CASE 01

株式会社メガチップス +
株式会社豆蔵ホールディングス

1990年の創業以来、ファブレス半導体メーカーのパイオニアとして、顧客の課題に応えるシステムLSIを開発してきた株式会社メガチップス。独自のデジタル/アナログ技術に強みがあるが、近年は海外勢も存在感を示して競争が激化している。海外勢と伍して戦っていくには、“選択と集中”戦略を推し進めて、成長分野への投資を加速させることが欠かせなかった。そこで同社は、総勢30人のシステム事業部門の譲渡を検討。パラダイムシフトのサポートを受けて、2018年11月に豆蔵ホールディングスの子会社、センスシングスジャパン株式会社への譲渡を決めた。メガチップス側の条件は、設計者だけでなくシステム事業部全員を引き受けてもらうこと。理想の譲渡先を見つけたプロセスについて話をうかがった。

PROFILE

株式会社パラダイムシフト
代表取締役 牟禮 知仁

株式会社メガチップス
取締役 林 能昌

01

LSI事業の未来を見据えて
“選択と集中”を進めた

牟禮
今回、譲渡されたのはシステム事業部でした。どのような事業だったのか、ご教示ください。
私たちは創業以来、LSI事業を本業としています。LSIは部品ですが、機能・性能などが優れたLSIを企画・開発しようとすれば、そのLSIが搭載されたテレビやカメラなどの完成品の仕様や性能を理解し、どのようなLSIが望まれるかを知らないといけません。そうした考えのもと、完成品であるシステム製品も並行して開発してきました。ピーク時は複数のシステム製品を開発して、弊社売上の2割弱を占める事業でした。譲渡前は、セキュリティー・モニタリング用途向け映像監視システムの開発・生産などを手がけていました。
牟禮
どうして譲渡を検討されたのでしょうか。
先々を考えて、LSI事業への投資を厚くすることを決めたからです。将来、LSIは自動車、産業機器、通信系などの市場で伸びが期待されています。ただ、これらの分野では海外メーカーが圧倒的に強い。例えば、自動車メーカーはリスク回避のために複数購買する傾向がありますが、いまは海外メーカー中心。「調達先に国産があれば安心できる。頑張って」と言われていて、私たちとしてもしっかり投資をしていかなくてはいけません。
LSI事業への投資を進めるとなると、どうしてもシステム事業への投資は薄くならざるを得ません。システム事業は利益を生み出していましたが、お客様へ継続的に良いサービスを提供することや、事業部メンバーのモチベーションを考えると配置転換させ新たな仕事をさせるよりも現在の仕事を継続させる方がよいと考え、システム事業に対して継続的に投資してくれる会社に事業を譲渡したほうがいい。そう考えて売却を検討し始めました。

02

ビジネスライクではない
仲介会社を探していた

牟禮
最初にご相談いただいたのは2017年の11月でした。
メガチップスは、買い手としてこれまで3社を買収してきました。そうした実績があるため、銀行や証券会社、仲介会社からM&Aの打診をいただくことが少なくありません。ただ、彼らは良くも悪くもビジネスライクで、規模が小さい事業の譲渡には関心が低い。仲介を頼むなら、親身になってサポートしてくれるところがいい。そう考えていたところ、ある証券会社が「パラダイムシフトがいいですよ」と紹介してくださった。
牟禮
声をかけてもらったとき、じつは飛びあがるほどうれしかったんです。私のキャリアのスタートは、あるベンチャーキャピタルです。新卒で入社したとき、投資先の成功事例として研修で学んだのが、メガチップス様のケースでした。お話をいただいて、ご縁を感じました。
何度かお会いして、信頼できる社長、会社だと思いました。事業譲渡はデリケートな話なので、最初はパラダイムシフトさんに顧客情報も明かせなかったんですよね。でも、牟禮さんのキャリアやお人柄を知るにつれて、この人なら任せても大丈夫だなと。

03

意外な買い手候補も
含めてリストアップ

牟禮
最初にリストアップした買い手候補は100社以上。そこからメガチップス様の条件に合わせて30~40社に絞り込みました。
意外な会社が多かったですね。私たちはハードの会社です。パラダイムシフトさんのリストにはソフトやサービスの会社もあって、「こんな会社がホントに買ってくれるのかな」と驚いたことを覚えています。
牟禮
監視カメラシステム事業だと、通常はセキュリティー会社や競合メーカーが買い手候補としてあがります。しかし、今回それらは対象外。システムをやっている会社、組み込みをやっている会社、ものづくりの会社など、さまざまな軸でリストアップしました。譲渡先の豆蔵ホールディングス様は、もともと組込事業からスタートした会社でした。一般的なリストではあがってこなかったかもしれません。
こだわったのは、システム事業部を全て譲渡することでした。私たちはファブレスなので、システム事業部も開発の社員が中心です。しかし、外部工場での量産品立ち上げや品質保証を担う社員もいます。「開発の人員だけが欲しい」という会社もありましたが、量産品立ち上げや品質保証なしではお客様に良いサービスをお届けすることができず迷惑をかけてしまう。豆蔵ホールディングスさんはシステム事業部全て、事業部メンバー全員を欲しいと言ってくれたのが大きかったですね。

04

譲渡価格は高すぎても
低すぎてもいけない!

牟禮
最初にお話をいただいたのは2018年3月で、デューデリジェンスは8月でした。メガチップス様は上場会社ですから、ほぼすんなりいきました。唯一議論になったのは、特許のことくらいでしたね。
LSIとシステムでは事業構造が異なり、システム事業は他社の技術もライセンス契約で使っていました。豆蔵ホールディングスさんは、事業譲渡後にそのライセンスが使えなくなるリスクを心配していらした。その不安は当然です。ライセンス元から事業譲渡後の契約継続の了解を取り付け、豆蔵ホールディングスさんにも納得いただきました。
牟禮
あと大変だったのは譲渡価格でしょうか。売り手としては当然、高く売りたいところですが、価格が高くなりすぎると、買い手が回収を急いてリストラをしたり値下げをするおそれもあります。メガチップス様は「事業部全員を引き受けてもらう」「顧客に迷惑をかけない」といった条件を重視していたので、買い手が慌てずに回収できる金額で交渉をまとめる必要がありました。
ただ、価格が低いと、移籍する社員たちは「自分たちの価値はそんなに低いのか」とモチベーションを落としてしまうリスクもあります。価格は本当に難しい。牟禮さんにはこちらとして譲れないところも汲んでいただきつつ、いい落としどころを見つけてもらったと思います。

05

会社の“本気”が伝わって
社員の意識が変わった!

牟禮
譲渡の発表は11月でした。約1年経って、現在(2019年10月)の状況はいかがでしょうか。
譲渡の目的だったLSI事業への投資は順調です。とくにいま力を入れているのは車載や産業分野です。自動車は、企画してから市場に出るまで5年以上かかります。LSIも先を見据えた投資が必要。カスタム品だけでなく自社ブランドを展開することも視野に入れて、体制を整えています。
牟禮
社員のみなさんの反応はどうですか。
これまでも経営層は「これからはLSI事業」とメッセージを出してきました。ただ、言葉だけでは伝わらないところもあります。今回、選択と集中を進めたことで、会社が本気で取り組んでいることが伝わり、現場にもいい影響が出ています。その意味でも、今回の譲渡は成功でした。
牟禮
いい結果につながって私たちもうれしいです。パラダイムシフトはITに特化してM&Aのお手伝いをしており、今回のようなものづくりの事業譲渡はレアケースです。私が最初に就職した会社でメガチップス様への投資事例を教わったように、今後、弊社の研修でも今回の事例を新人に伝えていきたいと思います。ありがとうございました。

CONCLUSION

ステークホルダー全員がハッピーになるM&A

今回、メガチップスが重視したのは、自社や譲渡先企業だけでなく、譲渡事業の顧客、協力企業、社員など関係者全員にとってプラスになる譲渡にすること。システム事業は譲渡後も継続されて、「私たちができなかった投資を豆蔵ホールディングスさんがしてくれて、移籍した社員たちもモチベーションを高めていると聞いています」(林様)。リソースを集中させたLSI事業と、譲渡して新しいチャンスを得たシステム事業。どちらも今後の成長が楽しみだ。

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