/service/finance/crisis/index.html

(5) 個人向け融資、その他

個人に対する融資制度もあります。総合支援資金(限度額:単身15万円/月、複数20万円/月)、緊急小口資金(限度額10万円)です。また、住居確保給付金6万4千円や電気・ガス・水道・携帯料金・学費・保険料・NHK受信料などの支払延期措置など、その他の支援策もあります。詳細は各都道府県の社会福祉協議会HPなどを確認するようにしてください。

(例:神奈川県社会福祉協議会HP)http://www.knsyk.jp/s/shiru/kashitsuke_kinkyu.html

6. まとめ

以上のように、コロナウィルスに関する金融政策、税務、会計への影響、助成金、補助金、融資制度などを紹介してきました。国や地方自治体はこの困難をどうにか乗り越えようとできる事は全て実行しようとしています。最新の情報は各省庁のHPや首相官邸のホームページを確認するようにしてください。

(首相官邸HP)http://www.kantei.go.jp/jp/pages/coronavirus_shien.html

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