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コロナ禍でなぜ「トヨタ」は無事で、山東如意(中国)が買収した「レナウン」は破綻したのか

新型コロナウイルスの感染拡大(以下、コロナ禍)は、多くの企業に甚大な被害をもたらしています。
世界的な経済事件と呼ばれた2008年のリーマン・ショックより深刻な事態が起きていると指摘する専門家も少なくありません(*1)。
しかし、どのような経済危機でも、倒れる企業がある一方で立ち直る企業があります。それはリーマン・ショックのときもそうでしたし、今回のコロナ禍でも同じです。

アパレル業界の名門、株式会社レナウン(本社・東京都江東区)は2020年5月、上場企業として初めて、コロナ禍によって破綻しました。
一方、日本最大の企業、トヨタ自動車株式会社(本社・愛知県豊田市)は、すでに立ち上がって前進し始めています。

この2社の様子を観察することで、コロナ被害がどれほど大きなもので、コロナ禍からどのように回復していけばよいのか考えてみます。

*1:https://president.jp/articles/-/36686

1 レナウン破綻、内輪もめしている場合ではなかった

東京地裁から民事再生手続きの開始決定を受けたレナウンの負債総額は約138億円で、上場は廃止され、再建を支援するスポンサー探しに入っています(*2、3、4)。

レナウンの破綻は、2つの意味で当然だったのかもしれません。

国内のアパレル業界はコロナ禍のはるか前から、一部企業を除き、斜陽産業とみられていました。レナウンはその厳しい業界の一員であるだけでなく、百貨店やショッピングモールに出店する昔ながらのリアル店舗重視型経営を続けていました。コロナ禍で3密(密集、密接、密閉)を避けなければならなくなり、百貨店もショッピングモールも休業に追いやられ、レナウンは売上を急減させました。
弱い業界で古い経営体質だった――これが1つ目の破綻理由です。

そして2つ目の破綻理由は、内輪もめです。

*2:https://www.renown.com/ir/release/2020/l2h587000000573c-att/pdf_ir200515.pdf
*3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59166740V10C20A5I00000/
*4:https://biz-journal.jp/2020/07/post_168103.html

(1) レナウンは名門だった

レナウンの内輪もめを確認する前に、レナウンの沿革を紹介します。
レナウンは1902年に大阪で創業した卸会社が起源になっています。「ダーバン」ブランドがヒットして、1990年代には世界のアパレル市場を牽引する存在でした。
レナウン自身「1902年創業のレナウンは、約1世紀にわたりアパレル業界のリーダーとしてビジネスを展開し、レナウン発展の歴史は、日本のファッション業界発展の歴史と重なるといっても過言ではない」と自負しています(*5)。

*5:https://www.renown.com/corporate/history/index.html

(2) 中国資本の注入が裏目に

レナウンは、ユニクロのような強い商品をつくることができず、ZOZOTOWNのようなネット通販(EC)を展開することもできず、中国資本を受け入れることになりました。
中国の「山東如意科技集団有限公司」(以下、山東如意)が2010年にレナウンの株式を41.52%取得して筆頭株主になり、その後53%まで増やしました(*5、6)。

山東如意は、中国で日本ブランドの人気が高いことから、レナウンの店を中国で1,000店舗開く計画を立てました。しかしその目論見は失敗し、2014年には早々に中国国内の店舗事業から撤退してしまいます。
そして「中国禍」は、レナウンをさらに苦しめることになります。

*6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56297700S0A300C2TJ1000/?n_cid=DSREA001

(3) レナウンは香港の子会社の犠牲になった?

レナウンは、山東如意が香港に持っている子会社に、綿や糸を卸していました。ところが香港子会社からの入金が滞るようになり、未回収となった売掛金は50億円以上に膨らみました。
レナウンと山東如意の契約では、香港子会社の支払いが滞ったら、山東如意が補填することになっていましたが、それが実行されず、レナウンは2019年12月期決算で67億円の赤字を計上しました(*7)。
コロナ禍は2019年末に中国で始まったとされているので、レナウンは最悪のタイミングで経営危機を迎えたことになります。

*7:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56297700S0A300C2TJ1000/?n_cid=DSREA001

(4) 内輪もめが社長と会長の同時電撃解任に発展

レナウンは2020年3月に定時株主総会を開き、そこで、続投が内定していたはずの社長と会長が解任されました。筆頭株主の山東如意が、社長と会長の取締役再任決議を否決したのです(*8)。
筆頭株主が社長と会長を替えることは珍しいことではなく、悪いことでもありません。しかし株主総会の場で、取締役再任決議を否決する形で解任することは異例であり「電撃」です。

レナウンの社員は日本経済新聞の取材に対し次のように語っています(*9)
「報道で自社の経営破綻を知った。頭が真っ白になったが、すぐにこの状況をつくった親会社への怒りがこみ上げてきた。親会社の意向に反対できない風潮が社内にはあった。原因はコロナじゃない」

*8:https://www.wwdjapan.com/articles/1063895
*9:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59275190Z10C20A5000000/

2 トヨタにはもう光明が差している

トヨタもコロナ禍によって大きな被害を受けています。しかし、トヨタの社長、豊田章男氏は2020年7月下旬にはもう「私自身が落ち着いている」と述べています(*10)。

*10:https://toyotatimes.jp/insidetoyota/086.html

(1) トヨタが受けた被害の大きさ

7月の段階ですでにトヨタに「光明」が差しているのは、コロナ禍がトヨタを避けて通ったからではありません。トヨタもしっかりとコロナ被害を受けています。
新聞の見出しは次のようにトヨタの窮状を伝えています。

●2020年4月23日付、日本経済新聞(*11)
トヨタ、5月の国内生産半減へ 部品会社の経営に影響

●2020年5月12日付、毎日新聞(*12)
トヨタ8割減益の衝撃 自動車業界に迫る「競争格差」 コロナ危機、打撃大きく

●2020年5月28日付、日本経済新聞(*13)
トヨタ、4月世界販売46%減 コロナ響き単月過去最低

このような惨状から数カ月しか経っていないのに、なぜ豊田氏は落ち着いていられるのでしょうか。
それは、休止していた工場をすぐに再開できたからです。

*11:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58379450S0A420C2I00000/
*12:https://mainichi.jp/articles/20200512/k00/00m/020/272000c
*13:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59683220Y0A520C2L91000/

(2) 驚異の復活が意味すること

トヨタは日本、北米、南米、欧州、アフリカ、アジアに生産拠点を持っています(*14)。
普通の経済危機であれば、日本が不振でも北米で回復できたり、日米で低迷しても中国で挽回できたりします。しかし新型コロナウイルスは全世界に蔓延したため、トヨタはすべてでコロナショックを受けることになりました。実に26の国と地域で生産休止に追い込まれました(*15)。
ところが7月上旬には、世界の全工場を再開させる目途が立ったのです(*15)。

この驚異の復活ぶりは単に「すごい」で終わらず、これから「もっとすごいこと」を起こすはずです。
なぜなら、コロナ禍による個人消費の低迷は、消費者の購買欲を高めていて、「リベンジ消費」という言葉が生まれたほどです(*16)。

通常の不況は消費者の消費マインドを低下させますが、コロナ禍の消費者は「コロナが終わったら買いたい」と思っています。
自動車についても、人々は感染が拡大しているうちは購入を控えていますが、感染拡大がひと段落したら買い替え需要が一気に拡大する可能性があります。
トヨタは全工場を再開していますので、今からたくさん自動車をつくってリベンジ消費に備えることができます。
コロナ禍に耐えられる体力は、ポストコロナ社会で飛躍の道を拓くでしょう。これこそまさに「ピンチをチャンスに変える取り組み」です。

トヨタの回復が早い理由については、次章の「考察」で分析していきます。

*14:https://global.toyota/jp/company/profile/facilities/manufacturing-worldwide/
*15:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61429050S0A710C2L91000/
*16:https://ferret-plus.com/15557

3 考察:準備の差

レナウンの破綻を「破綻すべくして破綻した」と考え、トヨタの回復ぶりを「世界のトヨタだから当たり前」と考えてしまうと、コロナ禍からの復活の道を見失ってしまうでしょう。
話はそれほど単純ではありません。

レナウンのコロナ破綻は、回避できたかもしれまぜん。なぜそういえるのかというと、レナウンに中国資本が注入されたからです。不振にあえぐ日本企業にとって、中国資本は重要な「潤い」になります。
日本経済新聞は、NECと東芝は、中国資本によって中国の巨大市場に打って出ることができ、それが再建につながったと分析しています(*17)。
つまりレナウンは、せっかくの「中国カード」をうまく生かせなかったのです。もちろん、NEC・東芝とレナウンでは、中国資本の入り方が異なっています。また、レナウンの場合は、むしろ中国の親会社(山東如意)の存在が、経営再建の障害になっていたかもしれません。
しかし、同じ日本のアパレル業界にあって、ユニクロやZOZOの経営が順調であることを考えると、レナウンの「危機に備えた戦略」が不十分であったことは明白です。

一方のトヨタは、コロナ禍の前から着々と強い現場づくりに励んでいました。その1つが「階層」の廃止です。
豊田氏は、社内に階層が増えるほど、社長をはじめとする経営陣は現場を見失うと考えています(*18)。製造業は文字通り製造するビジネスであり、その製造は現場にあります。経営陣が現場を見失えば、命取りになりかねません。

豊田氏が社長に就任した2009年には、トヨタには取締役・役員が79人もいましたが、2020年7月現在14人しかいません。
しかも2020年3月のコロナ禍真っただ中に、副社長制度も廃止してしまいました(*19)。
豊田氏の狙いは明確で、階層を減らしたのは、経営陣や管理職などの役職を持っている人たちに「肩書き」ではなく「役割」で仕事をしてもらいたいからです

トヨタがコロナ禍に耐えられたのは、コロナ禍に備えていたからです。
もちろん、トヨタや豊田氏がコロナ禍を予測していたわけではありません。しかし、リーマン・ショックと東日本大震災という、過去のコロナ禍クラスの危機のなかで、トヨタの現場の人たちは、上の人が何も言わなくても動くように変化しました(*20)。それは危機は必ずまた訪れると考えていたからです。
豊田氏は「一緒に『どうしようか』と考える仲間が社内に増えてきた」と実感しています。

レナウンとトヨタの差は、準備の差といえます。

*17:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56297700S0A300C2TJ1000/?n_cid=DSREA001
*18:https://toyotatimes.jp/insidetoyota/087.html
*19:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56331110T00C20A3TJ2000/
*20:https://toyotatimes.jp/insidetoyota/086.html

4 まとめ~全社一丸になること

企業にとって、コロナ禍級の危機に必要な準備とは、難局を経営陣・従業員が一丸となって立ち向かう体制づくりです。
レナウンは、コロナ禍のなかで「上」から崩壊していきました。
しかしトヨタは、コロナ禍のなかで従業員が黙々とすべきことを行い、「上」は従業員が働きやすい環境を整えていきました。
危機に最も強い防御は全社一丸であり、危機から立ち直るために必要なことも全社一丸です。

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