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電池充電効率や電気容量が低い理由、今後の技術革新を解説します

PCや携帯電話、電気自動車など、電池で起動する電子デバイスは多くあります。しかし、機能やデザインなどを常に進化を続けているものの、バッテリーに関しては不満を抱えているユーザーは少なくありません。 今回は、当サイトのITコラムとは相容れないカテゴリではありますが、今後のIT業界の発展にも大きくかかわる「電池業界」の現状と今後について解説していきます。

1.世界を変えたと言われるリチウムイオン電池

電池の種類は大きく分けて一次電池と呼ばれるものと二次電池と呼ばれるものの2つがあります。
一次電池とは懐中電灯や玩具などに利用されるマンガン電池のように充電できないタイプで、放電するだけのもの。

二次電池とは充電も放電も可能で、充電すれば繰り返し使えるものを指します。二次電池は充電式電池とも言われていて、ニカド電池、ニッケル水素電池、そしてリチウムイオン電池の3種類が存在しています。
この中でも近年は、特にリチウムイオン電池が注目されており、PCやスマートフォン、電気自動車などのバッテリーとして採用されています。リチウムイオン電池は、ニカド電池やニッケル水素電池に比べて同じ量の電気を蓄える時にバッテリーのサイズを小さくすることができるのです。
リチウムイオン電池は1980年あたりから注目され始め、研究が進んでいました。1991年にソニー・エナジー・テックによって世界で初めて商品化されてからも、長い年月をかけながら安全性、電池容量の増加、軽量化、過充電などに対する耐性などの研究が進み、進化し続けています。
現在流通しているモバイル電子機器のほとんどがリチウムイオン電池を採用していることからも、世界を変えた電池と言っても過言ではないでしょう。現代社会を生きる日本人であれば、身の回りに必ずひとつはリチウムイオン電池を搭載している電子機器があるはずです。

2.実際は超高性能。現代のリチウムイオン電池はここまで進化

1976年にアメリカの学者がリチウムを用いた充電が可能な電池を開発したのですが、安全性に問題があったために実用化されませんでした。
それ以降も多くの学者が電池の開発を行い、1983年に旭化成株式会社の吉野彰博士(2019年にノーベル賞受賞)らがリチウムイオン二次電池の原型を作りました。その後は商品化に向けて開発が続き、前述の通り1991年に日本で商品として販売されると、大手電機メーカーや総合化学メーカーは競い合うようにより良いリチウムイオン電池を開発・販売をし始めます。
リチウムイオン電池の構造についてはかなり専門的な工学分野になるためここでは割愛しますが、とにかく開発し続けることでリチウムイオン電池はより高性能になってきました。
以前までとは比べ物にならないほどの蓄電量、長寿命、急速充電、軽量化、そして低温動作などの安全性も進化しています。
例えば、現在最も進化の著しい電気自動車、その中でも日産自動車が2010年12月に販売開始したリーフという電気自動車があります。
当時のリーフは、フル充電(最大24kWh)でも約200㎞の走行しかできませんでした。リーフはその後マイナーチェンジを繰り返し、2017年のモデルになるとフル充電(60kWh)で500㎞以上の走行が可能となっています。
ガソリンが満タンの少し燃費の悪い乗用車とほとんど変わらない走行距離を実現できるようになりました。蓄電容量も増えた上に、バッテリーの軽量化にも成功しているため、性能はたった7年で遥かに良くなっていることが分かります。
これは電気自動車を例に挙げましたが、私たちのスマートフォンやPC、その他のモバイル電子機器も同じように、現代のリチウムイオン電池はここ数年で超高性能と言えるレベルまで進化しています。

3.それでも電池充電効率や電気容量が低いと言われる理由

リチウムイオン電池が商品化された1990年代は、日本国内のメーカーが世界の9割以上のシェアを占めていました。現在では、サムスン電子などの韓国や、CATL(寧徳時代新能源科技)などの中国も電池生産に力を入れて世界的にも市場は拡大しています。
市場が拡大すると企業の競争原理に基づいて商品開発は勢いが増し、前述の通りリチウムイオンは進化を遂げています。しかし、それでもユーザーのバッテリーに対する理想にはまだまだ達していないというのが現状です。
あるメディアサイトのアンケートによると、スマートフォンを購入する際に重要視することは、1位が高画質のカメラ、2位ファイル保存の容量、3位に処理速度とバッテリーのスペックという結果が出ています。
他のサイトでも同じようなアンケートがありますが、この3つのニーズは常に求められていることが分かります。ユーザーは常により良い機能、より速い処理速度などを求めていますが、一方で、それらの性能が増すごとに端末の消費電力も当然増えるため、バッテリーの質も同時に求められるということです。
カメラの機能は一昔前の一眼レフカメラと同等の画質になり、8以上のコア数のCPUまでスマートフォンに搭載されるようになりました。世界的に流通するようになってここ数年で一気に性能や処理速度を上げてきているスマートフォンですが、バッテリーに関しても性能を上げているので、劣化していないバッテリーであれば一度のフル充電で丸一日充電が持ちます。しかしながら、旅行や出張などの際は充電器が必要です。通常の使用方法で1週間ほど持続できる電気容量が求められているという意見もありますが、その理想には程遠いというのが現状です。
また、充電する時間に関してもユーザーは不満を持っています。 性能や操作性を重視した高機能のドローンで言えば、飛行可能時間が15分程度の機種で充電時間は1時間というのはザラで、現在は飛行可能時間よりも短く済む充電時間を実現できている二次電池搭載のドローンはありません。
前に例として挙げた電気自動車の日産リーフは、新型でも満充電に必要な時間は16時間です。500㎞の走行が可能と言えど、時速50㎞で走行すれば10時間で充電切れとなってしまいますので、こちらも実動よりも充電時間が長くなってしまいます。

4.電池の寿命に対する不満も依然多い

電池充電効率や電気容量に対するユーザーの理想はまだまだ遠いところにあるのですが、電池の寿命についても不満を持つユーザーは多くいます。
以前、経済産業省の蓄電池戦略プロジェクトチームは公式に電池の一般的な寿命を発表しました。

・鉛蓄電池・・・17年(充電回数3,150回) ・ニッケル水素電池・・・5~7年(充電回数2,000回) ・NAS電池・・・15年(充電回数4,500回) ・リチウムイオン電池・・・10年(充電回数4,000回)

もちろん、電池の個体の大きさや使用方法にもよりますが、上記が一般的な電池の寿命です。寿命を迎えた電池は使えなくなるというわけではなく、各メーカーの発表は異なるものの一般的には70%程度は蓄電容量が減少してしまうと言われています。
電気自動車の場合だと、バッテリーの保証期間は、購入後5年間や走行距離10万kmなどのように設定されています。そのため、中古の電気自動車は走行距離10万kmを超えると、価値は極端に下がってしまいます。
充電効率や電気容量だけでなくバッテリーの寿命もまた、電子機器の価値を左右していることが分かります。

5.電池の寿命を延ばすには?

リチウムイオン電池の寿命を延ばす一番の方法は高温を避ける事です。高温になればなるほど電池の寿命が短くなることが分かっています。
たとえ未使用の状態でも、リチウムイオン電池は温度が上がると内部抵抗が減少し、過電圧が低下するというのが理由です。実は高温になれば電池容量は増えることが研究で分かっているのですが、その分だけ寿命が縮んでしまうのです。
他にも、「満充電の状態を避ける」「電池残量は50%程度にする」「頻繁に充電を行わない」など言われていますが、高温を避けるというのが最も効果的な延命方法と言われています。

6.LIB市場の成長と電池市場における今後の技術革新

充電効率、電池容量、電池の寿命においてユーザーが100%で満足できる電池の登場は今後期待できるのでしょうか。もちろん、そのような電池の開発に向けて日々研究が続けられています。
リチウムイオン電池(LIB)は、世界市場において2023年は5兆円を超える市場規模になると言われています。2010年には1兆円規模の市場だったので、その成長ぶりは大変著しいです。さらに、地球温暖化対策など社会全体も電池依存に拍車をかけていて、予想を超える成長が期待されています。
現在の技術においても需要は増え続けているので市場は活性化するのですが、市場はさらなる技術革新を求めています。リチウムイオン電池の今後の課題としては、充電効率や電池容量、寿命に加え、製造コストをいかに下げるかという研究課題もあります。比較的安価に抑えられるニッケルやマンガンを含む化合物を代替にして製造コストを下げる研究なども行われており、特に電気自動車の進化には欠かせない課題のため、自動車メーカーによる研究は数十年先まで続くでしょう。
一方で、メーカーや研究者はリチウム電池にこだわり続けているわけではありません。
今後期待されている電池の種類として「金属空気電池」と「全個体電池」というものがあります。
金属空気電池とは、正極に空気、負極に金属(主にリチウム)を配置してその化学反応によって電力を生み出す電池です。正極には空気を利用することによって構造のほとんどを負極部分に使用することで軽量化を実現できます。
もうひとつの全個体電池というのは、液体である電解液の代わりに個体である電解質を用いた電池です。通常の電池と違って電解液を覆う構造が不要となるので、こちらも軽量化が実現できます。
これらの新しい電池はまだまだ開発の段階ですが、2018年には金属空気電池の開発にソフトバンクが参入するなど、研究機関に大手企業の資本が入ってきているのでそう遠くない未来に商品化されると考えられています。
他にも、人間の唾液など細菌細胞を発電に利用するペーパー電池、半永久的に静電気が貯められる液体、体積膨張による劣化を防止し寿命を大幅に延ばしたリチウムサルファ電池など新しい電池が次々と発明されてきています。 今後も主流となるリチウムイオン電池、空気電池、全個体電池の技術は発展し続けます。そして、その間にもまた新しい種類の電池が誕生し、世の中を変えるような新しい電子デバイスの誕生に貢献するはずです。

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