売り手側の企業が、買い手側の企業にM&Aを具体的に検討してもらうため、 自社の詳細な情報を開示する目的で作成するのが「企業概要書」です。企業概要書は、具体的な交渉が開始される段階において非常に重要な書類です。

 本稿では、企業概要書の内容とノンネームシートとの違いについて解説します。


1. 企業概要書とは

 企業概要書とは、 会社名、事業内容、財務収益状況など売り手企業に関する詳細な情報が記載された書類です。企業概要書は、IMとも呼ばれています。IMとは、Information Memorandum(インフォメーション・メモランダム)の略です。

 企業概要書は、買い手側との秘密保持契約を締結した後に、売り手側が開示します。M&Aで売り手側は、情報漏えいのリスクを抱えています。そのため、まずは企業を特定できないような情報(ノンネームシート)を買い手側に提示します。買い手企業がノンネームシートを見てM&Aに興味を持ったら秘密保持契約を締結。 その後、企業概要書を提示して本格的なM&Aに入るのです。


 企業概要書は、売り手側のM&Aアドバイザー(M&A仲介会社など)が作成することが多く、アピールのために正確性を欠くデータが記入されているケースもあります。そのため、買い手側は開示されたデータの正確性を精査する必要があり、不明点は売り手側のM&Aアドバイザーを通じて売り手企業に伝えられます。 売り手企業は、情報開示の要請に誠実に応じることで、買い手企業の理解と信頼関係が構築され、M&A取引が次のステップに進む可能性が高まるのです。


▼参考記事:M&Aに必須のノンネームシートとネームクリアについて解説


2. 企業概要書の記載内容

 企業概要書は、売り手側の企業が買い手側の企業に「どういう会社なのか」、「M&Aを行うことでどのようなメリットがあるのか」を理解してもらうための資料で、企業の沿革や財務状況、資産に関する情報などが詳細に記載されています。

 企業概要書は、 A4用紙1枚程度のノンネームシートと異なり、数十ページにも及ぶ資料です。通常、綿密な企業概要書作りには、半月から一カ月程度かかります。 ゆえに前述のとおり、企業概要書はM&A仲介会社が作成するのが一般的です。 

 企業概要書に決まったフォーマットは存在せず、M&A仲介会社や相談内容によって記載する内容は変わってきますが、主に次のような項目について書かれているのが一般的です。


1) 企業概要(会社名や住所・資本金・社員数など)

2) 事業内容(商品・サービス)

3) 財務状況(直近3期分の貸借対照表・損益計算書)

4) 譲渡理由

5) 将来の事業計画



3. 企業概要書を作成する目的

 M&Aの交渉は、提示された企業概要書の内容を前提として進められます。そのため、企業概要書には正確性が求められます。売り手企業は、企業概要書を作成するM&A仲介会社に適切で正確な資料を提供することが大切です。企業概要書では、売り手企業に関する重要な情報の漏れがないように注意しましょう。 不利な情報が漏れていることがデューデリジェンスで明らかになった場合、交渉が決裂してしまう恐れもあります。

 企業概要書はM&Aにおける交渉の基礎になるものです。買い手が検討を進める上でどのような情報が必要になるのかを売り手側も意識しながら、M&A仲介会社に資料を提供するようにしましょう。



4. 企業概要書とノンネームシートの違い



情報内容フェーズ
ノンネームシート譲渡企業が特定できない程度で簡易的秘密保持契約締結前
企業概要書譲渡企業の情報を詳細に記載秘密保持契約締結後


 ノンネームシートは、企業概要書を作成する前に匿名で買い手側に提案する資料です。通常、 A4用紙一枚に売り手側企業の業務内容や社員数・売上高・譲渡理由が記載されています。買い手企業が本格的にM&Aを検討するかどうかわからない段階であるため、秘密保持の観点から簡易的な形式になっています。ノンネームシートで興味を持った企業が、さらにM&Aの検討を進めるために提案されるのが「企業概要書」です。その際に、買い手企業とは必ず「秘密保持契約」を締結します。

 秘密保持契約とは、 M & A を検討している当事者が最初に締結する契約です。 相手方が知り得た情報を第三者に開示しないという内容になっています。


▼参考記事:秘密保持契約(M&A用語集)


5. まとめ

 売り手企業が企業概要書を提示することは、買い手企業に自社の詳細な内容を伝えるということです。企業概要書によって具体的な検討が進み、M&Aの交渉が発展します。

 売り手側・買い手側の双方にとって、よりよい条件でM&Aを成約させるために必要な書類として、企業概要書は重要なのです。