近年、M&Aは事業承継の手段として使われることが多くなっています。後継者のいない中小企業にとってM&Aによって事業承継が出来ることは大きなメリットになります。しかしM&Aのメリットは、事業承継をはじめとする売り手側だけにあるのものではありません。M&Aには、買い手側にもたくさんのメリットがあります。今回は、M&Aの買い手側のメリットについて詳しく説明していきます。


▼M&Aの売却側のメリットについては、こちらの記事をご覧ください

「お金だけではない、M&Aによる売却のメリット」


1. M&Aによる買収のメリット

 M&Aにおける買収の主なメリットは、ずばり、シナジー効果です。極論をいえば、シナジー効果を生むために企業はM&Aを行うのです。

 その他、M&Aにおける買収側のメリットは、優秀な人材を獲得できるメリットもあります。シナジー効果という単語自体は、非常に有名ですが、その具体的な中身については曖昧であることが少なくありません。

 シナジー効果とは日本語に直すと、「相乗効果」といった意味であり、単なる会社同士の利益の合算(1+1=2)ではなく、買収をすることによって大きな付加価値を生むこと(1+1=2以上)の効果を生むことを意味し、M&Aにおける買収の大きなメリットとなります。その内容としては例えば、人材の獲得や技術向上による既存事業の強化、事業成長に必要な時間を短縮することによる新規事業への参入、規模の経済による費用の効率化、節税対策など様々です。

 このようなシナジー効果は、同じ業種や業務をしている会社を買収する場合にも生まれますが、他業者や異なる業務をしている会社を買収しても生まれる場合があります。シナジー効果によって、単なる会社同士の利益の合算の何倍もの付加価値が生まれる可能性があることにM&Aの醍醐味があります。



2. アナジー効果

 シナジー効果の逆の言葉は、アナジー効果といいます。

 アナジー効果は、日本語にすると、「相乗マイナス効果」といいます。

 アナジー効果は、シナジー効果を期待して買収をしたのに、期待していた結果を得られないことをいいます。アナジー効果が生じてしまうと、買い手の企業・売り手の企業の双方に悪影響が及びます。このようなアナジー効果を避け、シナジー効果をしっかり生むために、M&Aを行う際は、しっかりと売り手の企業の状況をデューデリジェンスすることが重要になります。



3. シナジー効果の種類

 M&Aにおける最大のメリットであるシナジー効果の種類については、バリューチェーンによる分類、コストシナジーと売上シナジーによる分類など様々な分類方法がありますが、ここでは一般的に用いられる事業シナジー効果と財務シナジー効果に分類する方法で整理いたします。


(1) 事業シナジー効果

 事業シナジー効果とは、事業に関するシナジー効果のことをいいます。

 事業シナジー効果は、主に、事業規模の拡大、弱点の補強、事業の多角化、成長のスピードを速めることを上げることが出来ます。


ア. 事業規模の拡大

 事業シナジー効果の1つ目は、事業規模の拡大です。

 M&Aを実施することにより事業規模の拡大を見込むことが出来ます。現在日本国内の市場は、少子高齢化、労働力人口の減少により市場全体のパイは縮小傾向にあります。この状況は残念ながら今後も続くと見られています。このような市場環境の中で、M&Aを行なって事業規模を拡大することは非常に意味のあることです。パイが増えないのなら今あるパイを獲っていくという考え方です。M&Aによって事業規模を拡大出来れば今あるパイを獲っていくことが出来ます。

 また事業規模を拡大することは、スケールメリットにもつながります。例えば流通業などの場合、一括して仕入れをしたほうがコストの削減になり価格競争に勝つことが出来ます。このように事業規模の拡大はM&Aにおける買収の大きなメリットになるのです。


イ. 弱点の補強

 事業シナジー効果の2つ目は、弱点の補強です。

 M&Aによる買収を行うことによって買い手企業の弱点を補強することが出来ます。例えば、商品開発に強みがある企業があるとします。商品開発力が高いので質の高い商品を提供できる強みがあります。しかしこの会社の販売網が脆弱だった場合はどうでしょうか?せっかく質の高い商品を提供出来るのに、多くの消費者に商品を提供することが出来ません。もちろん販売網の拡充は自社でも出来ます。しかしそのためには多くの時間と人材が必要になります。販売網の開拓のために大きなコストがかかってしまい、また多大な時間がかかってしまってはせっかくの商品の旬を逃してしまうことになるかもしれません。

 そこで、M&Aを行い、販売網が確立されている会社を買収したらどうでしょうか?質の高い自社の商品を豊富な販売経路に乗せることが出来るようになります。もともとの商品の質は高いので大きな利益をもたらすのではないでしょうか?

 このように、自社の弱点をM&Aにおける買収で補うことが出来るのです。


ウ. 事業の多角化

 事業シナジー効果の3つ目は、事業の多角化です。

 会社経営で失敗しないためには、本業に集中するといった考え方があります。もちろんそれは正しいことです。しかしITやAIが猛烈な勢いで発展し流行の変わり目も激しい現代社会において本当に本業だけに集中すれば良いのでしょうか? よほど他社がまねできない技術や消費者の恒久的なニーズを掴んでいる会社であれば別かもしれませんが、多くの会社においては本業のみに集中することはリスクになります。

 また、いくら他社がまねできない技術や消費者の恒久的なニーズを掴んでいる会社であっても、これ以上の事業規模の拡大や利益増強は見込めないかもしれません。このようなことを考えると収益の多角化を図ることは非常に重要な経営問題になります。M&Aによる買収によって別の収益源を持つことが出来れば本業たる事業の調子が多少悪くても安定した経営を行うことが出来ます。

 事業の多角化は、M&Aにおける買い手の大きなメリットになるのです。


エ. 成長のスピードを速める

 事業シナジー効果の4つ目は、成長のスピードを速めることです。

 先述の通り、現在の技術の進歩や流行の移り変わりはものすごいスピードです。このような環境の中で、すべてのことを自社で行うことは果たして正しい経営戦略といえるのでしょうか?自社で開発を一生懸命行っても出来上がったころにはその技術はもう古いかもしれませんし流行も過ぎているかもしれません。今のトレンドに合った商品を提供するためには、すべてを自社で行わず、既に出来上がった技術のある企業を買収した方が圧倒的に早いです。このように書くとネガティブなイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし現在の技術の進歩のスピードを考えると発想の転換が必要です。

 M&Aにおける買収を行うことによって買い手企業は、自社で行うべきプロセスを省き成長のスピードを速めることが出来るのです。


(2) 財務シナジー効果

 財務シナジー効果は、主に、節税効果、余剰資金の活用を上げることが出来ます。


ア. 節税効果

 財務シナジー効果の1つ目は、節税効果です。

 M&Aによる買収を行なって節税効果があることに意外に思われる方もいるかもしれません。もちろんすべての買収で節税効果があるわけではないですが、もし当てはまった場合は非常に大きな効果がありますので紹介します。M&Aにおける買収が節税効果になるケースは売り手企業が繰越欠損金を持っている場合です。繰越欠損金とは平たくいうと赤字のことです。繰越欠損金は、繰越欠損金が発生してから7年間の間は黒字と相殺できるものです。この繰越欠損金は、M&Aにおける買収を行うと買い手企業が引き継ぐことが出来ます。もし買い手企業が大きな黒字を出す会社であれば繰越欠損金と相殺できることは大きなメリットになります。


イ. 余剰資金の活用

 財務シナジー効果の2つ目は、余剰資金の活用です。

 M&Aにおける買収を行うことにより余剰資金を手にすることが出来る可能性があります。売り手企業の業績が良く手元資金を厚く準備している場合などです。M&Aにおける買収によって余剰資金を手にすることが出来れば新たな投資にお金を回すことが出来ます。結果として大きなシナジー効果を生み出すことが可能になるのです。


 以上がM&Aにおけるシナジー効果の主なメリットになります。もちろんM&Aの買い手側のメリットはシナジー効果だけではありません。しかしシナジー効果はM&Aにおける買い手側の大きなメリットになることは間違いありません。

 その他、M&Aにおける買い手側のメリットに人材の獲得があります。人材の獲得は、事業シナジー効果に入りますが、非常に大きなメリットになるので別に説明していきます。



4. 人材の獲得

 M&Aにおける買収の大きなメリットに人材の獲得があります。売り手企業に優秀な技術者などがいる場合です。現在の日本の労働環境は売り手市場です。その中でもITなどに精通した優秀な人材に関しては超売り手市場になっています。超売り手市場の環境でありまた希少価値も高いことから市場から直接優秀な人材を集めることは非常に難しくなっているのが現状です。

 しかしM&Aにおける買収を行うことによって簡単に優秀な人材を確保することが出来る可能性があります。もちろん優秀な人材には、相応の処遇を与えなければいけません。しかし、人材エージェント会社等に莫大なお金を払って市場から人材を見つけるよりもコストは低くなります。優秀な人材の確保は、M&Aにおける買収の大きなメリットになるのです。


▼参考記事:エンジニアの採用方法を5つ紹介。それぞれのメリット・デメリットは?


5. まとめ

 今回は、M&Aにおける買収のメリットについて説明しました。

 M&Aは最近事業承継と絡めて紹介されることが多いですが、買い手にとってもメリットは非常に大きいです。是非今回の記事を参考にM&Aにおける買収のメリットについての理解を深めて頂ければ幸いです。