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株式に係る相続税の概要、株式売却との比較

会社を長い間経営してきて、自分の子供に会社を相続させることはよくあります。今回は、株式を相続する際に必要な相続税の概要を解説していきます。株式売却とどのように税務が異なっているのかについても注目して見ていきましょう。

1. 相続税とは

相続税とは、人が死亡した時に財産を引き継いだ場合に発生する税金です。対象となる財産は現金だけでなく、土地、建物、美術品、車、などから有価証券まで幅広いものとなっています。今回は相続税の中でも「株式」に焦点を当てて、株式売却との比較を交えながら解説していきます。

2. 株式に係る相続税の概要

株式に係る相続税は以下のように4ステップに分かれて計算していきます。

(1) 各人の課税価格の計算

最初のステップとして、相続を受け取った人がいくらの財産価値を受領したのかの金額を集計します。現金であれば時価評価の必要はありませんが、有価証券を受領した際は、時価評価をしなければなりません。

(2)相続税の総額計算

各人の課税価格を合計し、基礎控除を差し引くことで課税される遺産総額を計算します。基礎控除は以下の計算式により計算できます。 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

そのため、相続する財産総額が、3,600万円以下である場合には、基礎控除の影響により、課税される遺産総額が0円となり相続税はかかりません。また、基礎控除の計算式のとおり、法定相続人の数が多ければ多いほど、基礎控除額は大きいものとなります。

(3)各人ごとの相続税額の計算

前ステップで計算した相続税の総額を、財産を取得した人の課税価格に応じて割り振り計算を行い、財産を取得した各人ごとの相続税額を計算します。 各相続人等の税額 = 相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額

相続税額の計算に使う税率は、累進課税方式により、金額が大きければ大きいほど高くなります。最小10%、最大55%と税率の差が大きいことが特徴的です。なお、所得税の税率は最小5%、最大45%となっており、最小税率、最大税率が相続税の方が高いこととなっています。

(4)各人の納付税額の計算

前ステップで計算した各相続人等の税額から様々な税額控除を差し引くと、最終的な各人の相続税額が確定します。

税額控除は、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除、外国税額控除などが挙げられます。

3. 株式の評価方法

相続税による株式評価方法は、税法上明確に定められています。使用できる計算方法は、「配当還元方式」、「純資産価額方式」、「類似業種比準価額方式」の3種類です。

(1) 配当還元方式

配当還元方式とは、受領した過去の配当金額を元に株価を計算する方法です。計算式は、要するに、「過去2年間の平均配当額÷10%」で計算することができます。

例えば、2年間の平均配当額が100万円であれば、100万円÷10%=1,000万円が株式評価額となります。DCF法の考え方に沿っており、100万円の配当金が永久的に得られると仮定した場合の評価額と一致します。

(2) 純資産価額方式

純資産価額方式とは、貸借対照表を時価評価した後の純資産価額をもとに株価を評価する方法です。時価評価の手法は、相続税法に基づいて実施されることとなります。持株会社や多額の含み益のある土地を保有している会社などに適用される手法です。

純資産価額方式による相続税法の株式評価算定式は以下のとおりです。 (総資産の相続税評価額―負債―(資産の含み益×37%))÷発行済株式数

「資産の含み益×37%」の部分は、資産を売却したと仮定したときの法人税をあらかじめ差し引いておくという考えによるものです。

(3) 類似業種比準価額方式

類似業種比準価額方式とは、上場会社の株価をもとにして計算する方法です。M&Aの世界では、マルチプル法と呼ばれる方法と同一のものですが、相続税法においては計算式があらかじめ厳格に定められています。

具体的な計算式は国税庁のホームページに記載のあるとおりです。 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/03.htm

一見すると複雑な計算式に見えますが、上場会社と比較した時の配当金倍率、利益倍率、純資産倍率を加重平均した後に、調整率を乗じて計算しています。

4. 株式の評価手法の選択

相続税法において、3つの評価手法のうち何を選択すべきかについては「同族株主」であるかどうかにより異なります。同族株主とは、同族株主の議決権割合が30%以上のグループのことです。

同族株主以外の株主は、相続税法における株式評価手法として、配当還元方式のみ適用することができます。同族株主以外の株主が受け取ることのできる財務数字は限定的であり、簡易な計算をすべきことが認められているのです。

同族株主の場合、以下の2通りに分けられます。

  • 類似業種比準価額方式
  • (特例会社等に該当する場合)純資産価額方式
  • 類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用

特例会社等とは、持株会社、土地保有会社など、純資産価額方式で計算すべき会社の種類のことです。同族株主の場合、配当還元方式は適用することができない点、留意が必要です。

5. 相続と株式売却の違い

相続と株式売却を比較すると、株式の保有者が第三者に移転する点では共通しています。しかし、株式評価手法、税務面、手続き面など大きく異なっている点があるので、それぞれ見ていきましょう。

(1)株式評価手法の違い

相続税法において、株式評価手法は前述のとおり、配当還元方式、純資産価額方式、類似業種比準価額方式の3種類しか認められていません。一方、株式売却の場合、決まった評価手法はありません。

株式売却においては、DCF法、マルチプル法、修正純資産法、などが挙げられますが、必ず特定の手法を適用すべき状況はありません。DCF法とは、相続税法では認められていない方法ですが、将来獲得できるキャッシュフローを現在価値に割り戻すことにより計算することができます。

DCF法では、将来の事業計画を元に株式評価がなされるため、将来の成長が期待される企業では株式評価額が高いものとなります。今は赤字が続いていても、将来、大きく成長できる可能性のあるITベンチャーが高い企業価値が付けられる場合もあるのです。

一般的に、相続税法における株式評価よりもM&Aの際の株式評価の方が高くなることに注目しましょう。

(2)譲渡時期の違い

相続は、オーナー経営者が亡くならない限り実行されることはありません。株式売却はいつでも売却することができ、相続のような条件はありません。

相続の場合はオーナー経営者に対価が支払われることはない点が、株式売却と大きく異なっています。オーナー経営者として、家族に自社を引き継ぐことが最も大事である場合は別ですが、自分の人生プランを考えるうえで、株式売却も選択肢の一つに入れておくべき状況は多いと思われます。

(3)税率の違い

相続税の税率は10%~55%の累進課税となっています。株式売却の税率は20.315%の固定税率です。また、相続税には基礎控除や税額控除のルールが細かく定められていますが、株式売却にはありません。

相続税と株式売却はどちらが税務上有利かは、状況に応じて結論が異なってきます。相続税の場合、最低でも3,600万円の基礎控除があるため、受け取る株式の評価額が3,600万円以下であれば相続税はかかりません。

例えば株式評価額が3,000万円の場合、相続した場合は税金が0円で、株式売却した場合は約600万円の所得税を納めるといった違いがでてきます。

一方、相続税は累進課税方式が取られているため、相続による取得財産額が6億円以上の場合、税率は55%です。株式評価額が大きい場合は、相続よりも株式売却の方が有利になる場合があります。

(4)納税時期の違い

相続税は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内の申告・納税が必要です。例えば、1月1日に死亡したことを知った場合、11月1日までの申告・納税しなければなりません。

株式売却の場合、翌年の確定申告の時期に申告・納税が必要です。例えば、1月1日に株式売却を実行した場合、翌年の2月~3月に確定申告を行い納税します。

(5)譲渡の相手先

相続税の場合、原則として家族などの法定相続人に対して譲渡することが求められます。一方、株式売却の場合、何ら制限なく誰に対しても売却することができます。

多数の候補から譲渡先を選択できるため、競争原理が働き、株式評価額も買い手の数が多い分、株式譲渡の方が有利になります。

6. まとめ

今回は、株式に係る相続税の概要と株式譲渡との違いをメインに解説してきました。相続は法的な手続である一方、株式売却は商取引である点で、税務面等様々な項目で違いが出てきます。

主な違いの一つ目は、株式評価手法です。相続税では、配当還元方式、純資産価額方式、類似業種比準価額方式の3種類しか認められていませんが、株式売却では何ら制限はありません。特にM&Aの世界では理論的に正しいとされるDCF法が、相続税法においては認められていない点に留意が必要です。

二つ目は、税率です。相続税は10%~55%の累進課税方式ですが、株式売却は20.315%に決まっています。相続税は基礎控除や税額控除、特例などが多い分、事前のシミュレーションが必須です。

相続か株式売却のどちらが良いかを考える場合、誰にいつ譲渡したいかを考えることはもちろん大切ですが、税務面にも配慮しなければなりません。相続すべき財産が多く、株式評価額が高いと見込まれる場合、事前に相続税に詳しい税理士に相談することをお勧めします。

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