M&A

【解説】M&Aに必須のノンネームシートとネームクリアについて

M&Aの目的は、会社の存続や利益の拡大です。そのために、M&Aは慎重に行わなければいけません。

M&Aが失敗しないようにするためには、機密情報を守る必要があります。情報を守りながらM&Aを実施するために「ネームクリア」制度があります。
今回は、ネームクリア制度と、そのために必要なノンネームシートについて解説します。

1. ノンネームシートとは

ノンネームシートとは、秘密保持契約が締結される前に作成される書面です。会社が特定されるような具体的な情報は記載せず、事業内容や地域、売上規模などの概要をまとめた書面になります。

A 4サイズの紙1枚に必要最小限の企業情報を記しています。「一次情報」や「一枚もの」とも呼ばれるノンネームシートですが、M&Aにとっては重要な書類となります。

M&Aは、最低でも買い手と売り手の2者がいないと成立しません。しかし、信頼できる取引先をすぐに見つけられるとは限らず、M&Aの候補先を探すのは困難です。

M&Aを検討している会社がM&A仲介会社に希望条件などを伝えると、仲介会社は候補先の企業を何社か選び、会社を特定できる企業名などは掲載せずに、匿名でリストアップしてくれます。この情報が、ノンネームシートです。
M&Aが決定するまでは、企業名を明かさないのが基本です。企業名を明かすと、外部に情報漏洩してしまうリスクがあるからです。

一方、会社が特定できない状態では、候補先を一社に絞れません。ですから、買い手企業がノンネームシートに関心を示すと、具体的なM&A検討段階に進み、秘密保持契約を結んでから、企業名やさらなる詳細情報が開示されるのです。

▼参考記事:秘密保持契約(M&A用語集)

2. ノンネームシートの作成手順

売り手企業としては、自社の情報を詳細に載せたいところですが、M&Aが実施されない場合、自社の情報を他社に教えるだけの結果となってしまいます。そのため、ノンネームシートでは抽象的な情報しか記載しません。

ノンネームシートの一般的な記載内容としては、以下のようになります。

(1) 企業概要

→事業内容と、営業拠点、従業員数や売却理由(後継者不足、自社を成長させる)などを大まかに記載します。

(2) 売却希望条件

→株式譲渡、事業譲渡などの区分(M&Aスキーム)や売却希望価格など

(3) 財務状況

→直近3~5年分の売上や経常利益

ノンネームシート作成にあたっては、詳細な企業情報が漏れないように、細心の注意が必要です。

主な注意点は、以下の3点です。

(1) 機密情報が漏洩しないようにする

機密情報が漏洩すると、会社の信用力が下がってしまいます。 また、 M & A に関する情報がリークされることによって対外的な信用を失い、通常通りに業務をこなせなくなります。

(2) 個人情報の流出

企業には、個人情報(顧客情報・従業員情報)があります。とくに顧客の登録情報が漏れると、訴訟や賠償といった問題に発展する恐れもあります。
ブランドイメージが著しく低下するので、ノンネームシートは十分に注意して作成し、慎重に取り扱う必要があるのです。

(3) 情報の改ざん

情報が漏洩した場合、ホームページなどの開示情報が無断で改ざんされる危険性があります。ブランドイメージが低下し、 業績に悪影響が出る恐れがあります。

3. ネームクリアとは

ネームクリアとは、秘密保持契約を締結した後、相手企業に社名などの情報を開示することです。

秘密保持契約が締結されてから、相手の企業名等を公開し、M & Aが本格的に開始されます。
ただし、ネームクリアが実施されても、M & Aを必ず実行しなければいけないわけではありません。

4. M&Aのネームクリアの流れ

(1) ノンネームシートによる買い手側の検討

買い手側は、 M&Aの取引先候補の選定を、ノンネームシートを利用して実施します。ノンネームシートでは、企業の名前や所在地の詳細は書かれていませんが、大まかな会社の規模や事業内容、希望売却価格などが記載されています。

(2) ネームクリアの確認

基本的に、 M&Aは仲介会社を介して実施されます。 M & A の仲介会社は、買収を検討する企業が現れた場合、必要な情報を公開していいかを売却側に確認します。これがネームクリアの確認です。

(3) ネームクリアでM&Aの打診

買い手側が買収候補先を決定したら、M&Aを開始するためにネームクリアを実施します。
その後、経営者同士が面談を行い、ノンネームシートだけでは把握できない部分も話し合います。面談で企業同士が納得すれば、通常の M & A の手続きが始まります。

▼参考記事:ネームクリア(M&A用語集)

5. まとめ

ネームクリアとは秘密保持契約を締結したあとに、相手会社に社名などを開示する行為です。

ネームクリアの前は、おおまかな企業概要がかかれたノンネームシートで買い手側はM&Aの取引先を検討します。
売り手側にとって、本格的なM&Aを実施するまで、周囲に売却を検討していることが漏れないというメリットがあるからです。

M&Aの情報が事前に漏れると、取引先が商品やサービスの斡旋を中止したり、従業員が転職活動したりする恐れがあります。 ネームクリア制度を利用すれば、そのようなリスクを回避できます。

ネームクリア制度を使用するかどうかは、各企業の自由です。しかし、会社自体を守るためにネームクリアを利用するのがベターといえるでしょう。

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