M&Aで買収対象となる企業を絞り込んでいく際に重要視されるのが、「EBITDA(イービッダー)」です。この記事では企業価値評価のツールとして使われるEBITDAの仕組みについて詳しく解説します。

1. EBITDAとは

 EBITDAは”Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization”の略で、支払い利息、税金、減価償却費を差し引く前の利益、つまり「1年間の現金収入」を表します。

 税金や減価償却費は各国の会計方針に影響を受ける可能性のある財務指標です。そこで、会計方針の影響を受けにくいEBITDAを利用することにより、国際間での収益比較が容易になるため、クロスボーダーM&Aではよく用いられる指標となります。

 具体的な計算式は以下の通りとなります

  EBITDA = 当期純利益 + 税金 + 支払利息 + 減価償却費


 ただし、上記のような計算式を扱うのは煩雑なので、実務上は簡便的に

  EBITDA=営業利益+減価償却費

とすることが慣例になっています。


2. EV/EBITDA倍率とは

 企業の価値を判断する指標が、「EV/EBITDA倍率」です。

 EV(Enterprise Value)とは、企業価値のことで、「この企業を買収するのにいくら必要か」ということを表しています。EVの計算式は以下のように表されます。

  EV= 株式時価総額 + 純有利子負債(有利子負債ー現金及び現金同等物)+ 少数株主持分


 EV/EBITDA倍率とは、EBITDA(1年間の現金収入)に対してEV(企業価値)が何倍あるかを意味します。つまり、企業の買収に必要な時価総額と、買収後の返済に必要な金額を、現金収入であるEBITDAの何年分で賄えるかを表しています。

 M&Aの際、上限の目安とされるのが、「EV/EBITDA倍率8~10倍」です。

 日本のような先進国では、事業の成長率が海外よりも低くなるため、一般的には4~8倍が妥当といわれています。一方、成長性が高い新興国でも10倍を超えると高いという認識になります。


3. 類似会社比較法

 EBITDAを使った企業価値評価の方法として「類似会社比較法」があります。類似会社比較法とは、評価対象に類似した上場会社の株価を基にして、評価対象の企業価値を推定する方法です。

 M&Aで特定の企業を評価する際、業種や規模・収益など似ている要素が多い上場会社を抽出し、株価を基に評価企業の価値を探ります。

 上場を目指している企業に評価に使われる事が多く、「EBITDAマルチプル」とも呼ばれています。

 類似会社比較法による価値算定の計算方法は次の通りです。


(1)類似企業の選定

 類似会社比較法では、類似会社の選定が一番重要です。評価対象企業と同業種という点に限らず、事業規模や地域性、サービスの類似性、成長率など総合的な観点から選定を行います。

 通常は3社から10社程度の類似上場会社が選定されます。大切なことは、類似上場会社が評価対象企業と投資リスクおよび利回りの関係において類似していることです。投資家の目から見て選ばれるような上場企業を探し出すことが必要なのです。


(2)比較倍率の算定

 類似会社比較法で利用されるマルチプル(比較倍率)としては、以下の5つが代表的です。

   売上高倍率(PSR)

   EBIT倍率

   EBITDA倍率

   PER

   PBR

 マルチプルは、「事業価値」を算定するものと、「株主価値」を算定するものの2種類に分けられます。


① 事業価値を算定する指標

 売上高倍率(PSR)

 時価総額を年間売上高で割ったものです。売上高が同じ会社を比較した場合、売上高倍率が高いほど、株価は割高と判断されます。

 EBIT倍率

 EBITは、営業利益もしくは経常利益に金融収支を足したもので、本業の利益を表します。EV(企業価値)をEBITでわった値がEBIT倍率です。

 EBITDA倍率

 EBITDAは、営業利益であるEBITに減価償却費を加算したものです。EBITDA倍率は、EV(企業価値)をEBITDAで割った値です。


② 株主価値を算定する指標

 PER(株価収益率)

 業績面からみた株価の割安度を判断する指標で、計算式は次の通りです。

 PER=株価÷1株当たり当期純利益(EPS)

 PBR

 株価が1株当たり純資産(BPS)の何倍まで買われているかを表す指標です。計算式は以下のようになります。

 PBR=株価÷1株当たり純資産(BPS)


 事業価値を算定する場合、会計方針による減価償却費の影響を排除した「EBITDA倍率」を利用することが多くなります。実務上は、類似上場会社を複数選択肢、比較倍率について各社の平均値や中央値を使用します。


4. まとめ

 M&Aでの評価方法には複数ありますが、EBITDA倍率を使った類似会社比較表が代表的な手法です。EBITDAなら会計基準が違う海外の企業と国内企業との比較や、業種の違う企業間での比較が可能です。

 M&Aの交渉ではバリエーション(評価)が重要です。EBITDAについてきちんと理解しておくようにしましょう。