M&Aと聞くと企業の「合併・買収」という風に捉える方は多いと思います。

 しかし近年、M&Aは、「事業承継」のためにも用いられています。

 事業承継にM&Aが使われるようになった大きな要因として、『経営承継円滑化法』という法律を挙げることが出来ます。

 経営承継円滑化法とは、平成20年に施行された法律で平成30年に大幅な改定がありました。今回は、M&Aに絡めた経営承継円滑化法について説明します。


1. 経営承継円滑化法とは

 M&Aに絡めた経営承継円滑化法について説明する前に、経営承継円滑法について説明をします。

 経営承継円滑化法は、正式名称を「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」といいます。要は、中小企業の事業承継をスムーズに行うことをサポートしている法律になります。


 なぜ経営承継円滑法が出来たかというと、昨今事業承継の現状に変化が起きているからです。

 昔は(昭和~平成前半)、中小企業の後継者といえば、経営者の子供であることが一般的でした。しかし近年は、少子化の影響や、家業を継ぎたくない子供も増えており、後継者不在が大きな問題になっています。

 また仮に後継者がいても経営者の子供ではなく、会社の社員に引き継がせるなど親族外の方に事業を承継するケースも多くなっています。

 仮に子供や社員などの後継者がいても事業を承継する際には、多額の費用が掛かります。この費用が払えずに廃業に追い込まれてしまう会社もあります。


 このように中小企業を巡る事業承継の現状は非常に厳しいものがあります。しかし、厳しい現状のまま放置してしまうと、長年培われた技術が途切れてしまったり、その会社に勤めていた従業員の雇用がなくなってしまうなど様々な問題が起こり得ます。このような問題を少しでも減らすために、経営承継円滑法は施行されました。


2. 経営承継円滑法の特徴

経営承継円滑法の主な特徴は3点あります。


1) 事業承継税制

 経営承継円滑法の特徴の1つ目は、事業承継税制です。

 事業承継税制とは主に、事業承継の際に発生する相続税や贈与税の負担を軽減してくれるものになります。


 事業承継を行う際、通常は、後継者への株式の移転が必要です。後継者への株式の移転の主な方法は、経営者からの譲渡・相続・贈与になります。 株式の譲渡に関しては相応の資金がないと難しいですし、贈与・相続に関しても贈与税・相続税の負担は非常も大きなものです。 


 事業承継税制は、このような時に非常に役に立つ制度になっています。事業承継税制は事業承継で株式を取得した際に発生する相続税・贈与税に100%の納税猶予を設けることで実質的に相続税・贈与税の負担をなくすことが出来ます。また後述しますが、M&Aを利用した場合においても優遇された税制を適用することが出来ます。


2) 民法の特例

 経営承継円滑法の特徴の2つ目は、民法の特例があることです。経営承継円滑法の特徴における民法の特例は、「生前に贈与した株式を遺留分から外すこと」です。

 遺留分とは、相続の際に、配偶者や子供などの法定相続人に最低限保証されている相続分のこといいます。もし遺留分という制度がなければ、配偶者や子供に一切の財産を遺さないことが可能になってしまいます。そうした場合、配偶者や子供が生活出来なくなってしまう可能性があります。このような事態を防ぐために、遺留分という制度が、民法の原則として存在します。


 しかし事業承継の場合、遺留分があることによってスムーズな承継を妨げてしまうことがあります。つまり、生前に贈与した株式を遺留分に含んでしまうと、相続の時に株式が後継者以外の法定相続人に分散してしまうリスクがあるのです。

 安定した経営を行うためには、一定数の株式は後継者に集中させておく必要があります。経営承継円滑法では、スムーズな事業承継のためこの遺留分に特例があります。その特例が、法定相続人の同意があれば、事業承継に係る贈与に関しては遺留分を減らすことが出来ることです。

 この民法の特例があることにより、スムーズな事業承継がしやすくなるのです。 


3) 金融支援

 経営承継円滑法の特徴の3つ目は、金融支援です。

 経営者が亡くなったことによって後継者に多額の金銭的な負担が来ることも珍しくありません。ここでいう多額の金銭的な負担とは、経営者が変わったことにより起こりうる、銀行の借り入れ条件の変更や取引先の値下げ要求などです。

 経営承継円滑化法における金融支援では後継者の支援を目的として、中小企業信用保険法や株式会社日本政策金融公庫法などの特例を活用することが出来ます。


3. M&Aにおける経営承継円滑法

 M&Aを行う際の経営承継円滑法のメリットは、事業承継のために再編・統合を行った際に係る登録免許税や不動産取得税が軽減されることです。

 M&Aの際にかかる登録免許税や不動産取得税の負担は、非常に大きなものです。これらの負担を軽減できるメリットは非常に大きいのです。

 登録免許税や不動産取得税の費用が足かせになりM&Aに踏み切れない事業者にとっては心強い制度になります。


4. まとめ

 今回は、M&Aと経営承継円滑化法の関係について説明をしました。

 事業承継と聞くとM&Aはあまり関係ないと思われる方もいるかもしれません。しかし。M&Aを行うことによって廃業を免れたり従業員の雇用を守れる可能性は大いにあります。

 経営承継円滑法によって登録免許税や不動産取得税が軽減されることになりますので今後事業承継にM&Aを利用するケースは増えていくと見られています。