今回の記事では、ディープラーニング(深層学習)や機械学習の仕組み、そしてディープラーニングを用いた様々な事例について紹介していきたいと思います。ディープラーニングや機械学習という言葉はよく聞くものの、いまいちそれがどういうものなのか分からなかったという人は、ぜひこちらを参考にしてみてください。

 最後に、海外の大企業による、AIスタートアップのM&Aの事例なども紹介しています。


1. ディープラーニングとは?

 ディープラーニングは、ニューラルネットワークを多層化することで、より複雑な表現・計算が出来るようにした仕組みのことです。ディープラーニングの元になっているニューラルネットワークとは、人間の脳神経の構造を模した仕組みのことで、パーセプトロンという最小単位の層が複数重なることによって構成されています。

 このパーセプトロンの仕組みは、具体的にはスパムメールの判定(特定の文字列が含まれているかどうかでメールを選別する)など、より単純なシステムの実装などに利用されているといわれています。



2. 機械学習とは?

 ディープラーニングと一緒に「機械学習」というものもよく見聞きするかと思いますが、機械学習は入力されたデータをもとに、プログラムが自分自身で学習を行い能力を発展させる仕組みのことをいいます。

 ディープラーニングが誕生する前までの機械学習では、データの学習方法や前提条件などを最初に指定してあげる必要がありましたが、ディープラーニングの場合は、学習方法自体を自分で学習していけるようになったことが特徴で、この部分がこれまでとの大きな違いとなっています。



3. ディープラーニングを用いた事例

今回紹介する「ディープラーニング」という技術を用いた具体的な製品・事例を5つ紹介していきます。 

(1) 囲碁や将棋

(2) 音楽制作

(3) WEB制作

(4) 工場での不良品検知

(5) 音声感情解析


(1) 囲碁や将棋

 囲碁や将棋などの分野にもディープラーニングが利用されています。特に囲碁は将棋よりも複雑な仕組みと言われていたため、Googleの囲碁AIの「アルファ碁」が人間の棋士に勝利した際は、大きな話題になりました。


(2) 音楽制作

 音楽制作や美術などのクリエイティブな分野にも、ディープラーニングが活用されており、Googleもこれらに関連したプロジェクトのために「マゼンダ」という人工知能を開発して研究を進めています。


(3) WEB制作

 2番の事例とも関連しますが、コーディングの知識やスキルがなくても、デザインデータをもとに自動的にWEBページを制作してくれるサービスや、キーワードなどをもとにロゴをデザインしてくれるサービスもあります。クリエイティブな作業とAIとの関係は、特に今後も注目していきたいポイントのひとつです。


(4) 工場での不良品検知

 工場の製造ラインに流れる食品の不良品検知などにも、ディープラーニングによる画像認識技術が活用されています。

 たとえば食品メーカーのキューピーは、不良品検知にディープラーニングを用いることで、実際に一定の成果を得る事に成功しているそうで、今後もさらにアップデートを重ね、より生産性を高めていきたいと話しています。


▼参考記事:食品工場の製造ラインにて原材料の不良品検知にAIを活用 (ブレインバッド)



(5) 音声感情解析

 音声からその人の感情を解析する技術にもディープラーニングが活用されています。

 具体的には「Empath」というAPIが特に有名で、毎日音声を入力することでその日の気分が計測できるDocomoのアプリや、就職面接やロボットとの会話で気分状態や感情を解析するFujitsuやPersolの例など、実際にすでにサービスに活用しているものも多くあります。


Empath(公式サイト)



4. より身近な例:ディープラーニングや機械学習の技術はどのように実用化されるのか

 上で紹介したような事例は、少し私たちの生活にはなじみのうすい事例ですが、以下の5つのような実際に私たちの生活により近い分野でも、ディープラーニングの導入は着々と進んできています。 


(1) 自動運転技術

(2) タクシー業界

(3) 医療分野の画像診断

(4) カスタマーサポート(コールセンターなど)

(5) 資産運用(ロボアドバイザー)


(1) 自動運転技術

 まず、現在の私たちがよく見聞きするものは、車の自動運転技術についてだと思います。車の運転には目の前の人間や物体を暗闇の中で認知したり、その情報をもとにして、実際に運転停止やカーブなどの一連のアクションの判断をするなど、より複雑な作業や正確な判断力が必要になるため、ディープラーニングの技術が特に重要な鍵をにぎるとされています。

 中でも、見る角度や光の加減によって見え方が大きく変わる、人や物体の認知・分析などの作業の難易度が特に高いそうで、自動運転の技術の精度を高める上での、ひとつの大きなポイントになっているようです。


▼参考記事:自動運転実現で「深層学習」が鍵を握るワケ 基礎知識や活用シーンを解説(自動運転ラボ)


(2) タクシー業界

上の車の事例に関連しますが、タクシー業界でも、ドライバー不足を解消したり、より売り上げ効率を高める目的で「AIタクシー」というシステムが導入されており、そこでもディープラーニングの技術が活用されています。 

 具体的には、AIタクシーというシステムを利用することにより、人口統計データ、気象データ、施設データなどの様々なデータを解析し、エリアごとの人数の推定値や人の移動の流れなどが把握できるようになるため、より効率よくお客さんにアプローチすることができるようになります。

 ちなみにすでに2018年の段階から、東京無線協同組合加盟のタクシー会社ですでに利用が始まっており、データの予測精度は93〜95パーセントとかなりの高精度になっており、売り上げに関しても1日あたり、1台につき2000円程度の売り上げUPが見込めると予測されています。


▼参考記事:AIがタクシー業界のドライバー不足を解決(NISSENデジタルハブ)


(3) 医療分野での画像診断

 医療分野での画像診断にもディープラーニングが活用されています。

 コンピューターに膨大な画像データを認識させることによって、コンピューター自身がその画像内容を判断できるようになるため、例えばレントゲンやCTなどの画像から、患者さんが病気かどうかを見分けることができるようになっています。

 ちなみにこのような診断方法を既に導入している医療機関もあり、こういった画像診断の部分に関しては、人間の医師よりもAIのほうが正確とする意見も中にはあるようです。

( ※ 全てを自動的に判断するのではなく、異常ありの疑いが強いものをコンピューターがまずはピックアップ → そのピックアップされたデータを実際に人間の目でも確認して症状を判断するというような流れになっているとのこと)。


(4) カスタマーサポート(コールセンターなど)

 私たちが普段よく利用するコールセンターなどにも、ディープラーニングが活用されており、単に会話内容をテキスト化して登録するだけでなく、会話の種類を内容に応じてカテゴライズしたり、会話の中から特に重要な箇所だけをピックアップして登録するような作業も自動で行われているようです。

 将来的には、上で紹介したEmpathのような音声感情解析技術を活用することも期待されており、お客さんの声などに応じて、緊急度やクレームの温度感をAIによって自動的に判断して対応するといったことも、今後一般的になっていく可能性があります。


▼参考記事:AI活用最前線!ディープラーニングが担うコールセンターの未来(BIZTEL)


(5) 資産運用

 個人の資産運用にも、ディープラーニングの技術が活用されていて、国内の銀行では、三菱UFJ信託銀行がこういった取り組みをスタートしています。具体的には、株価が上昇する局面なのかどうかを、過去の金利や為替などの変動データを元に判断する仕組みとなっており、結果、人間の担当者が判断する場合よりも利回りが高い形になったそうです。


▼参考記事:ディープラーニングで資産運用、三菱UFJ信託が新たな金融商品(日経コンピュータ)



5. ディープラーニングや機械学習の技術は,人間の仕事を奪うのか

 ちなみに今回紹介したディープラーニングなどの仕組みや事例とセットで、「人間の仕事は、AIによって奪われてしまうのではないか?」という議論もよくされていたりしますが、基本的には「奪わない」と考える人の方が多い印象です。

 実際のところ、仕事は簡単に定型化できる仕事ばかりではないと感じる人が多いと思いますし、AIタクシーや医療分野での画像診断の事例のように、人間がAIと共存したり、AIを有効活用しながら働くケースが多くなるのではないかという意見の方をより多く見かけます。



6. AIスタートアップのM&Aの事例

 最後にAIスタートアップのM&Aの事例を3つ紹介しておきます。

 なお、AIスタートアップのM&Aに関しては、海外のスタートアップの方が多くなっています。


(1) GoogleがDeep Mind Techonologiesを買収

 こちらのDeep MindTechonologiesはロンドンのAIスタートアップです。先ほど上の事例で紹介した人間に勝った囲碁AIを開発している企業で、約6億ドル(600億)の値段で買収されたそうです。ただし現在のところ、損失額も同じくらいの金額になっており、投資分を回収できるのはまだもう少し先になるようです。


▼参考記事:巨額赤字のグーグル系AI企業DeepMind、年間「600億円」を燃焼中(Forbes)


(2) Nikeがボストンの「セレクト(Celect)」というスタートアップを買収

 Nikeは、データ予想分析プラットフォームを提供する、ボストンの「セレクト(Celect)」というAIスタートアップを買収しました。顧客の購買データを元にした今後の需要予測や、在庫の最適化が買収の目的とされています。


(3) サムスンが Viv labs(AI音声アシスタント)を買収

 韓国のサムスン電子は、Appleのsiriを開発した「Viv labs」というシリコンバレーのスタートアップを買収しました(買収額は非公開)。ちなみにAppleがSiriを買収した際の金額は約2億ドル(200億円)程と言われています。


(4) その他

 なお他のAI関連のM&Aの事例や、AI・機械学習で利用されるプログラミング言語などについても、以下の記事で詳しく紹介していますので、こちらも参考にしてみてください。


▼参考記事:AIや機械学習などに利用されるPythonとは?(コラム)



7. まとめ

・ディープラーニングは、ニューラルネットワークを多層化して、より複雑な表現・計算が出来るようにした仕組みのこと。ディープラーニングの元になっているニューラルネットワークは人間の脳神経の構造を真似した仕組みのことで、このニューラルネットワークは、パーセプトロンという最小単位の層が複数重なることで構成されている。


・ディープラーニングが誕生する前までの機械学習では、データの学習方法や前提条件などを最初に指定してあげる必要があったが、今回のディープラーニングの場合は、データの学習方法そのものも、自分で学習していけるようになった


・自動運転技術、タクシー業界でのデータ活用、医療分野の画像診断など、既に様々な分野でディープラーニングの技術が活用されているが、日本のAI技術は世界に比べると少し遅れをとっているといわれており、M&Aなどの事例も海外のスタートアップの方が多い状況にある。

 

 現在は、日本のAIスタートアップのM&Aは海外に比べるとそれほど数多くはないものの、今後日本でもAI市場が発展を遂げることは確実視されており、AIスタートアップが発展するに従い、日本におけるAIスタートアップのM&Aの動きが盛んになることが予想されます。


 弊社パラダイムシフトも、IT領域に特化したM&Aアドバイザリーとして、AI市場の動向を注視し、多くのAIに関連企業様と取引を構築させていただいておりますので、M&AによるAI関連技術の強化などご検討されている場合には、ぜひ一度ご相談ください。