1. 事業譲渡とは
対象会社が営む事業の全部または一部を他の会社に譲渡する手法です。事業譲渡では対象事業に関連する権利義務関係は、当事者間の契約により個別に引き継ぐ必要があり、従業員との雇用契約についても譲渡会社との同意に加え、従業員の同意を取得する必要があります。
2. 事業譲渡のメリット
(1) セルサイドのメリット
ア. 事業のノンコア化を達成できる
事業会社によっては、利益があまり出ていない事業に社内リソースを3分の1も使ってしまっているケースがあります。このような時に、当該事業をノンコア化することで、本業・主力事業に注力していくことができます。
イ. 新規事業の立ち上げに際して元手資金を手に入れられる
メディアの運営などで、既存の手掛けているメディアの運営が飽きてきたため新しいメディアを立ち上げたいという場合に、既存メディアを事業譲渡することによって、新しいメディアのマネタイズが上手くいくまでの資金を調達することができます。
(2) バイサイドのメリット
ア. 時間買いができる
一般的なM&A同様、新たな事業領域への参入を0から始めることは、時間と費用が多分にかかります。そこで、既に事業を展開している企業の事業を譲渡してもらうことによって、費用を支払うのみで新たな事業領域への参入が可能となります。
イ. 株式譲渡などのM&Aに比べてリスクが低い
株式譲渡などのM&Aにおいては、丁寧にデューデリジェンスを行ったとしても、M&A前までは予見できなかったリスク・簿外債務、偶発債務等が見つかるケースがあります。それに対して事業譲渡では、引き継ぐ範囲がより限定されているため、よりリスクが低い譲渡が可能となります。
ウ. のれんによる節税が可能となる
一般的に、事業譲渡の価格を決定する際は、当該事業の純資産にのれんをつけることが一般的です。この際ののれんは、会計上5年間償却することができるため、のれんによる節税が可能となります。
※反対に負ののれんが発生した場合については、事業譲渡を行った会計期間の損益計算書に負ののれんが特別利益として計上されるため、会社として利益が増加するため注意が必要です。
▼参考記事:M&Aにおける「のれん」の会計上と税務上の違い