M&A

【解説】ビジネスDDについて

1. ビジネスDD(デューデリジェンス)とは

ビジネスDD(デューデリジェンス)とは、M&Aにおいて買収対象企業の製造や営業などのビジネスモデルを理解してその強みや弱みを明らかにするとともに、将来の事業性の評価やシナジー効果の大小、事業統合に関するリスク評価を行うことです。

対象企業の選定においては、買収後の事業戦略の仮説が構築されており、その仮説を検証するために重要なポイントをビジネスデューデリジェンスにおいて確認します。

通常は買い手の事業部分を中心に実施され、必要な情報については一部財務デューデリジェンスや法務デューデリジェンスなどの調査結果を利用します。
ビジネスデューデリジェンスは買い手企業自身が行うことが多いものの、客観的視点から事業者を評価する目的で、外部の経営コンサルティングや会計事務所に依頼することもあります。

2. 買収対象企業へのアプローチの流れ

M&Aにおける対象企業へのアプローチは以下の通りです。

1.デューデリジェンス(買収対象企業の事業内容、経営実態、経営環境を詳細に調査)
2.バリエーション(企業価値の評価)
3.契約締結

3. デューデリジェンスとは

デューデリジェンスとは、Due(当然おこなうべき)・Diligence(努力)という意味で、買収対象企業の事業内容や経営実態、経営環境を詳細に調査・検討することです。 M&Aにおける重要なプロセスのひとつになります。

M&Aを成功に導くためには、次の事項について適切に対処することが重要です。

  • グループ戦略の中での M&A の位置づけと明確化
  • 投資先の精査を通じた価値・価格分析の実施
  • M&Aを行った後の事業計画とそれを実現するための統合プランの策定

グループ戦略の中でのM&Aの目的を確認し、グループとしての企業価値向上のプロセスをシナリオとして事業計画に落とし込みます。そして、計画の実行可能性について詳細な検証を行いながらシナリオの精度を高めていきます。

そのための投資先の精査がデューデリジェンスなのです。
デューデリジェンスは目的によって、次の6つに分類できます(カッコ内はDD専門家)。

(1) ビジネスデューデリジェンス(経営コンサルティングファーム)

買収対象企業のビジネスモデルを把握します。ビジネスデューデリジェンスによって、市場全体における対象企業のポジションやポテンシャルを確認することができます。

(2) 財務デューデリジェンス(会計事務所)

財務デューデリジェンスとは、対象企業の財政状態や損益・資金の状況を詳細に把握することです。

  • 債務や負債が適正範囲内か
  • 債務や負債が適正範囲内か
  • 不正な経理処理の存在があるか
  • グループ会社やオーナーに関連する取引内容はどのようなものがあるか

などを調査。財務デューデリジェンスはM&Aに極めて重要な影響を及ぼします。

買収後の事業に影響を与えるような統合上の課題は、将来の資金流出や作業コストの発生につながる可能性があります。そのため、財務的な視点からできるだけ軽量化してリスクを把握することも、財務デューデリジェンスの目的の一つです。

(3) 法務デューデリジェンス(法律事務所)

法務デューデリジェンスとは、M&A取引に際し、買い手が対象会社や対象事業について取引に影響を与える法的な問題点の有無を調査することです。また、締結した契約や取引行為が、法的かつ適正に遵守されているかどうかも調査します。

(4) 人事デューデリジェンス(人事コンサルティングファーム)

人事デューデリジェンスとは、人事や労務に関する調査のことです。M&Aは対象企業の人材を獲得することでもあるので、その価値を図るためには財務デューデリジェンス同様に人事デューデリジェンスを行うことが必要です。

財務デューデリジェンスは数値や金額によって査定されるので、予想が大きく外れることはあまりありません。しかし、人事デューデリジェンスでは調査を誤ると思わぬリスクを抱える可能性があります。

異なる企業文化の統合による摩擦、給与・諸手当・福利厚生や評価システムの変化によるモチベーション低下などにより、有能な人材の流出などが発生するリスクがあるからです。

(5) 税務デューデリジェンス(会計事務所)

税務デューデリジェンスとは、買収対象企業および取引に関する税務上のリスクを認識し、その程度を把握するために調査を行うことです。法人税や法人事業税・消費税などがきちんと申告・納税されているかどうかを調査します。

(6) ITデューデリジェンス(ITコンサルティングファーム)

ITデューデリジェンスとは、M&Aにおける管理システムをどのように統合していくかを調査することです。対象企業が利用している情報システムを把握し、現在のシステムを維持するための費用や今後の設備投資を把握する必要があります。

ITデューデリジェンスは、業務とシステム両方の知識が必要です。経験豊富なITコンサルタントに依頼することにより、業務フローの改善をシステムに落とし込むことが可能です。

4. ビジネスデューデリジェンスの項目

ビジネスデューデリジェンスは、企業内部だけでなく、外部要因である市場全体も査定対象となるのが特徴。具体的な内容として、以下のような項目が挙げられます。

(1) マクロ環境分析

ビジネスデューデリジェンスにおいて、マクロ環境の分析をするのに利用できるフレームワークとして、次4つの頭文字をとったPEST分析があります。

1.Politics(政治的要因)

ビジネスを規制する法律や条例の改正、政府や関連団体など政治的な環境要因のことです。

2.Economics(経済的要因)

景気動向や、それによって変化する経済水準・所得変化・為替・金利などです。

3.Social(社会的要因)

少子高齢化などの人口動態、流行、習慣などを指します。

4.Technology(技術的要因)

新技術の誕生や普及など、今後のビジネスに影響を与える技術動向です。

(2) 競合構造分析

その市場における競合他社や代替品の状況を分析します。市場が低成長だったり、製品の差別化が難しかったりする場合、競争環境が激化する恐れがあるからです。

(3) 事業構造分析

競争力の源泉となっている自社の事業構成や商品構成を分析することです。

(4) スタンドアローン分析

スタンドアローンとは、買収対象企業が親会社やグループ企業から離脱したことにより、売上高の減少や取引先などの喪失をいいます。親会社などに依存している機能を把握し、M&A後の追加コストなどを分析する必要があります。

(5) 統合イシュー分析

想定される相乗効果(シナジー)についての仮説の検証や、具体的なオペレーション上の課題を検証します。

5. ビジネスデューデリジェンスの流れ

主に次のような流れで進むこととなります。

1.ビジネスデューデリジェンスの計画を策定
2.買収対象企業の内部環境の把握(収益構造や事業構造など)
3.買収対象企業を取り巻く外部環境の把握
4.それぞれの分析結果とシナジー効果を算出

新たな事業領域への進出の場合は、事業構造はもちろんのこと、細かいオペレーション(手順)まで確認し、統合後のシナジー効果を詳細に確認する必要があります。

一方、買収対象企業が同業他社で規模も小さい場合は、財務・法務デューデリジェンスの結果を見たうえで、マネジメントインタビュー(経営者への聞き取り)を実施するのみという場合もあります。

ビジネスデューデリジェンスによって、今後のビジネスチャンスやシナジー効果などを把握し、自社の戦略との整合性などを総合的に判断することが大切です。

専門家を利用せずに、自社でビジネスデューデリジェンスを行うことも可能ですが、意思決定を効率的に行うために、コンサルティングファームなど、M&Aに豊富な知見を持つ外部の専門家を活用した方がいいでしょう。

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