評価・バリュエーション

バリュエーションとは - 評価・バリュエーション用語解説集

1. 一般的な意味でのバリュエーションとは

バリュエーション(valuation)は、英語で「評価」「査定」「見積り」などの意味を持ち、一般的に資産運用の世界では、投資の価値計算や事業の経済性評価のことを指します。すなわち、企業の利益や資産などの本来の企業価値に対して、株価が相対的に割安か割高かを判断する際の指標という意味でバリュエーションという表現が使用されます。

代表的なものとして、株価純資産倍率(PBR)、株価収益率(PER)、株価キャッシュフロー倍率(PCFR)、配当利回りなどが存在します。

2. M&Aにおけるバリュエーションとは

M&Aの世界においてバリュエーションという場合、企業価値の評価を指すことがほとんどです。すなわち、M&Aにおいては、買収案件の実施判断や複数案件から最良な案件選択をする際に行う「企業価値評価」のツールをバリュエーションと表現します。

企業価値とは、企業が将来にわたって生み出すと期待させるキャッシュフローの現在価値合計額を意味し、「企業価値=株主価値+債権者価値」と表現することが出来ます。

株主価値とは、企業が生み出すキャッシュフローのうち、株主に帰属するキャッシュフローの現在価値合計額を指し、上場企業であれば株式時価総額がその目安となります。

債権者価値とは、企業が生み出すキャッシュフローのうち、債権者(主に金融機関)に帰属するキャッシュフローの現在価値合計額を刺し、純有利子負債の額がその目安となります。純有利子負債とは、有利子負債残高(短期借入金、社債、長期借入金)から現金及び現金同等物(預金、有価証券)を差し引いたネットの有利子負債のことで、実務ではネットデット(Net Debt)と呼ばれてます。

株主に帰属するキャッシュフローの現在価値合計分の内、時価純資産額はいわば過去から現在の価値を表したものであり、将来の価値は織り込まれていません。将来の価値はいわば営業権(のれん)であり、時価純資産に営業権を加味したものが株主価値(Market Value:MV)となります。さらに債権者に帰属するキャッシュフローの現在価値合計額として債権者価値(純有利子負債)を加えたものが企業価値(Enterprise Value:EV)となります。

3. 具体的なバリュエーション手法

売り手側は高く売ることを望む一方、買い手側は安く買うことを望むため、買収価格を決める企業価値の算定については、公正な判断基準(バリュエーション)が求められます。

企業価値の評価方法には大きく分けて「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3種類があります。

(1) コストアプローチ

コストアプローチは、評価対象企業の帳簿上における、すべての資産と負債を時価に置き換えて純資産を評価する方法です。貸借対照法上の資産と負債だけでなく、計上されていない無形資産(特許や商標など)についても時価評価することで価値を計上(オンバランス化)します。しかし、無形資産の評価が難しい場合は、オンバランス化を省くこともあります。

また、コストアプローチでは貸借対照表の数値を基に企業価値を算定するため、過去から現在までの収益は蓄積されているものの、将来の収益に関しては一切盛り込まれておらず、評価対象企業が今後も企業活動を続けることを前提とした場合、単独で利用することは合理的とは言えない点で注意が必要です。

コストアプローチでは下記のような手法があります。

・簿価純資産価額法

時価純資産法

・精算価値法

・再調達原価法 など

(2) マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、実際にマーケットで取引されている価格を直接的、もしくは間接的に参照して評価する方法です。他の手法に比べて客観的に企業価値を算出できるメリットがありますが、短期的な市場の変化に影響を受けやすくなります。

また、市場のトレンド次第で買収価格が大幅に異なってしまう恐れもあります。しかし、客観性の高い手法なので、M&Aにおけるバリュエーションに活用する事例が増えています。マーケットアプローチを取る際の注意点としては、一定期間の平均値をとるなど、一時的な要因で評価が歪まないような工夫が必要となります。

さらに、マーケットアプローチでは経営の支配権を獲得するために一気に株式を買い集めるために必要なコントロール・プレミアムが織り込まれていない点に留意する必要があります。

マーケットアプローチでは下記の様な分析手法があります。

・市場株価法

類似会社比較法(マルチプル法)

・類似取引比準法 など

(3) インカムアプローチ(DCF(Discounted Cash Flow)法、配当還元法など)

インカムアプローチとは、将来見込まれる収益(インカム)やキャッシュフローに注目して企業を評価するアプローチです。代表的なものにはDCF(Discout Cash Flow))法がありますが、その他下記のような手法も使われます。

・モンテカルロDCF法

・APV法

・割引配当モデル など

※具体的な算定には専門的な知識を要するため、専門家にご相談ください。

また、各手法についての詳細は該当の用語集、あるいは下記記事をご参照ください。

▼参考記事:M&A交渉の肝「バリュエーション」の種類と内容を解説



4. コントロール・プレミアムと非流動性ディスカウント

コントロール・プレミアムとは、企業の支配権(議決権の50%超)を獲得場合に認められる株価のプレミアムをさします。T0B(公開買付け)などにより上場企業の株式を一気に買い集める際は、直近の市場株価に20%〜40%程度のプレミアムを上乗せすることが一般的です。

非流動性ディスカウントとは、流動性が低い株式の価値を一定割合ディスカウントすることを指します。非上場企業の株式を評価する際には、20%〜30%のディスカウントが行われることがあります。ただし、支配権を獲得するM&Aにおいては、非上場企業であっても将来再び売却しやすいことから、流動性ディスカウントを適用しないことが多いです。

  1. 総括

M&Aの買収価格を決定する上で、その基準となるバリュエーションは極めて重要な部分にあたります。M&Aの実務上使用されるバリュエーションには様々な手法があり、それぞれ用いられる場面や、メリット・デメリット、特徴が異なります。

特に中小企業と大手企業とでは、M&Aの意味合いが大きく異なり、自社の状況に合ったバリュエーション手法を用いる必要があります。見方や角度によって、M&Aの企業価値は異なってきますので、自社の状況に応じて適切なバリュエーション手法を検討し、必要に応じて複数のバリュエーション手法を利用した方が良いでしょう。

弊社パラダイムシフトでは専門知識を有したM&Aアドバイザーがご依頼企業様の状況に応じて適切なバリュエーション方法を提案させて頂いております。

バリュエーションについては、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:バリュエーションとは、どんな仕事?【FAS出身の会計士が解説】 | アカウントエージェント株式会社

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