CASE 04

株式会社ファンメディア +
Bilibili Inc.

中国のZ世代(1990年代後半から2000年までに生まれた若者たち)がよく利用するカルチャーコミュニティ「ビリビリ」。Bilibili Inc.が運営する同カルチャーコミュニティでは日夜さまざまなコンテンツが投稿・配信されているが、なかでも強いのが日本のアニメ作品だ。自社でもアニメを制作している同社は、2018年7月、日本のアニメ制作会社である株式会社ファンメディアに出資した。中国のプラットフォーマーと日本のコンテンツメーカーのタッグで、何が生まれるのか。Bilibili Inc.VPのチャン・ミン・シャン氏(インタビュー当時は日本法人代表兼務)に出資の意図と今後の展開をうかがった。

PROFILE

株式会社パラダイムシフト
代表取締役 牟禮 知仁

株式会社ビリビリ
日本法人代表取締役社長(インタビュー当時)
チャン・ミン・シャン

01

コンテンツ制作もできる
強いプラットフォーマーへ

牟禮
M&Aの相談を最初に受けたのは2017年でした。
ミン
ビリビリの日本支社は、中国の本社と日本の取引先がコミュニケーションするときの窓口として2014年に設立されました。具体的には日本で作られたアニメの配信権利を購入し、ビリビリのプラットフォームで配信しています。ただ、購入だけというのは、あまり健全な経営戦略ではない。コンテンツ制作にも関わりたくて、牟禮さんに連絡しました。
牟禮
それまでは完成品を購入していたので、コンテンツの中身に関わることができなかったんですよね。中国だとこういうキャラがいいとか、逆に日本だとここがウケるというように、ユーザーの好みは市場によって違います。ビリビリさんは基本的に日本と中国で同時配信しているので、制作の段階から関与できれば、どちらでも人気な作品を配信することができる。
ミン
かつてテレビ局が強かったのは、プラットフォーマーでありながら、コンテンツ制作の機能を自社で持っていたからです。私たちはインターネットのプラットフォーマーですが、自分たちでコンテンツをつくる機能は弱かった。そこを補うため、アニメ制作会社のグループ化を検討することになったのです。

02

金融系とは話が合わない!?
コンテンツに強い仲介会社に相談

牟禮
じつはミンさんとは、知人の紹介で8年前に上海でお会いしているんですよね。そのときはもちろんM&Aの話なんて一切出ていなかった。今回、買収を検討するにあたって、どうして私たちに声をかけてくれたのですか。
ミン
パラダイムシフトさんに相談する前に、自社の投資部門でもリサーチをしたり、金融系のM&A仲介会社にも依頼をしていたんです。でも、金融系は雰囲気が違うというか、なかなか話が合わないところがあって。アニメ制作会社を買収するなら、やはりコンテンツ業界に強い仲介会社がいい。そう考えているときに社員から紹介されたのが御社でした。社長が牟禮さんだとわかって、それなら話が合うなと安心しました。
牟禮
パラダイムシフトは中国にも拠点があって、中国出身の社員もいるし、メンバーの弁護士は中国語を話せます。ミンさんは日本語がペラペラなので直接関係ないかもしれませんが、そこも安心感につながったのかもしれません。

03

特殊なアニメーション制作業界で、
黒字企業をリストアップ

ミン
最初にリストアップしてもらったのは70社ほどでした。
牟禮
ビリビリさんは当初、出版社のグループ化も戦略の1つとして検討されていました。出版社なら原作から関わることができるからです。ただ、いきなり上流から関わるのはリスクが高い。まずはベースのところからやったほうがいいとお話しして、アニメ制作会社に絞った経緯があります。
ミン
驚いたのは、リストにあった会社が黒字ばかりだったこと。自社の投資部門でリサーチしたときは、赤字の会社ばかりでしたから……。
牟禮
アニメ制作会社は先に制作費が入ってくるので、赤字でも自転車操業でやっていけるんです。でも、もともと綱渡りなので、ちょっとした躓きが倒産につながるリスクがある。業界に関わらず「黒字はいいこと」ですが、アニメ業界はとくに要注意ですね。
その点、今回、セルサイドになったファンメディアは、借入がなく財務状況が良好でした。オーナーも、クリエイターでありながらきちんとした経営感覚をお持ちの方で、自信を持ってリストに挙げたことを覚えています。

04

中国企業のスピードは速すぎる!?
相手に合わせたペースで商談を

ミン
パラダイムシフトさんにお願いして良かったと思うのは、日本のやり方をきちんと教えてくれたことです。ビリビリは勢いのある中国企業ですが、それゆえにやり方を間違えると、札束で企業を買い漁るようなイメージを持たれかねません。今回、牟禮さんに事前にアドバイスを受けていて、まずは私たちの目的や戦略をお話ししました。おかげで話はスムーズに進みました。
牟禮
もう一つ、急速に話を進めすぎないことも重要でした。いつもビリビリさんは数回のコミュニケーションで結論に至るそうですが、日本企業が相手だと、そのスピード感は速すぎます。とくにファンメディアさんは黒字企業で、急いで結論を出す必要はまったくない。毎回、「今日はここまで」と小さなゴールを決めて、それ以上は進まないようにミンさんにお願いしました。
ミン
そのあたりの商習慣の違いも勉強になりました。リストアップから最終的な合意まで1年強かかりましたが、慌てていたら、まとまる話もまとまらなかったのではないでしょうか。

05

日中お互いの市場情報を共有
海を越えたシナジーを実感

牟禮
契約が成立したのは2018年の7月です。1年強経ちましたが、シナジーはどうですか?
ミン
まず情報共有できたことが大きいですね。日本のアニメ業界は各社の関係が複雑で、しかも噂が多いんですよ。以前はそれに翻弄されることもありましたが、いまは情報を確認しやすくなりました。
一方、私たちはファンメディアに中国市場のデータを提供しています。何がどれくらい見られているかという情報を外に出さないプラットフォーマーもいますが、私たちはオープン。ファンメディア以外の作品についても情報提供しているので、きっと作品作りの参考になっているはずです。
牟禮
今後の展開はどうでしょう。
ミン
出資して改めてわかったことですが、ファンメディアはスタッフのエナジーが非常に強いんです。ポテンシャルはとても高いので、彼らが国際舞台に行ったり、大きなタイトルに参加する機会をサポートしていきます。それが私たちにとってもプラスになるでしょう。

CONCLUSION

買収後のパフォーマンスは抜群!

ビリビリは、今回のファンメディア以外にも、ジョイントベンチャーを含めて数件の出資を日本で行っている。いずれもアニメやゲームといったエンタメ系だが、「その中ではファンメディアのパフォーマンスがダントツに良い」とミン氏。ファンメディアのクリエイターは、中国のイベントに参加してユーザーの生の声を聞き、作品に活かしている。双方にとって実りの大きいM&Aになったようだ。

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